![]() | 日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 田畑 則重 (2005/11) 新潮社 この商品の詳細を見る |
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評価:☆☆☆
日露戦争。それは、後に続く悲惨な全面戦争を予感させるものだった。複雑に入り組んだ各国の思惑と世界戦略が、膨張主義を採るロシアと日本の対立に拍車をかけていた。
日本側には戦争への自信などなかった。世界最大の陸軍国ロシアと一対一で戦って勝つ自身を持つものなど居なかっただろうから、自信の欠如は当然だったかもしれない。しかし、もう一点、のっぴきならない苦境を抱えていたのである。
それは何かというと、カネである。腹が減っては戦はできぬというが、カネがなくても戦争はできないのだ。畢竟、日本政府は金策に全力を注ぐことになる。
しかし、である。日本がロシアと戦いそうなのは誰にでもわかることで、そうなったら日本が負けるであろうことは火を見るより明らかだった。負けると予想される側にカネを貸す人がどこにいるだろうか。
ロシアへの警戒心を共有するイギリスですら全面的な協力はしなかった日本にとって、恩人と言うべきなのが本書の主人公であるシフである。
シフは自分の政治的な思惑も含め、日本への援助を決意する。その彼の賭けは、日本の勝利と共に報われることになり、日本は彼を最大級の恩人として遇することになる。本書はそのシフが日露戦争後に日本を訪れた際の日記からシフの姿に迫ろうというものである。
日露戦争の背後にあった金策についてはなかなかに興味深いし、そこに賭けたシフという存在にも好奇心をそそられた。ただ、日記ということになるとどこにいった、何をしたという記述が中心で、そういった意味では面白みには欠ける。ただし、彼への破格と言うべき待遇から、日本がどれほど彼に感謝していたかが余すところなく伝わってくる。ともすれば軍事面にばかり傾きがちな日露戦争の話題をカネと絡めて見る重要さを教えてくれたように思う。
ただ、日露戦争後の日本はシフに背を向けることになる。鉄道王ハリマンと結び、日本とハリマンで満鉄の共同経営を目指そうとした彼の意見を取り入れていたら。それだけで日本の近現代史は全く違う様相を見せていただろう。そういう点からも、後世から見ればほんの僅かな選択の違いが終着点を大きく左右してしまうことが分かる。歴史をもっと身近に考えられるようになる本であると思う。
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