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363冊目 恐竜と生きた男
恐竜と生きた男 恐竜と生きた男
ジョージ・ゲイロード シンプソン、スティーブン・ジェイ グールド 他 (1997/07)
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評価:☆☆☆☆


 本当の孤独というものはあるのだろうか。どこであれ、人類社会に戻れる状況でさえあれば本当の孤独ではないではないか。22世紀のサロンで行われたそんな問いかけに対して、歴史学者が想像を絶する発見の話を持ち出す。

 時間の研究者マクルーダーは、電子のエネルギーが量子として振舞うように時間も不連続な飛び飛びの値を持つのではないかと考え、実験に移す。ところがその実験の結果、彼は時間を遡ることになってしまう。8000万年前、恐竜がまだ地上を闊歩していた時代へと。

 マクルーダーは恐竜の世界で残りの人生を送ることを余儀なくされる。その世界で彼はどう生きていくのか。恐竜との戦い
やご先祖様との出会いは。

 やはりこの時代に飛ばされたということは恐竜がメインだろう。ところが恐竜や哺乳類についての記述にはかなり疑問が残る。恐竜を低脳なウスノロとするのは、著者が活躍した時代には常識だったかもしれないが、そんな生物が数億年に渡って地上の覇者として哺乳類を夜の世界に追いやれたはずがないではないか。

 今となっては、恐竜は単純な冷血動物ではなく、その巨体によって体温を維持していた哺乳類的な爬虫類だったとされているし、多くの種が知能を持っていたとされている。それどころか、恐竜好きの方々には羽毛まで持っていたのが常識とされている。

 もっとも、本書が書かれた段階で、恐竜滅亡説は存在しなかった可能性が高い。アルバレス親子による隕石衝突説の前に存在していた説としては、賢い哺乳類が誕生するや愚鈍な恐竜は競争に敗れて滅んでしまった、というようなもの。仕方がないと見るべきだろう。

 従って、正しい読み方は白亜紀に飛ばされてしまった男の孤独と孤高を思い、自分が同じ立場になったら何ができるかを想像するというようなことではなかろうか。

 本書を飾り立てているのは大物作家二人。かのアーサー・C・クラークとスティーブン・ジェイ・グールドである。著者はグールドの師だったそうで、グールドが賛辞と出版への協力を惜しまなかったのは意外ではない。

 恐竜の姿には疑問が残っても遥か過去に生きた一人の男がどう生きたかは面白い。今の科学の最前線の本も、きっといつか古くなって、本書を今眺めるのと同じように生暖かい目で見る面も出てきてしまうのだろう。科学の営みにも思いを馳せながら読むことができると思う。
SF・ファンタジー | 2007/08/11(土) 14:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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