![]() | 戦争指揮官リンカーン―アメリカ大統領の戦争 内田 義雄 (2007/03) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
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評価:☆☆☆☆
本書を手に取ったのはBK1で越知さんの書評を見たため。信頼できる書評家がいると面白い本に巡り会うのが容易になるのでありがたい。
さて、リンカーンといえば南北戦争に勝利して奴隷を解放し、「人民の人民による人民のための政治」という名スピーチ(スピーチ当初は、かなり短いものだったため歴史に残るものと思った聴衆はいなかったらしい)で日本人でも知っている。ちょっと前にアメリカで行われた大統領の評価ランキングでは堂々一位の座を射止めている。(詳細を知りたい方はニュースの視点を見てください)
南北戦争は、ナポレオン型の平地に兵力を集中させての大決戦から、国を挙げて戦争に注力する総力戦へ移り変わる時期に当たる。なので、誰もが短期間で終わると思った戦争は4年にも及ぶ長期間の戦争となった。
このような総力戦をもたらしたものに、技術の進歩もある。すなわち、電信である。電信によって遠く離れた戦場の情報をタイムラグ少なく中央が把握することで戦争の模様は変わった。もう一つは鉄道網の整備である。これによって大兵力の素早い移動が可能となった。後方での人員補給がすぐに前線の戦力充実に繋がることになったのである。
リンカーンはこの電信の技術を使いこなすことで、将軍を統率した。最初はやや弱気だった電信は、やがては戦闘のこまごましたところまで指揮するようになる。本書が扱っているのはこの戦闘指揮官としてのリンカーン。奴隷解放を実現させた、理想に燃えた人物というイメージからは程遠い実像に迫っている。
戦争に向けた総動員体制、敵軍を容赦なく捕捉・殲滅する戦術、士気を阻喪させるため容赦なく後方をも破壊し、無条件降伏を突きつける。アメリカが現在行っている戦争の原型が、実は独立戦争にあるのではないかというのが著者がたどり着いた思いのようである。
私としてはナポレオン時代から既に戦争は総力戦に変わってきていたこと、兵器類が余りに進化してしまったため訓練を受けていない兵士の価値が失われた現在では南北戦争当時と様相を大きく変えていることなどから著者の意見には賛成できない。
しかし、南北戦争の意味合いを普遍化し、歴史の中に位置づけようとしたことには失敗していてもリンカーンの実際の姿と、今もアメリカ人の心に残る南北戦争について知ることができるのは価値あることのように思う。
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