麻生 幾著
新潮社 (2001.8)
\500
評価:☆☆☆☆☆
危機管理という言葉は誰もが聞いたことがあると思う。しかし、具体的に何をどうすることが危機管理なのかが冷静に論じられてきたわけではない。
本書は国家規模の事件に対して、官邸にどのような情報が伝えられ、あるいは伝えられなかったかを通して日本の抱える問題点を示している。取り上げられているのは以下の5つの事件。
1999年 JOC臨界事故
1995年 オウム真理教教祖逮捕
1995年 阪神・淡路大震災
1994年 金日成の死に伴う北朝鮮クライシス
1994年 ルワンダ難民救援PKO派遣
これらの事件を取り上げた後で、内閣の機能強化の試みが潰えた経緯を伝え、最後に情報戦略のないことがどのような問題を招いているかをまとめている。ちょっと古い本なので、取り上げている事件はいずれも10年以上前のものであるのだが、古さを感じさせない迫力がある。
本書を読んで気づくのは、日本は情報を集約し分析する機能が実に弱いということ。同盟国間でも熾烈な情報戦争が戦われ、経済分野などでの交渉を有利に導こうとしている中にあって日本の取り組みは余りにもお粗末過ぎる。
また、一度災害や事件が発生すれば迅速な情報の伝達と適切な対応が要求されるが、分析がなされないことで重要な情報とどうでも良い情報が官邸に殺到し、結局は情報が活かされないこともある。また、重大事件勃発時にも省庁を横断する危機管理体制がないことも問題を深くしていると言わざるを得ない。
情報システムに重大な欠陥があることは明らかである。それを強く認識させてくれるノンフィクション。その後の10年で、少しは状況が変わっていることを祈らずにはいられない。
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