武田 邦彦著
洋泉社 (2007.3)
\1,000
評価:☆☆☆☆☆
本書は環境問題全般について、世間にどれだけウソが撒き散らされているかを明らかにしている。多くの人は善意で環境問題に取り組んでいるのだろうが、その行動の多くは環境を改善する効果が全くない、とは驚きではないか。
たとえば、ペットボトルのリサイクル。実は、回収されたペットボトルのほとんど全ては焼却されている。熱にしてエネルギーを回収するという意味でリサイクルという言葉が使われているのである。それでは何のために多くの人が苦労してゴミの分別回収に協力しているというのか。
それでもゴミを分別して出すことに何らかの利点があるなら良い。しかし、現実はそうではない。ゴミを分別しなければならなくなったことで、排出されるゴミの量は増加してしまった、と本書は指摘する。環境先進国とされることの多いドイツも、ゴミの分別収集を実施した結果、ゴミが激増してもはや国内では捌ききれなくなっている。なんのために我々はゴミの分別回収をしているのだろうか。もう一度じっくり考える必要があるのではないか。
いや、それでもダイオキシンの問題があるではないか、と指摘されるかもしれない。ダイオキシンを発生させないためにゴミを分別するのだ、と。それにも本書は応えている。ダイオキシンには、大した毒性はない。
驚かれるかもしれないが、これはもう明らかになっている。冷静さを欠いた、おどろおどろしい報道によってダイオキシンが猛毒だと思わされてしまうかもしれないが、ダイオキシンの急性毒性として知られているのはなんとニキビができることくらいである。ダイオキシンは環境問題で注目を浴び、徹底的に調べられたのに、人間にニキビ以上の害をもたらす証拠がないのだ。タバコとは大違いである。
いやいや、ダイオキシンの真の威力は急性毒性ではなくて慢性毒性にあるのだ、と思われる人もいるかもしれない。しかしそれも過ちである。イタリアで起こった化学製造会社で起こった爆発によって近隣の住人が大量のダイオキシン類を浴びてしまったセベソ事件があるが、ここでも多くの調査が行われたものの、ダイオキシン暴露が原因と確定できる死者は出ていない。カネミ油症に至っては、ダイオキシン類ではなく毒性があることが明らかになっているPCBがダイオキシンと強弁されている始末である。
これらの事実を明らかにしているだけでも本書の価値は大きい。その価値を更に高めているのは、なぜこのような不合理なことがまかり通っているのかまで踏み込んでいる点だろう。気になる方は是非とも本書を手にとって欲しい。
環境問題は善意だけではなく、冷静に何が必要なのかを知らなければ取り組めないテーマである。イメージ優先で、感情に訴える手段はコマーシャリズムとしては有効かもしれないが、環境を守るためには役に立たない。まず知識を手に入れ、考える土壌を作る。その上で、極めて有効な本だと思う。
なお、環境問題については私もそれなりに興味を持ってきたので、このブログでも何冊か紹介している。興味がある方は以下のレビューも参照して欲しい。
310冊目 地球温暖化は本当か?
297冊目 リサイクルアンダーワールド
104冊目 環境問題のウソ
ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)




