NHK「恐竜」プロジェクト編 / 小林 快次監修
ダイヤモンド社 (2006.7)
\2,520
評価:☆☆☆☆☆
6500万年より更に昔の時代、恐竜と哺乳類は共に生きていた。といっても、多くの人がイメージするとおり、恐竜は絶滅するまで地上の支配者であり続けた。大まかには、当時の哺乳類は恐竜の魔の手を逃れて細々と生活してきたと言っていいだろう。
実際、哺乳類は恐竜の活動しない夜に生活の場を移したと推測されている。その結果、哺乳類は色を判定する能力を失った。鳥類は4原色を持つ対し、哺乳類のほとんどは2原色。闘牛の牛は赤い布の色に反応しているわけではなく、ひらひらした動きに反応していると言われるのは、牛も恐竜時代の影響を引きずって色を見分けることができないことによる。再び3原色を取り戻し、色の世界に生きるようになったのは一部のサル類しかいない。(このあたりの話は111冊目で紹介した『眼の誕生』に詳しい。)
色の話もそうなのだが、意外なことに哺乳類の進化に恐竜は大きな影響を与えてきたことが分かってきた。恐竜と哺乳類が共に生きた時代に、それぞれがどのような進化を辿ったか、互いの進化にどのような影響を与えたかを俯瞰する。
最新の恐竜学の知見が豊富に盛り込まれていて、有名どころの恐竜たちがどのような進化戦略を持っていたのかが第一の魅力。第二は我々の先祖である、哺乳類がこの期間に手に入れた多くの戦略を恐竜のそれと比べながら見ることができること。NHKスペシャルのめの取材から生まれた本なので図版が多いのも魅力である。
30m以上にもなる恐竜がなぜ誕生したのかを環境面から探り、恐竜を食べる哺乳類がいたことに驚き、ティラノサウルスの狩りの実際に迫る。画像を多用しており、情報が詰め込まれているわけでもないのでさっと読めるのだけれども、知識は豊富なので読後の満足感は十分。
個人的に印象的だったのはこの言葉。
「ほ乳類が獲得した鋭敏な耳、大きな脳、胎盤という繁殖戦略は、恐竜の支配がなければ、けっして実現しなかったでしょう。その意味で私たちは、それらの進化を強いた恐竜に感謝すべきなのです」
(P.268)
恐竜が絶滅したから哺乳類の天下になって我々が生まれた。そんな単純なシナリオではなく、もっと複雑で魅力的な歴史が展開されていたことを教えてくれた大変面白い一冊。
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