ジョン・クラカワー著 / 森 雄二訳
朝日新聞社 (2000.5)
\693
評価:☆☆☆
なぜ山に登るのか。そこに山があるからだ。
そんな言葉を聞いたことがある人は多いだろう。あと、娘さん、よく聞けよ、山男には惚れるなよ、であるが、世の娘さん、安心して欲しい。私は山男じゃないので惚れてくれ問題なしである。
そんな非山男たる私にとって、最も縁が遠いこの世界を覗きこませてくれたのが本書。著者自身もクライマーで、名だたる名峰を制覇してきたわけではないにしても登山の魅力を感じている人物である。と同時に、237冊目で紹介した『信仰が人を殺すとき』の著者でもある。この本に出会わなかったら登山の本など手に取ることは無かっただろう。
12編のエッセイで構成されている本書は、正面からなぜ人が登山に魅せられるのかを取り上げているわけではない。それでも山を制覇したときの喜びの大きさが、栄誉が、人々をより高い山へ、同じ山ならより難しい登攀ルートへ、そしてより難しい手段へと向かわせる魔力の一端を垣間見ることはできる。理解はできなくても、知ることができるのは大きいのではないか。
エベレストをはじめとする8000メートル級の山々に挑むことがどのような意味を持つのか。悲劇と栄光の物語と、それに絡む個性的な人々のおかげで楽しみながら読むことができた。そして、山男には惚れるべきではない理由も分かったような気がする。断崖絶壁にロープ一本でぶら下がり、氷河を超え、命懸けで行うのが、頂上へたどり着くことなのだから。でも、そこにも魅力があることを感じさせる、そんな本であった。
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