加藤 寛一郎〔著〕
講談社 (1994.8)
\1,050
評価:☆☆☆☆
本書のサブタイトルは、“ハイテク旅客機がなぜ墜ちるのか”で、これが本書の内容を実に良く表している。
昨今の飛行機は自動化された機能が非常に多い。それは、人間はミスを犯すものだとの人間工学の立場に立った設計思想を活かしているからだ。ところが、機械に頼ることができるのは、所詮は限られたシーンに過ぎない。安定した状況では設定した航路を辿り、着陸も行うことができるものの、予期せぬ事態が発生したときには人間の方が頼りになるものなのだ。
ところが、人間工学の立場から機械化を進めた結果として新たなパターンの事故が起こっている。機械は便利な道具ではあるが、それに頼りすぎたら手痛いしっぺ返しを食らうことになるのだ。
本書では、機械に頼りすぎた結果として起こった事故を多く取り上げている。壊れた計器の数値を疑うことなく機械に頼りすぎてしまったり、機械の設定と矛盾する操作をやってしまったり。ハイテク化した故に起こる事故もあるのだ。
専門家としての知見を活かして、多くの事故について、原因から事故当時の状況、経過、そして結末までを紹介している。我々素人にはなじみの無いコックピットの中や付帯設備についても懇切丁寧に解説されているので、どの事故では何が原因だったのか、ということが実に良く分かる。
航空力学についてもざっと触れられているので、どのような設計が行われているのか、どのような原理で飛行機が飛んでいるのかも雰囲気を感じられるので航空ファンにはたまらないのではなかろうか。
事故の中には奇跡的に全員生還したものもあれば、残念なことに多くの死者を出してしまったものもある。だが、著者らの取り組みが、次の事故を防ぎ、飛行機はより安全になっているのは事実だ。今や、飛行機事故はほとんど起こっていない。事故の記録は、人類が事故から何を学び、どう対応してきたかの歴史でもあるのだ。
だから、事故と言う嘆かわしいことにだけ目を向けるのではなく、どれほど飛行機が安全になっているのかを知るために読むのに丁度良いと思う。同時に、失敗学という立場からも興味深い点が多々ある。機械化は何も飛行機だけに限った話ではなく、家電に至るまで世の趨勢がそうなっているのだから。機械のない昔を懐かしむのは意味が無い。機械を制御し、使いこなすためにもこのような本からは学ぶところが多いように思う。
とか言いながら、私自身としては面白いから読んでいるだけなのだけど。
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