源田 実著
文芸春秋 (1996.12)
\540
評価:☆☆☆
タイトルどおり、海軍航空隊の始まりから末期まで、現場で関わり続けた著者による記録。
太平洋戦争は大洋での戦いのあり方が変化した時代であった。戦艦を中心とする艦隊決戦から、海上航空戦力を活用した機動戦への変化は今に至るまで続いている。アメリカの制海力を支えているのは巨大な原子力空母群なのだ。
勿論、転換期であった太平洋戦争時には未来が明らかであったわけではない。なので、当時は戦艦も作れば空母も作っていた。だが、決戦方式の変化は日本軍の発揮した初期の攻撃力の高さからあっというまに訪れ、戦艦は無用の長物と化した。象徴的なのが戦艦として史上最強の主砲を持った超弩級戦艦大和が襲い掛かる航空戦力相手になんら有効な抵抗をすることなく沈んでいったことであろう(イギリス人にとっては戦争開始直後にプリンスオブウェールズを沈められたことがそれだろうが)。
錬度と性能から日本海軍は緒戦において勝利を重ねるが、ミッドウェーの敗北を皮切りに負け戦が続き、遂には降伏するに至る。皮肉なことに、航空戦術の圧倒的な力を示した日本が大和に見られる大鑑巨砲主義に陥り、当初は押され気味だったアメリカが空母群をフル活用して日本を屈服させたのだった。
余談だが、宇宙戦艦ヤマトが露骨なまでに波動砲に頼る大鑑巨砲主義の権化だったのはなんとも印象的である。宇宙でも航空戦の方が有利そうなものだが。コスモタイガーとかブラックタイガーを積んでいたのだからもっと活躍させろと。まにあっくな話はこの辺でやめておく。
著者はこのような客観情勢の中で真珠湾やミッドウェーの戦場に参謀として参加し、最後には本土で迎撃の指揮を採り敗戦を迎えた。本書はその回顧談である。
著者ならではの経験だろうが、常に激戦の中にあり、名の知られた海戦の多くに参加していることから、彼の回顧はそのまま太平洋戦争の概略になっている。真珠湾でなぜ第二波の攻撃が無かったのか、ミッドウェーで換装中に攻撃を受けることになった経緯はどのようなものか、現場にいたものにしか表現できないであろうことが多い。
技術的な競争や、暗号解読など水面下に隠れた奮闘などにはほとんど触れられていないのが残念だが、航空戦の参謀であった著者にそこまで求めるのは酷であろう。太平洋戦争に興味がある方は一気に読めるのではないか。
個人的には気になった点として、日本人の少なからぬ軍人が発揮した自己犠牲を褒め称えるような記述があるが、その自己犠牲によって歴戦の勇者たちが散華し、戦力の低下を招いたことは記していて良いと思う。防禦を削ることで軽量化したことが零戦の高運動性およびそれに支えられた攻撃力を持ったわけだが、同時に乗員の死亡率は少なくなかった。また、アメリカほど乗員を救おうとする努力を払わなかった。もとより戦争なのだから犠牲はゼロにはできないだろうが、それでももっとやり方はあるはずで、その点についてもっと現場からの視点があっても良かったように思われてならない。
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