カレンダー
03 | 2007/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
プロフィール

Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


宣伝目的以外のあらゆるコメント、TBを歓迎します。

↓ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してください。


にほんブログ村 本ブログへ


kids goo弾かれサイトですので閲覧はご注意を。頭が悪いのが伝染する恐れがあります。
notforkids.jpg

FC2カウンター
最近の記事
Tree-Arcive
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
巡回先

にほんブログ村 本ブログへ



うちの子も元捨て犬です。今はすっかり我が家の一員。甘えるのは下手だけどとっても可愛い子です。

Skywriterさんの読書メーター

ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 | --/--/--(--) --:-- | |

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

粛清の日
 リビングに3つある本棚に本が入りきらなくなってしまったので、泣く泣く大粛清。もうスターリン、って感じー。クメール・ルージュほどじゃないけど。もっとも、スターリンの場合にはトハチェフスキーのような有能な将軍すら粛清していたので比較的面白くない本ばかりを切り捨てている私の方がマシ。

 整理していたら奥から出るわ出るわ、面白そうな本が。かつて読んだはずなのだけど、忘れているものも多いし、後回しにして結局読んでなかった本もある。ああ、時間は有限なのに欲しい本は無限なのね。

 本を見たヒトに、本の関係の仕事をしているのかと尋ねられたりもしたけど、もしそうだったらきっと桁が違うんだろうなぁ。

 夢物語だけで言うなら、地下室に書斎を構えて、そこで好きなだけ本を読んでなにか書く生活は素敵だなと思う。そんな才能はないだろうけど。世界と多くの人物を生み出して、話を完結させ、それが受け入れられるというのは大変な仕事。そんな仕事をしてくれた人が沢山居たおかげで、毎日活字を眺める楽しみを味わえるわけだ。

 今のペースでいけば、今年は150冊は大幅に超えそう。その速さで増える本を収納する場が限られる以上、きっと近いうちにまた粛清を強いられる。なにせ、4年で600冊のペースでは増やせないのは明らかだから。粛清もきっと良い本に出合えるための代償なのだろう。そうは思っても気が進まないのは事実なのだった。
関連記事
スポンサーサイト
雑記 | 2007/04/29(日) 23:18 | Trackback:(0) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

312冊目 似せてだます擬態の不思議な世界
似せてだます擬態の不思議な世界

藤原 晴彦著

化学同人 (2007.1)

\1,575

評価:☆☆☆☆


 圧倒的多数の生物にとっては油断が捕食に直結する。特に体が小さく、力の少ない個体ほど犠牲になっていく。対抗策として多くの生物がR型の進化戦略、すなわち多数の子孫を生み出して、捕食され尽くされないようにする戦略を採る。

 しかし、それだけではまだ弱い。生物個体が生き残るための努力が払われている。まさに命がけで。その手段として有効なのが擬態である。

 たとえばナナフシ。植物の繊維にしか見えない外見を活かし、周囲に溶け込んで捕食者の目から逃れるのが戦略。シャクトリムシやミノムシ、カメレオンにカエルも同じように周囲の景色と区別がつけづらいようにしている。

 一方で、周囲に溶け込まなくても良い擬態もある。アゲハチョウの幼虫は4齢幼虫(脱皮の回数が3回まで)は鳥の糞にそっくりの外見をしている。これが5齢幼虫になると、幼虫が餌とする柑橘系植物の葉に近くなるから不思議だ。私の実家にはミカンの木があり、子供の頃はよくそこに居候を決め込んでいたアゲハの幼虫をつついてはあの臭いにやられたいたものだ。

 別のパターンの擬態もある。毒虫にそっくりの外見をすることで、自分は不味いぞとアピールするものだ。

 それどころか、捕食者の側が擬態を遂げることもある。ハナカマキリ(昆虫エクスプローラーで画像を見てもどこにいるか分からない)は見事なまでに花と同じ形状をしていて、騙されてやってくる被食者をじっと待つ。他には、他のメスそっくりの形をしたりフェロモンを出したりしておびき出されたオスを食べてしまうというものもある。

 一言で擬態と言っても実に多様であることが分かると思う。本書は奥の深い擬態の世界をやさしく教えてくれている。虫が苦手な人には逆効果かもしれないが、多くの図版があることでその擬態の見事さに感嘆させられる。ここまでで挙げてきた擬態には違った名前が与えられていて、それぞれに興味深い例がいろいろあることには生物界の進化の妙を思い知らされる。

 視覚だけではなく、あらゆる情報を使って生き残りを図る生物の努力には生物の奥深さが見えて面白い。熾烈な競争の結果が、事実は小説よりも奇なり、というほどの複雑さを生み出しているのだろう。昆虫は苦手だとか気持ち悪いなどと一刀両断せずに、複雑な世界を覗き込んでみたらきっと新たな知識を得る喜びに巡り会えるだろう。
関連記事
生物・遺伝・病原体 | 2007/04/27(金) 23:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

311冊目 海軍航空隊始末記
海軍航空隊始末記

源田 実著

文芸春秋 (1996.12)

\540

評価:☆☆☆


 タイトルどおり、海軍航空隊の始まりから末期まで、現場で関わり続けた著者による記録。

 太平洋戦争は大洋での戦いのあり方が変化した時代であった。戦艦を中心とする艦隊決戦から、海上航空戦力を活用した機動戦への変化は今に至るまで続いている。アメリカの制海力を支えているのは巨大な原子力空母群なのだ。

 勿論、転換期であった太平洋戦争時には未来が明らかであったわけではない。なので、当時は戦艦も作れば空母も作っていた。だが、決戦方式の変化は日本軍の発揮した初期の攻撃力の高さからあっというまに訪れ、戦艦は無用の長物と化した。象徴的なのが戦艦として史上最強の主砲を持った超弩級戦艦大和が襲い掛かる航空戦力相手になんら有効な抵抗をすることなく沈んでいったことであろう(イギリス人にとっては戦争開始直後にプリンスオブウェールズを沈められたことがそれだろうが)。

 錬度と性能から日本海軍は緒戦において勝利を重ねるが、ミッドウェーの敗北を皮切りに負け戦が続き、遂には降伏するに至る。皮肉なことに、航空戦術の圧倒的な力を示した日本が大和に見られる大鑑巨砲主義に陥り、当初は押され気味だったアメリカが空母群をフル活用して日本を屈服させたのだった。

 余談だが、宇宙戦艦ヤマトが露骨なまでに波動砲に頼る大鑑巨砲主義の権化だったのはなんとも印象的である。宇宙でも航空戦の方が有利そうなものだが。コスモタイガーとかブラックタイガーを積んでいたのだからもっと活躍させろと。まにあっくな話はこの辺でやめておく。

 著者はこのような客観情勢の中で真珠湾やミッドウェーの戦場に参謀として参加し、最後には本土で迎撃の指揮を採り敗戦を迎えた。本書はその回顧談である。

 著者ならではの経験だろうが、常に激戦の中にあり、名の知られた海戦の多くに参加していることから、彼の回顧はそのまま太平洋戦争の概略になっている。真珠湾でなぜ第二波の攻撃が無かったのか、ミッドウェーで換装中に攻撃を受けることになった経緯はどのようなものか、現場にいたものにしか表現できないであろうことが多い。

 技術的な競争や、暗号解読など水面下に隠れた奮闘などにはほとんど触れられていないのが残念だが、航空戦の参謀であった著者にそこまで求めるのは酷であろう。太平洋戦争に興味がある方は一気に読めるのではないか。



 個人的には気になった点として、日本人の少なからぬ軍人が発揮した自己犠牲を褒め称えるような記述があるが、その自己犠牲によって歴戦の勇者たちが散華し、戦力の低下を招いたことは記していて良いと思う。防禦を削ることで軽量化したことが零戦の高運動性およびそれに支えられた攻撃力を持ったわけだが、同時に乗員の死亡率は少なくなかった。また、アメリカほど乗員を救おうとする努力を払わなかった。もとより戦争なのだから犠牲はゼロにはできないだろうが、それでももっとやり方はあるはずで、その点についてもっと現場からの視点があっても良かったように思われてならない。
関連記事
太平洋戦争・二次大戦・現代史 | 2007/04/25(水) 23:26 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

310冊目 地球温暖化は本当か?
地球温暖化は本当か?

矢沢 潔著

技術評論社 (2007.1)

\1,659

評価:☆☆☆☆☆


 産業革命以後、人類の活動の影響による二酸化炭素の急増は地球を温暖化させ、かつて無いほどの環境破壊をもたらそうとしている。既に平均気温は0.6℃上昇し、南極やグリーンランドの氷が溶け始めている。このまま二酸化炭素の排出を続ければ早晩地球環境は激変し、人類は勿論のこと多くの生物に大きな影響を与えずにはいられないだろう。一刻も早く二酸化炭素の排出を抑え、二酸化炭素レベルを下げなければならない。

 このような類の恫喝を聞いたことがあると思う。その究極の姿が京都議定書である。

 ところが、驚くべきことにこの”科学的言説”には確たる証拠が何一つとして存在しない。本書は否定派としての立場ではなく、懐疑派としての立場から地球温暖化論がどこまで正しいのか、また、仮に温暖化しているとしたらどれほど大きな問題なのかを明らかにしている。

 まず、京都議定書の持つ政治的な側面から。これだけでもナイーブに地球環境を思ってきた人はショックを受けるはずだ。なにせ、ヨーロッパ諸国は日本にだけ不利な条件を押し付けて自分たちはなんら努力をしなくても目標を達成できる立場にあり、総排出量のたった二十分の一しか占めていない日本にだけ過度の義務が課せられているという。ブッシュのアメリカが京都議定書から脱退した理由は、ブッシュの孤立主義ではなくて二万人に及ぶ科学者たちの署名が少なからぬ影響を与えているなど、温暖化論のみを煽るニュースメディアでは目にすることができない貴重な事実を教えてくれる。

 そう。地球温暖化論は科学じゃない。政治の世界の出来事なのである。だから、地球温暖化の証拠は捏造されてきたし、今もまともな調査はろくに行われていない。

 最近の観測データによれば、グリーンランドや南極の氷はむしろ増加しているという。なぜ温暖化して氷の量が増えるのか。氷が増えているのになぜ海面が上昇するなどという予想がまかり通るのか。不思議なことだ。

 でも、二酸化炭素濃度と温度のグラフを取ると明らかな一致が見られるではないか。ずっと安定していた気温が近年になって上昇したことを示すホッケースティック曲線を見たことがある。そう思うかもしれない。しかし、いずれのグラフにも問題があることが分かっている。そもそも、観測自体ろくに行われていなかった時代の気温を見てきたかのように推定することには大きな疑問があると言わざるを得ないだろう。

 地球温暖化論はなぜこうも根強いのか、という疑問には、既に答えは出ている。これが科学ではないからである。最早これは政治の問題で、研究者にとっては貴重な予算を確保する道なのだ。だからこそ気象学者らは太陽活動と地球の気温が相関することすら認めず、あたかも太陽からの熱量はいつでもどこでも一定で、二酸化炭素の量だけが地球の温度を決めているかのように装う。空気中には温室効果を持ち、二酸化炭素より遥かに多く存在する水蒸気は無視して。

 問題なのは、これら無視してはならないことを無視していることだ。政治と結びつき、予算を獲得するのが科学なのではなく、多くの可能性を認めながら懐疑的に物事をとらえていかなければ、それは疑似科学に堕してしまう。残念なことに、地球温暖化論はこの類なのだろう。

 更に。かつて恐竜が地上を闊歩していた頃、北極圏は南国のような気温だった。化石の証拠から北極圏が寒冷ではなかったことが分かっている。では、それで不都合があったのか。

 いや、そんな昔のことは役に立たん、とおっしゃるかもしれない。しかし、今は氷で不毛な世界最大の島、グリーンランドはなぜ緑の島と呼ばれるのか。それは、ヴァイキングが活躍していた頃には実際にあの島が緑に覆われていたからである。これほどまで近い時代にも、それほど温暖な時代があった。そして、ヴァイキングが活躍した時代に地球規模で大問題が起こっていたとの証拠は無い。イングランドやヨーロッパの沿岸地域は大変だっただろうが。

 地球温暖化論に対して懐疑的な視線を持ちながら、冷静で分かりやすくまとめられている良書であると思う。話は面白く、なぜ温暖化論がこれほど力を持っているかが分かるし、その問題点も分かる。踊らされる前に、読んでおく価値は高いと思う。冷静であること。正しく恐れることは大事だが、その前提にあるのは正しい知識があることだから。
関連記事
その他科学 | 2007/04/24(火) 23:53 | Trackback:(0) | Comments:(4)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

309冊目 ヒストリアン 2
ヒストリアン 2

エリザベス・コストヴァ著 / 高瀬 素子訳

日本放送出版協会 (2006.2)

\1,785

評価:☆☆☆☆


 竜、すなわちドラキュラと歴史家達の戦いは終末へ向かってどんどん進んでいく。

 先の分で書いておけばよかったのだが、本書は主人公であるはずの少女がドラキュラとの戦いの終幕近くになってヒストリアン側に巻き込まれていくのと、少女の父を中心としたヒストリアン達が何を突き止めどのようにドラキュラを追い詰めようとしてきたか、というのが平行して進んでいく。分量としては父親の分が圧倒的で、主人公は少女の父親では無いかとの錯覚を覚えるほどだ。

 ところがここにきて状況が動き始める。父は姿を消し、少女は父を探す旅に出る。その少女に付きまとう影を避けながら、彼女は父を探し当てられるのか。

 追憶のような形で平行して進むのは少女の父の東欧行きの記憶。ハンガリー、そしてドラキュラことヴラド・ツェペシュがワラキア公として君臨したブルガリアがその舞台である。ワラキア公ゆかりの地に何が待つのか。

 作者の意図には反していると思うのだが、この東欧訪問が(大団円を超えて)本作品で最も印象深いところである。そのまま観光ガイドとして通用しそうなほどの名所の書き込みを読んでいると自分もその地を訪れたくなるほど。

 魅力の少なからずはこのガイド的な側面にあると思うのだが、もう一つは、非常に上手く歴史的事実とフィクションを混ぜ合わせていることにあると思う。

 正直に言ってしまえば、掘り下げが甘いためか人間的魅力に欠ける人物達と、狙いがどうにも定まっていないようなドラキュラとの戦いには、緊迫感が不足しているように感じられてしまう。その欠点を覆うのが、この歴史の扱い方にあるのだろう。ワラキア公のことを知っている人はより楽しめる、そんな作りになっていると思うし、本書をきっかけに東欧の歴史というなかなか日の目の当たらない分野にも興味が向くきっかけになるのではないかと思われてならない。


 以下、ネタバレ防止。気になるヒトは続きを読んでください。ただし、本書を読もうと思っている方は絶対に読まないよう。
続きを読む
関連記事
SF・ファンタジー | 2007/04/23(月) 23:04 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

308冊目 ヒストリアン 1
ヒストリアン 1

エリザベス・コストヴァ著 / 高瀬 素子訳

日本放送出版協会 (2006.2)

\1,785

評価:☆☆☆☆


 親愛なる、不運なるわが後継者へ

 そんな書き出しで始まる謎の手紙を少女が父の書斎で発見したときから、異常が支配する世界が彼女を巻き込んでしまう。「竜」、ここではドラキュラを指すその存在が顕わになっていくのだ。

 ブラム・ストーカーのドラキュラは15世紀にワラキアを支配した暴君、ヴラド・ツェペシをモデルにしていることは有名な逸話である。ヴラドはオスマン帝国の侵略から故国を護った英雄である側面と、自国の民であれ他国の捕虜であれ、気に食わないとなればすさまじく残虐な方法で処刑していた。その方法から異名が付けられているほどだ。すなわち、串刺公、である。串刺にされ死に切れない人々が苦悶の声をあげるのを彼は楽しんでいた。

 ブラドの異常さは小説とするのに格好の題材だったのだろう。その狂気、その恐ろしさは図抜けている。それゆえだろうか、中欧には吸血鬼伝承が大量に残されているという。(もっとも、中欧の伝説で語られる吸血鬼は血の詰まったぶよぶよの皮袋なのだが)

 ブラドは、最終的にはオスマン帝国との闘いの中で命を落とす(別に暗殺説もあり)。彼の略歴はwikipediaに詳しいので興味がある方はヴラド・ツェペシュの項を参照したら本書をより楽しめるだろう。

 さて、本書はこのヴラドの陰がちらつく小説である。歴史の深い闇の奥から触手を伸ばす怪物と歴史家(ヒストリアン)と影で争い続けてきた。竜の絵が描かれているだけで残りが空白の謎の書物と出会ってしまった歴史家たちと。

 歴史家たちは中欧や中東とヴラドに縁があった地を巡り、彼の存在の謎を解き明かそうとする。その紀行文的な側面だけで十分に面白い。上巻だけだと騒ぐほどの名作とは思えないが最後までは読みたくなる小説、といったところか。



 以下、ネタバレ防止。本書を手に取る積りの方は続きを読まないことをお勧めします。
続きを読む
関連記事
SF・ファンタジー | 2007/04/21(土) 23:59 | Trackback:(0) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

307冊目 ヒトは今も進化している
ヒトは今も進化している

ローワン・フーパー著 / 調所 あきら訳

新潮社 (2006.8)

\1,575

評価:☆☆☆☆


 進化というものは何千年も何万年もかけて行われるもので、自分がその渦中に居るというのはなかなか想像のつくものではない。実際、自分の姿を見ても両親に良く似ている私の場合、多読傾向と偏屈具合が父親にそっくりらしい。あと皮肉屋なところも。父の名誉のために言っておくと、今はすっかり落ち着いて良いおじいちゃんになっている。

 本書は連載されていたコラムを集めたものである。その性格上、扱う話題が広いこと、一つのトピックに割かれるページ数が少なく掘り下げは少ないことがある。そしてもう一つ付け加えるなら、その短いページに読者の興味をひきつけるため、面白い話題を集めているということが挙げられるだろう。

 人気のあるコラムを続けるというのは、上記の条件を考えると至難の業であることが想像できる。文章が面白く、取り上げる話題が面白く、なおかつ飽きられないようにしなければならないのだから。だから、人気を誇ったコラムニストの本はいつまでも輝きを失わない。それはたとえばスティーブン・ジェイ・グールドであり、マーティン・ガードナーであり、アイザック・アジモフだったりする。

 そこに本書の著者を付け加えようというのはちょっと意欲的過ぎるかもしれない。この一冊で評価を下すには早すぎる。それでも本書には面白いトピックが沢山載せられている。

 最初に男の子を生むと流産しやすくなる理由や、浮気者と律義者を分ける遺伝子、過労死、記憶力、アスペルガー症候群、ガンの話題など、様々な話題を取り上げているので読んでいて飽きることがない。しかも、前述のとおり一つ一つのトピックは短いので、通勤電車の中でも十分に楽しめるのではなかろうか。

 本書に限らず、科学系の本を読んでいて楽しいのは、知識が繋がる快感を味わえることであろう。全然関係のなさそうなこと同士が、実は深いところでつながりがあることを知れば、物事を多面的に見ることができるようになる。美しさも含めて。男が胸が大きくウエストが細い女性を好むのも遺伝的な背景がある、なんて面白いと思いません?だから私がそういう女性に惹かれても仕方がないのであるよ、うん。

 進化と人間について興味深い話を沢山扱っている上に、読み物としてみてもとても面白い一冊。しかも著者には日本滞在経験もあることから少なからぬ話題で日本のことが取り上げられているので日本の読者にも親しみが湧きやすいだろう。ザ・我慢なんて久々に聞いたし。進化を巡る科学の面白さについて知るのに格好の一冊であると思う。
関連記事
生物・遺伝・病原体 | 2007/04/19(木) 23:27 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

306冊目 アーサー王の死
アーサー王の死

T・マロリー著 / W・キャクストン編 / 厨川 文夫編訳 / 厨川 圭子編訳

筑摩書房 (1986.9)

\1,050

評価:☆☆☆


 イギリスの英雄、アーサー王と円卓の騎士団については随分前から名前を知っていたが、なかなか手に取る機会が無かった。英雄の伝説には面白いものが多いので楽しみにしていたのだが、結果的には予想しなかった展開で面白かった。期待とは別の意味で。

 『プルターク英雄伝』もそうなのだけど、異文化の英雄伝は理解に苦しむこともあるのだ。どのあたりかというと、恐らくは、英雄や騎士といったイメージが我々の想像と当地のとで異なっているためにギャップが大きいからではなかろうか。

 本書の前半はタイトルどおりアーサー王が活躍する話である。英雄に付き物の貴種流譚に始まり、アーサー王がついにはローマ帝国の皇帝を打ち破るなど大活躍するのだが、後半になると主人公はラーンスロットという騎士に移ってアーサー王は脇役に凋落する。しかも、このラーンスロットはアーサー王の妃と相思相愛(おい!)なのである。ラーンスロットについての話になると、どうも我々が抱く騎士のイメージからかけ離れていってしまうのがなんとも面白い。

 裏切り有り、謀殺有り、寝取られ有りと高潔さと無縁っぽい感じで、人間くささを溢れさせているのが、もしかしたら魅力の一端なのかもしれない。ただ、どうにもご都合主義としか思えない展開やキリスト教の信仰に基づいた奇跡の話が多用されると異文化に属する私としてはどうにも違和感を感じてしまったが。

 本書はタイトルどおり、アーサー王の死をもって終わる。どのように死が訪れたかは本書を当たってもらうとして、英雄が栄光を掴み、そして破滅していくというのは語り継がれる英雄譚としての資格を得やすいのかもしれない。

 くさした点もあるが、アーサー王と円卓の騎士団については成立から滅亡まで通して書いてあるし、出てくる騎士の数が多すぎてどうにも名前が覚えにくい欠点はあっても主要な人物についてはその魅力を感じることができるので、アーサー王伝説に興味がある方は手に取ってみてはいかがだろうか。
関連記事
その他小説 | 2007/04/18(水) 23:59 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

305冊目 相対論がプラチナを触媒にする
相対論がプラチナを触媒にする

村田 好正著

岩波書店 (2006.11)

\1,260

評価:☆☆☆


 プラチナ、日本名を白金といえば、貴金属で有名なので指輪などの原料として知る人が多いのではないか。ところが化学の世界では、プラチナは優れた触媒として名を馳せている。一時期世間を騒がせ、現在ではガセだということが判明している常温核融合もこのプラチナを使っていたものだった。

 このプラチナの触媒作用を説明するのに相対性理論が役立つというのはなんとも意外な話である。というのは、極微の世界を支配しているのは量子力学であって相対論ではない。相対論と量子力学はなかなかに相性が悪い法則で、理論物理学者たちはこの二つの法則を結び付けようと日夜頭を悩ませているのだ。そんな背景を知れば、本書に興味が沸いてくるのも分かるだろう。

 そんなわけでで、読んでみたのだが、どうも化学に苦手意識を持つ人には勧められないのではないか、と思わずにはいられなかった。化学を専攻していない人への配慮として例を多く取り上げて分かりやすくなるように心がけているのは伝わってくる。しかし、簡略化の方向がちょっとずれているためか、文章に引き込まれることがなかった。このあたり、『人類が知っていることすべての短い歴史』の著者ビル・ブライソンのすごさを改めて思うことになってしまった。

 それでもプラチナがなぜ触媒作用を持っているのかはとてもよくまとめられているし、相対論がどのように触媒機能を支配しているかも分かりやすかった。

 たとえば一酸化炭素を二酸化炭素に変える反応の場合、まず一酸化炭素がプラチナの表面に吸着する。すると一酸化炭素と結びついたプラチナの配置が変わる。反応後に二酸化炭素を放出すると再びプラチナの配置は元に戻るのだが、このときの変化が目に見えるような写真が掲載されている。金属表面の原子が簡単に配置を変える姿が見られてなかなかに面白い。

 結晶構造など、説明的な文章が多くなってしまっているし、正確に表現しようとするためか数式もいくつか出てくる。なので、化学や物理の道に進んでいる方には分かりやすいかもしれないが、そうではない方は写真を眺めながら、理解できないところは理解できないと思って読み進めるのが良いのかもしれない。それでも図版の面白さやミクロの世界にも相対論が使えることの面白さの一端を垣間見ることができるのではなかろうか。
関連記事
その他科学 | 2007/04/17(火) 23:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

304冊目 美しき死体のサラン
美しき死体のサラン

ムーン グッチン著 / 上野 正彦訳

青春出版社 (2004.6)

\1,470

評価:☆☆☆


 韓国の監察医が書いた、自分がこれまで巡り会ってきた死体についての本。国や民族を問わず、殺害された人には苦悶や苦痛があり、自殺した人には苦しみがあった。とりわけ、男女の間の話には。

 本書で取り上げられているのは男女関係の中で死に、殺されていった人々。名にしおう強姦大国、韓国のことだから強姦殺人の話が随分と多いように思われた。その被害者の苦しみ、加害者の傲慢さに心を動かされずには居られない心が切々とつづられていて、犯罪に対する憎しみが湧いてくる。著者のような監察医の存在が欠かせないのは犯罪を野放しにせず、犯人を捕えるための強力な手段になるからだ。

 思わぬところから手がかりを得たり、一般人は知らないような知識から鋭い推論をしたり、またあるときは失敗したりと、紆余曲折を経た事件のあらましを語っている。

 ただ、それぞれの事件の話が短すぎ、本の厚さ・重さに比して内容が薄いのが残念。監察医や検死官についての話ではもっと面白い本が沢山あるので、なにもこれを選ぶことはないかなと思ってしまった。
関連記事
ノンフィクション | 2007/04/14(土) 12:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

303冊目 動物に愛はあるか 2
動物に愛はあるか 2

モーリス・バートン著 / 垂水 雄二訳

早川書房 (2006.7)

\777

評価:☆☆☆☆


 1冊目に引き続き、動物に愛はあるのかについて探る本。

 理論で語り続けるわけではなく、エピソードから動物が愛情を持つかどうかを判定しようとするわけだから、こちらも面白い話が沢山載っている。

 ミツオシエが、甘いものが市場で容易に手に入るようになった今ではミツバチの巣のありかを教えなくなったことなどからミツオシエにも文化らしきものがあると窺えたり、カラスが集会を開いていたり、興味深い話が沢山。

 やはり、動物にも繊細な心があるのは疑う余地がないというのが分かる。もちろん、愛犬を見ていると動物に感情がないなどというのが妄言であることは一目瞭然なのだけど。それでもやはり真実を探るには懐疑的であるべきで、バランスが難しい。

 著者は驚くほどの節制で、動物に感情があることを認めようとしながらも懐疑的な立場を貫こうとしているので好感が持てる。そのような立場だからこそ、多くのエピソードで持論を補強しようとし、それが本書を面白くしていると思えてならない。

 動物好きは、科学が動物をどのように考えているかを知る良いきっかけになると思う。
関連記事
その他科学 | 2007/04/13(金) 00:13 | Trackback:(0) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

302冊目 動物に愛はあるか 1
動物に愛はあるか 1

モーリス・バートン著 / 垂水 雄二訳

早川書房 (2006.6)

\777

評価:☆☆☆☆


 そこに愛はあるか。なんとも難しい質問である。同じ生物種であるはずの異性のことですら良く分からないというのに、動物のこととなるともっと分からないに決まっている。

 愛はあるかという質問の難しさは、何らかの機器によって愛を検出したり、自明な命題から演繹したりすることができないことによって助長される。言葉をしゃべらない(しゃべっていたとしても人間には理解できないので同じこと)動物に愛となるともう絶望的に難しい。

 しかも、西洋のキリスト文明に毒された人々は、どうも人間を特別扱いしたがる傾向が強く、感情があるのは人間だけだなどと極端なことを言い切ってしまったりするのが困ったもの。彼らにかかれば神の似姿たる人間以外の動物に愛などといった高等なものが宿るわけが無いなんてことになってしまうのである。

 動物好きにはまた別の言がある。ペットと暮らした経験がある人は、彼らがどれほど繊細な心を持って愛情豊かに振舞うかについて言いたいことが山ほどあるだろう。そしてそれを聞かされる側は辟易することであろう。そういう人にとっては、動物に愛情があるのは自明の理で、信じないのが馬鹿馬鹿しいということになってしまう。

 中間派はいないのか。そんな問いかけに応えるのが本書かもしれない。

 あくまで懐疑派として、感動的なエピソードだからといって一定の方向に流されること無く、動物に愛があるかどうかを探っている。死んだ仲間を悼むようにする様が観察される象や、盲目の仲間を先導したりえさを運んだりするネズミや犬、自分の子だけではなく、種の壁を越えて困った生き物を助けようとするかのように振舞う動物たちのエピソードだけでも意外でとても興味深い。

 驚くほど人間らしい(と言っては失礼かな?)行動を、少なからぬ動物たちが取ることには、エピソード的な面白さを超えて、一つの大きな謎に迫るヒントになる。その謎とは、感情はどの段階から芽生えたのかということ。

 両生類や魚類でも子育ては見られるが、彼らが本能で子育てをしているのかそれとも愛情の萌芽があるのかは分からない。しかし、人間に近い生物には確かにそれが見られるように思う。本書で紹介されている、死に掛けた仲間を水面まで押し上げて呼吸の手助けをするイルカ、死んで干からびかけた我が子をいつまでも大事そうに連れ歩く母猿、飼い主の命の危機を救ったとされる犬などなど。

 そこに愛情があるのか、という問いは、なぜ愛情などというものが発展してきたのかという問いにもつながる。人間の、根源的なものだと思えば更に興味は深まる。そうした意味で、懐疑的な姿勢は正しいと思うし、動物を愛しながらも冷静な視点を失わない本書は価値あるものだと思う。
関連記事
その他科学 | 2007/04/12(木) 00:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

301冊目 訴えてやる!大賞
訴えてやる!大賞

ランディ・カッシンガム著 / 鬼沢 忍訳

早川書房 (2006.7)

\819

評価:☆☆☆☆


 たとえば、毎週毎週80個もハンバーガーを食べて太った人がマクドナルドを訴えた、となると、なんだこの莫迦は、と思うのが普通だろう。マクドナルドを好きではなくてもついつい既知外がいると大変ですねといいたくなってしまう。

 もちろん、日本だったらそんな既知外は門前払いされて終わりだろうが、まじめに訴訟になってしまうアレな国が実在する。もちろん、我らがアメリカである。

 雪道をシートベルトせずに100キロオーバーで走った挙句に事故死した息子を持つ母親が自動車メーカーを訴えた、というような類の馬鹿馬鹿しい実話が沢山載っている。恐ろしいのは本書で取り上げられているのが全て実話である、ということだ。

 とにかく、読んでいるうちに笑いから怒りへ感情が移っていくのが分かる。こんな既知外と、既知外に便乗してカネをふんだくることばかり考える莫迦な弁護士が溢れかえってしまえば社会が住みにくくなるのは間違いないだろう。

 いまや超被害者意識の塊みたいな人々が余りにも多すぎ、そして彼らの存在が社会を悪い方向に動かしてしまっている、と著者は指摘する。その指摘の一環として莫迦な裁判と裁判に群がってカネをふんだくろうとする困った人々の姿を赤裸々に描いている。彼らの存在が、ただ困った人が居るというだけにとどまらず、(まともな)訴訟の遅延など社会的な害悪であることを示した功績は大きいだろう。

 もっとも、そんな社会的なことなんか考えず、ただひたすら遠い世界の莫迦な出来事として嗤って済ませてしまうのも良いかもしれないのだが。もっとも、あんな莫迦な制度を支える陪審員制を導入しようという既知外じみた国もあるから、嗤っているばかりではすまないかもしれない。
関連記事
ノンフィクション | 2007/04/11(水) 00:57 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

ようやく3割
 1000冊の書評を目標に細々と更新をしてきて、ようやく3割にあたる300冊に到達。300冊目は記念すべき名著『人類が知っていること全ての短い歴史』。ひょっとしたら、今後の700冊でもこれを越える本は出ないかもしれない。

 さて、今日は嫁のヒトと一緒に古本屋にお買い物。安売りの機会を逃してなるものかと、買いも買ったり35冊(くらい)。ついでにbk1でポイントを使ってお買い物(このブログ経由で買ってくださっている方、ありがとうございます)。併せて約40冊。買い物だけで疲れたのだけど、それでも今のペースだと2ヶ月分くらいなので驚くほど多いわけじゃない、というところか。

 これから当分の間楽しみが続きます。うれしいねぇ。この調子で1000冊到達するのに、どれくらいかかることやら。先は長いけど、この先も素敵な本に沢山巡り会えるかと思うと楽しみだ。
関連記事
雑記 | 2007/04/09(月) 22:38 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

300冊目 人類が知っていることすべての短い歴史
人類が知っていることすべての短い歴史

ビル・ブライソン著 / 楡井 浩一訳

日本放送出版協会 (2006.3)

\3,150

評価:☆☆☆☆☆


 この本は凄い。私にとって、ここ数年で読んだ本の中でも群を抜いて、破格に面白かった。とにかくこの辺鄙なところをご覧くださっている方々に言いたいことは、私のつまらない書評なんて読んでいる暇があったらこの本を手に入れて読んでみてください、ということ。それくらい面白いし自信をもって他人に勧められる。

 本書は科学全般の通史をベストセラー作家が書いている。科学の営みの外側から書かれていることと、軽妙な語り口を妙味とする著者の組み合わせが空前の名著を生んだと言って過言ではない。

 科学の営みの外側から書かれている、ということが持つ利点として、特定の分野に偏らずにめぼしい話題を網羅することに役立っていることが挙げられる。

 宇宙論、惑星科学、超新星、ニュートン力学から量子力学や相対性理論への流れ、恐竜発見の歴史、、免疫、周期表の発見、軌道を交差する危険な小惑星、大陸移動説、高熱や高圧の地に潜む生物達、ミトコンドリア、コケ、ダーウィンの進化論、DNA発見の歴史に多地域進化説や人類史などなどを取り上げている、といえばその範囲の広さが伝わるだろう。

 これだけ見て敬遠してしまう人が居そうなものだが、そこに著者が科学者ではないベストセラー作家である強みが生きてくる。門外漢の自分が興味を持ったことを調べに調べたことを軽妙に書いているのだ。この軽妙に、というのがポイントで、科学書なのに読んでいて笑いがこみ上げてくるのである。

 たとえば、ニュートンについて書こうとしたらどのように書き出すだろうか。微分の発明者で(ライプニッツも同時期に、ただし互いの影響を受けることなく考案していたが)科学史に残るプリンピキアを書き上げた偉大な天才、彼の前後で物事の見方は大きく変わるほどの多くの偉業を成し遂げた不世出の人物、なんてところだろうか。しかし、本書ではこうだ。

 ニュートンは、文句のつけようのない変人だった。計り知れない才能の持ち主ではあったものの、(中略)へんてこな事をしでかす名人だった。
P.75


 おもわずずっこけてしまう書き出しだが、これで読者の心を掴むとそこからやはり同じような調子で、しかし調べたことは全て書くという勢いで筆を運んでいる。ニュートンが錬金術や怪しげな宗教にはまっていたことを交えながら、偉大な研究の内容は具体的にどうだったのか、何が説明できてどんな成果があったのかがコンパクトにまとめられているのだ。

 それはニュートンだけではなく、他の項目についても同じ。これほどまでに広い話題を丁寧かつ簡単に、しかも笑いながら読めてしまうように書かれているのは本当に感服すべきことだろう。本書が中学生に与えられていたら科学はつまらないとか難しいという印象を持たせることはないだろう。数式や化学式は出てこないため中学生でも十分に理解できる内容でだし、軽い気持ちで読んで楽しめてためになる。手放しに絶賛すべき一冊だ。

 唯一苦言を呈するとすれば、本文だけで635ページという分厚さでは持ち運びには困難なので2~3巻組みにして欲しかった、ということだろうか。もっとも、読み始めてしまえばその厚さが気にならなくなる名著なのだけれども。



 なお、本書と関連があって過去私が紹介してきた本には以下のようなものがある(もちろん、本書で取り上げている文献は遥かに多い)。下記の本を面白いと思った方は手にとって損をすることは絶対ないと保証します。
人類進化の700万年
イヴの七人の娘たち
アダムの呪い
地中生命の驚異
恐竜はなぜ絶滅したか
利己的な遺伝子
生命最初の30億年
ぼくとガモフと遺伝情報
エレガントな宇宙
二重らせん
大絶滅
DNA
やわらかな遺伝子
三葉虫の謎
スノーボール・アース
関連記事
その他科学 | 2007/04/09(月) 22:31 | Trackback:(1) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

299冊目 複雑な世界、単純な法則
複雑な世界、単純な法則

マーク・ブキャナン著 / 阪本 芳久訳

草思社 (2005.3)

\2,310

評価:☆☆☆☆


  世界には60億人を超える人がいるというのに、たった6人を介せば全員が知り合いになるという話を聞いたことがないだろうか。実に不思議なことに感じられる。なにせ、市井の一ダメ人間である私が、世界最大のテロリスト(もちろん、某合衆国の大統領のことを指している)ともアラブの石油王ともオリンピック選手とも知人の知人の知人の知人の知人の知人の知人であるというのだ。

 なぜこんな不思議な事が成り立つのか。それを解き明かしたのがネットワークの科学である。

 これが人間にしか当てはまらないのだとしたら、それは科学ではなくてただの偶然かもしれない。正直に言うと、私も読み始めた段階ではかなり懐疑的であった。

 ところが、このネットワークの科学の観点からは人間関係だけではなく予想すらしなかった多くのことが共通項を持ってくるという。

 一例として、川の流路と流量の関係、インターネットのリンク構、感染症の広まり方、富の集中の仕方、何万匹もの蛍が同じ周期で明滅を繰り返すこと、脳が上手く働く理由などなどが挙げられている。この項目だけを見ても驚かれるのではなかろうか。

 全てを説明できる理論は、実は何も説明していないこともありうる。たとえば、神が世界を作ったという理論が当てはまる。なにせ、どんなことを持ち出しても「それが神が世界を作った証拠である」と言えばいい。それで説明したとしても他人を納得させられるかは不明だが。

 だが、ネットワークの科学は、この類のイカサマとは一線を画しているように感じられる。というのは、6人を介して世界中のほとんど全ての人々が知り合いのネットワークでつながるという事実は、純粋なシミュレートでも再現される。川の流路と流量は計測が可能だし、脳のネットワークもカウントできる。

 つながりを持つものが、カウントして見るとこれ程までに一致した構造を持つということは、そこには何か有利な点があると思って良い。

 インターネットのリンク構造などは、私も含めサイト持ちはてんで勝手に、自分の思惑だけで決めているはずだ。勿論、私以外のあらゆるサイト持ちが世界を牛耳る闇の政府だか宇宙人だかフリーメーソンだかユダヤの陰謀だかに強制されているという可能性もゼロではないだろうが、どんなに高くても1亥分の1も無いだろうから無視して差し支えない。各人が勝手に振舞いながら、それでも全体としてみれば一つのパターンに落ち着く、というのは実に面白い。

 タイトルの『複雑な世界、単純な法則』は、実に上手く内容を表しているといえる。世界の事象は、外から見たら実に複雑に組み合わされているように見えながら、外皮を剥いで見ると単純な法則によって成り立っていることが明示されているからだ。

 そういう意味で、まさに本書は科学の本である。大胆に細部を切り落とし、多くのことに共通する本質部分だけを追求している姿は、科学のあり方そのものだ。で、きっとそれだけだったら面白くない本になっていたのだろうけれども、決してそうはなっていない。ひとえに取り上げる例の巧妙さによると思う。なにせ、就職のコネはどんな人から与えられるものか、なんて科学のネタには見えないのだから。

 そう。例が面白いのが特長なのである。突然梅毒患者が増えたのはなぜかとか、アメリカで公式的に差別は撤廃されてもやはり黒人と白人が別れて暮らしている真の理由、クジラが減ったら魚は増えるのか、などなどと、読者が飽きないような話題が次から次へとやってくる。

 本書の凄みは、これらの話が“ただの面白い話”として取り上げられているわけではなく、全然関係が無いように見える事象が共通点を持っているという枕で述べていることだろう。しかも、枕の方がずっとボリュームがあるというオマケ付き。そんなわけで、ネットワーク科学の醍醐味を教えてくれる良書だと思う。
関連記事
数学 | 2007/04/07(土) 23:46 | Trackback:(1) | Comments:(4)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

夢と努力
 前にもちょっと書いたことがある友人が、遂に夢を叶えたとの嬉しい報せを貰った。

 彼とは大学で知り合った。私より一歳年長だけど、たぶん精神的にはもっとずっと上。おまけに大変な読書家で、博識で、豊かな教養をも持っていた。私だったら天狗になっているだろうに、彼は常に穏やかな語り口で、自分の意見をしっかり持ちながら相手に気遣う余裕のある人だった。

 親しく話をするようになったのは薬害エイズについてのことがきっかけだった。彼が医学の道をかつて志していたことなどを話していくうちに、本当にいろいろなことを話し合うようになった。政治や社会、医学のありかたなど、本当に広い範囲のことを。

 私は就職、彼は大学院に進むことになったが、そのときに驚くべき話を打ち明けてくれた。大学の友人の中では私が最初だったはずだ。夢が忘れられない。医者になりたいので、挑戦したい。彼が医者になれば、きっと多くの患者から慕われるようになるだろうと思ったから、私は応援すると言った。

 それから彼がどれほど努力をしたか、私は知らない。それでも、医学科に合格したことはすぐに教えてくれて、そして彼は遠くに去った。その後はごくたまに顔を合わせることができただけ。それでも彼は律儀に、結果が出たらすぐ国家試験を通ったことを知らせてくれた。

 私には、何かのためにそれほどまで努力した記憶がない。のらりくらりと生きてきてしまったダメ人間。一見真面目そうだ、という外見と口八丁だけで渡ってきてしまった。社会的な欲求より知的好奇心を優先させてきたから、生きていく上で何の役にも立たない、どうでも良い知識だけは溜め込んだが。

 夢を追いかけ叶えるために努力を惜しまなかった友人に、心から賛辞を。会える日が、とても楽しみである。
関連記事
雑記 | 2007/04/07(土) 00:52 | Trackback:(0) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

298冊目 氷の女王が死んだ
氷の女王が死んだ

コリン・ホルト・ソーヤー著 / 中村 有希訳

東京創元社 (2002.4)

\945

評価:☆☆☆


 『老人たちの生活と推理』に続く、カムデンシリーズの二作目。再び老人ホームで殺人が起こってしまった。今度の犠牲者は、驚くことに毒舌で知られる主人公のアンジェラ・ベンボウよりも苛烈な性格で、カムデン一番の嫌われ者。

 捜査に当たるのは、これまた再登場のマーティネス警部補なのだが、彼が真っ先にしたのはアンジェラとその親友のキャレドニアを捜査から締め出すこと。前作でのゴタゴタに懲りているからには当然だろう。そしてこれまた当然なことに、アンジェラが大人しくしているわけがないのだった。

 もはやテレビと食事だけが楽しみになっている老人達が相変わらず大活躍している。一番活躍しているのはきっと口で、これがまあよくしゃべること。女性らしく(失礼)話がどんどん脱線していって関係ない話が膨らんでいったり、美味しい食事に舌鼓を打ったりしながらその合間に事件にくちばしを突っ込む二人。

 前作同様、ちっとも探偵らしくない探偵で、名探偵とは言い難いような気がするのではあるが、それでも知恵と体力で事件を解決させてしまうのが面白い。毒舌老人大活躍の二作目、やっぱりアンジェラと友達にはなりたくないけれども、今後の活躍もまた気になるのであった。
関連記事
推理小説 | 2007/04/06(金) 21:12 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

297冊目 リサイクルアンダーワールド
リサイクルアンダーワールド

石渡 正佳著

WAVE出版 (2004.3)

\1,575

評価:☆☆☆

 リサイクルといえば聞こえが良いし、なにやら環境保護にも役立っているような気もするし、良いこと尽くめのような錯覚に陥る。それが幻想に過ぎないことは『リサイクル幻想』で指摘されていて、非常にインパクトがあった。

 本書は『リサイクル幻想』以降のリサイクル環境について現場の人が詳細にまとめたものである。

 本書を読んでも、やはりリサイクルには実際の利益よりも幻想の方が遥かに大きいことが実感される。そんな体たらくになってしまっているのは、原理的にリサイクルが高コストだということと日本の人件費が高すぎてペイするのが難しいということに加え、政府のやる気がないことも大きな意味を持っていることが分かる。

 一例を挙げれば、中古品の利用は環境負荷という点ではもっとも少ないのだが、GDPには結びつかないからという理由で無視されている。これでは何のためのリサイクルなのか分からない。もっと根本理念を見据え、目的を達成するための方法を論じなければ意味はない。

 それに加え、中国の経済成長が日本のリサイクルにとって極めて大きな意味を持っていることにも驚かされる。そのからくりは本書を参考にしてもらうことにして、とにかく耳に心地よいリサイクルという言葉と、それに莫迦正直に従う我々の善意が、実は何の役にも立っていないことは記憶しておいて損はないだろう。

 リサイクルの現状についてとても分かりやすくまとめられているし、我々が怒りを覚えなければならないことについても恐れることなく踏み込んでいる。このような本が続くことを願う。

 なお、我々が怒るべきなのは、自動車のリサイクル費押し付けである。鉄くずの費用が下がったため、リサイクルコストを我々大衆に押し付けておきながら、今では鉄くずは活況を呈し、大きな利益を生んでいるという。我々はただ無駄にリサイクル費用を払い、そのカネはどこかに消える、というわけだ。たぶん、天下りした役人の懐に。これはもはや、リサイクルを使った恫喝だ。改められなければならないだろう。
関連記事
ノンフィクション | 2007/04/04(水) 23:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

296冊目 嫉妬の世界史
嫉妬の世界史

山内 昌之著

新潮社 (2004.11)

\714

評価:☆☆☆


 嫉妬というと、なんとなく女性が男性に持つ感情のような気がしてしまうのだが、本書が取り上げているのは男同士の嫉妬。著者がイスラム史と国際関係史の専門家であるゆえ、取り上げている人物の幅広さは括目に値する。

 男同士の嫉妬となれば、その対象は才能になる。才能ある人が才能ある人に嫉妬する場合もあれば、才能のない人が才能のある人に嫉妬する場合もある。嫉妬されないのが一番ではあろうが、なかなかそうはいかない。

 嫉妬し、された人々として取り上げられているのは森鴎外やロンメル、トハチェフスキー、石原莞爾といった有名人達。彼らの感情が、あるときには国政すら左右し、あるときにはみっともない諍いだけが後世に記憶されるようになった。

 個人的に面白かったのは、スターリンが名門貴族の末裔で天才的な軍事戦略家トハチェフスキーに抱いた嫉妬。私も無能な人間の一員として、煌くばかりの才能が身近に居たら冷静で居られるか自信がない。

 もちろん、嫉妬はされる側の問題でもある場合が少なくない。尊大すぎて嫌われたカエサルの逸話も興味深かった。嫉妬する側に問題があるのはもちろんだけれども、ただ小人だからと片付けるわけには行かないと実感した。

 有名な人物からそうは知られていない人々まで、男達の織り成した歴史の一ページを楽しむにはうってつけだと思う。
関連記事
その他歴史 | 2007/04/03(火) 23:25 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

295冊目 旅行者の朝食

評価:☆☆☆☆


 ああ、読むんじゃなかった。なぜかって?出てくるのがどれもこれもおいしそうだから。

 やはり食道楽の人が書く食べ物の話には、書物の魅力だけではなくて食べ物の魅力が詰め込まれている。それも、これでもかってくらい。

 しかも書いているのがエッセイの名手の米原さんであるからには文章の面白さに加えて知る楽しみまで味わえる。ウォッカを巡るロシアとポーランドの争いやらソ連の大物政治家の政治姿勢と食の好みやらキャビアにまつわる話やら家を建てるイメージを固めに神戸に行って美食ツアーになってしまった話やら、どれもこれも面白い。エッセイ好きなら手に取るべし。
関連記事
エッセイ | 2007/04/03(火) 00:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

294冊目 硫黄島の星条旗
硫黄島の星条旗

ジェイムズ・ブラッドリー著 / ロン・パワーズ著 / 島田 三蔵訳

文芸春秋 (2002.2)

\1,000

評価:☆☆☆☆☆


 ピューリッツァー賞に輝いた数々の写真の中でもとりわけ有名な3枚と言われれば、かの戦場カメラマンとして名高いキャパの「倒れる兵士」、スーダンで撮られカメラマンに栄光と破滅をもたらした「ハゲタカと少女」、そして本書の表紙にも取り上げられている硫黄島で掲げられる星条旗の写真であろう。

 硫黄島はつい最近映画にもなったこともあって注目を浴びている。面積だけからいえば取るに足らないような小さな島がおよそ60年前には最も凄惨な地上戦が行われた場所だった。

 アメリカからすれば、日本本土を攻撃する際にサイパンを発した攻撃機がその上空を通るため喉もとに刺さった骨のような島であり、日本からすればアメリカの攻撃から国土を守るために欠くことのできない島だった。硫黄島の攻防の帰趨が太平洋戦争の最終局面を左右するようになっていたのだ。

 この重要な島の防衛を任されたのが栗林中将。アメリカの底力を知悉し、絶対にアメリカとだけは闘うべきではないと思い続けた男が、国と自らの先に絶望を見ながらも一筋の光明を見出すために全力をもってアメリカに立ち向かった。硫黄島の守備隊は中将によって万歳突撃を禁じられた。多くの島嶼で日本軍が採ったこの作戦は戦術的に全く無意味で何の成果も上げなかったからだ。その代わりに、彼は全島を要塞化し、堅固な防御陣を作り上げた。そして波打ち際での撃退を期せず、上陸したアメリカ兵を効果的に攻撃できる態勢を整えていた。

 この史上稀に見るほどの軍事拠点になんら遮るものも無いままに乗り込むことになったのがアメリカ海兵隊である。豊富な物量に物を言わせた過酷な砲撃の後、海兵隊は硫黄島に上陸した。それから36日間、相互にとってまさに地獄の戦いが続くことになる。

 硫黄島攻略戦の比較的初期の段階で起こった摺鉢山占領の直後に、6人の男達が山頂で星条旗を掲げた。いや、正確にいえば、最初に掲げられた旗を保管するために代理の旗を立てた。その行為は日本軍に全く阻まれることも無く、特別な仕事ではなかったようだ。ところが、このシーンがあれほどまでに印象的にカメラに写されたことによって事態は変わる。星条旗を掲げた6人の男達は一夜で英雄となったのだ。それだけの力があった、そんな写真だった。

 英雄となった6人とは、マイク・ストランク、ハーロン・ブロック、フランクリン・サウスリー、レイニー・ギャグノン、アイラ・ヘイズ、そして著者の父親に当たるジョン・ブラッドリーである。このうち3名が硫黄島で死に、3人は生き残った。生き残ったものの心に深い傷を残したままで。

 著者は、父が死んだ後になって、父ジョン・ブラッドリーが硫黄島での英雄的な行為によって叙勲されていたことを知る。あの写真に載ることで英雄となった父がなぜ硫黄島でのことを家族に話すことが無かったのか、その謎を追い求めて著者は硫黄島の戦いを再現する旅に出たのだった。

 海兵隊たちがどのように戦争に立ち向かったのかは、戦争を考える上で決定的に重要だろう。当然のことだが、しばしば我々は同胞である日本人に感情移入をし、死に赴かざるを得なかった日本の若者の姿を思い浮かべるし、保守派は太平洋戦争はアメリカに追い詰められた結果で日本は悪くないと主張し続けている(ことが1942年末の時点に至ってからの話に限っていえば、それは正しいと私も思う。その前の中国での先行きを考えない無謀な戦争と選りにも選ってナチスと結んでしまったことなど先行する歴史に思いを致さないのであれば尚更)。

 しかし、敵対したアメリカ兵たちにも彼らなりの苦しみがあり、苦痛があった。それは忘れてはならない。レイニー・ギャグノンの台詞である、「おれはなぜ、こんなことをしなければならなかったのか?銃のむこうの誰かの目玉を見て、その男を殺さなければならない。そこには栄光なんかない」。きっとここに戦場の全てがある。

 それでも若者達は自分の命をかけて闘わざるを得なかった。日本軍は天皇のため。では海兵隊は何のために?国のためじゃない。彼らはもっと具体的なもののために闘った。それは、一緒に闘う仲間のため、だった。彼らが重視したのは戦うことでも死ぬことでもなく、仲間を助けることだった。しばしば太平洋戦争は物量で負けたとの言葉を聞くが、なんということはない、日本は精神でも負けていたのだ。

 日本軍は白旗を掲げ、降伏するふりをしながらアメリカ兵が近づいた途端に攻撃を仕掛けたり、自爆に及んだりした。国際法が禁じる所業だ。この蛮行が、相手側からの蛮行を呼び込んだのは否定できない。そして残念なことに硫黄島でもその状態は変わらなかった。だから、より一層、硫黄島は悲惨な戦いになったともいえる。

 アメリカ軍は膨大な死傷者を出しながらも最終的には硫黄島を占領する。日本軍よりも多くの死傷者を出しながら。そこに数多いた英雄達の姿には、国境を越えて、敵味方を超えて、心をゆさぶる何かがあると思われてならなかった。友のために自らの命をも惜しまずに戦う、それをもっと他の事に使えれば、世界はどれほど良くなっていただろう。だが、悲しむべきことにそうはならなかったし、これからもそうはならないのだろう。

 だからこそ、忘れるべきではない。敵も味方も関係なくて、そこにはただ人間が居るんだと言うこと。一将項成りて万骨枯るは永遠の真実だ。皮肉なことに、太平洋戦争を通じてアメリカ中で最も称揚された6人、星条旗とともに写真に収められた6人の姿から教えられたように思う。戦記やヒューマンドラマといったジャンルを超えた名作だと思う。硫黄島の戦略的位置づけなどについても詳しく書かれているので、太平洋戦争や硫黄島に興味がある方は読んで得るもの多いだろう。




 ただ、南京事件については中共の主張を丸呑みしているのはいただけないが。
関連記事
太平洋戦争・二次大戦・現代史 | 2007/04/01(日) 23:55 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。