評価:☆☆☆☆
探偵と聞けばどんな人を想像するだろうか。ヒゲが自慢の嫌味な男?コカインとタバコを愛する偏屈男?はたまた版権の都合上じいちゃんの名前を呼べない少年?ところが本書で活躍するのは老人たち。それなら安楽椅子探偵なのか、と思う向きもあるかもしれない。あにはからんや、そうではない。いい年をしたおばあちゃんが大活躍する話である。
ことの起こりは、老人ホームに住む一人の老婆の死体が発見されたことに遡る。被害者が嫌われ者だというのであれば事件にも納得行くかもしれないが、この人は図書館の司書あがりで本と首っ引き、人畜無害な独り者だった。浜辺で発見された遺体は何箇所も刺されていた。
どうやら犯人も同じ老人ホーム内部にいるらしいと聞いて事件に絡んでしまったのが主人公たちグループ。本書の主人公の方が犠牲者として相応しいと誰もが思うような毒舌家、超大柄で豪快な女傑(大金持ち)など、太った老人たちが警察の制止もなんのその、証拠を漁りあたりを駆けずり回る。そのスピードは高が知れていても、やることは半端じゃない。
我々が老人ホームの入居者と聞いて思い浮かべるような、大人しい老人たちの姿は余り見られない。なまじの若者よりも活動的で逞しい姿には呆れてしまう。多くの推理小説とは違って警察は警察できちんと仕事をしている。彼女らの活躍が無くても早晩犯人は逮捕されたはずというのはなかなか無かった趣向に思うが、やはり老人ホームが舞台だと飛んだり跳ねたりの活躍は期待できないから無理のない設定だと思う。
毒舌で嫌われ者な主人公は犯人を割り出すことができるのだろうか。
老人ホームという意外な設定でありながら地に足の着いた人物設定、老人のやることに対する深い洞察が本書を独特のスタイルを持つ小説にしている。主人公には間違っても近づきたいとは思わないが、そう思わせようとする著者の狙いが当たっているのだろう。ひょっとしたら、新たな推理小説の一ジャンルになるかもしれない。映像化されたらさぞ映えないだろうが。
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