小林 登志子著
中央公論新社 (2005.10)
\987
評価:☆☆☆☆
人類最古の文明、シュメ(ー)ルについての入門書。シュメルについては世界史で名前を聞いたことがある、という程度の人が大半だろうから、このような本はかの地の理解を深めるのに役立つのではなかろうか。
世界最古の文明というだけのことはあり、世界最古の法典(今ではハンムラビ法典よりも古いウルナンム法典というのが知られているそうな)、世界最古の物語であるギルガメッシュ叙事詩、世界最古の女性作家、世界最古の判子文明など最古に事欠かない。
また、地域の先進文明だったこともあり、シュメルの影響はユダヤ教にも見られる。その一つが洪水伝説であり、バベルの塔の伝説である。もともとイスラエルには大洪水を起こすような大河が存在しないため、ノア伝説がシュメール起源だということや、バベルの塔のモデルがバビロンにあったことは知っていた。ハンムラビ法典は四大文明展で見て感激したしギルガメッシュ叙事詩はもう随分前に読んだ。
それでも知らなかったことが沢山あって、それが嬉しい。小麦の文明でビールが発達したことは知っていても、ビールの飲まれ方は知らなかった。円筒印章は知っていたし見たこともあったが何が刻まれ、どのような意味を持っていたのかは知らなかった。
断片的にしか知らない文明の人々がどのように過ごしていたのかを垣間見ることができるのと、バランスよく多くの事柄に触れているのが入門書として適しているように思う。王族から庶民に至る多くの人々の生活、辿った歴史には興味を引かれることが多い。
大英博物館に訪れたときに見た、ライオン退治の壁画がエジプトまで版図に組み入れたアッシュル・バニパル王のものだった、ということはもっと早く知っておきたかった。そうすれば実物を見たときに更に感慨深かっただろうに。知っていることが多いと、博物館などでは楽しくて仕方がないのだろうと、あの時知識不足を悔やんだのと同じ感慨を抱くのだった。
そんなわけで、歴史を好きな方は楽しく読めるだろう。また、中東の現在に興味がある方も読んでみたら面白いかもしれない。きっと、遥か昔の文明のことであっても知れば今の中東を理解する助けになるだろうから。
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