カレンダー
02 | 2007/03 | 04
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール

Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


宣伝目的以外のあらゆるコメント、TBを歓迎します。

↓ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してください。


にほんブログ村 本ブログへ


kids goo弾かれサイトですので閲覧はご注意を。頭が悪いのが伝染する恐れがあります。
notforkids.jpg

FC2カウンター
最近の記事
Tree-Arcive
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
巡回先

にほんブログ村 本ブログへ



うちの子も元捨て犬です。今はすっかり我が家の一員。甘えるのは下手だけどとっても可愛い子です。

Skywriterさんの読書メーター

ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 | --/--/--(--) --:-- | |

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

293冊目 戦争で読む「ローマ帝国史」
戦争で読む「ローマ帝国史」

柘植 久慶著

PHP研究所 (2005.7)

\580

評価:☆☆


 戦争大好き柘植久慶の本。古今東西の戦争についてやたら詳しいのだけれども、その文章力の低さも特筆されて良いかもしれない。

 取り上げているのはローマの成立から滅亡に至るまでの数々の戦争である。ローマほどの版図を誇った帝国であるからには南はアフリカ、北はイギリス、そして東は中東と戦いの連続だった。

 中国など他の多くの地域とは違い、帝位を継ぐのには血縁ではなく民衆や軍の支持が重要だった。だから歴代の皇帝達は自ら軍の先頭に立って闘ったし、敗北や弱腰はしばしば致命的な結果をもたらした。なにしろ、市民や軍の支持を失うことは暗殺という結果に直結したのだ。その結果、ローマ皇帝の多くは寿命を全うせず、戦場で死ぬか殺害されるかだった。

 それでも英雄達が陸続と現れた。その最大の者は間違いなく天才的軍略家であり、政治家であり、どうやら人妻キラーでもあったらしいユリウス・カエサルだろう。そのカエサルのガリア遠征やカルタゴとの血で血を洗う抗争、史上唯一の正しい戦争とも言われるスパルタカスの反乱など、有名な戦いからファンにしか知られていないような戦いに英雄達がどのように挑んだのか、そしてどのように死んでいったかが余さず記されている。ローマの大きな戦争の流れについては網羅されていると言って良いだろう。

 ただ、軍事だけで帝国を語るのは無理がある。本書を読んでもローマ帝国の姿は全く分からないし、戦争の背後にあって軍を支えた文化や文明、技術もその姿を垣間見ることができない。数々の戦争のディテールだけを知りたい人には向いているかもしれない。

 ポエニ戦争に興味が沸いた私としては会社の昼休みにちまちまと読む分には十分だった。
関連記事
スポンサーサイト
その他歴史 | 2007/03/31(土) 23:17 | Trackback:(0) | Comments:(4)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

撤収の日
 いろいろとごねたり体調を崩したりということもあって、本日で単身赴任は終了。いつ再開かは分からないけれども、まずは帰ろう。

 そんなわけでちょっと早め、17:00に会社をあがり、部屋掃除。レ×パレスのこの狭くて壁が薄いところともお別れだ。

 といっても、この部屋でやったことといえば本を読んで風呂に入って食事して寝ただけで他に何もないから、感慨も余りない。物もないので片付けるのも早い早い。

 つくづくここに生活はなかったんだと思う。

 これで暫くは毎日子供の顔を見られる日々が送れるはず。勇躍、おうちに帰るとしよう。勇躍の使い方が間違っている感じなのは仕様です。
関連記事
未分類 | 2007/03/30(金) 18:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

292冊目 ドイツ人のバカ笑い
ドイツ人のバカ笑い

D.トーマ編 / M.レンツ編 / C.ハウランド編 / 西川 賢一訳

集英社 (2004.6)

\735

評価:☆☆☆


 ドイツ人には笑いは似合わない。ええ、私の偏見です。どうしてもドイツという言葉からは謹厳実直、真面目、堅物という大変にステロタイプな印象が浮かんでしまうわけです。あとはせいぜいビールとソーセージ。うまそう。

 そんな意外性もあって読んでみたところ、ちょっとした裏切りにあってしまった。というのは、他の国のジョークも混じっているところ。タイトルから受けるイメージを悪用しているような気になる。

 気を取り直してみてみると、既にどこかで読んだことがあるようなものが目立つ。どこか、というよりも、ソ連のブラックジョークとそっくりなものが収録されている。流石は元衛星国。ジョークまでモスクワ流。エスニックジョークはきっとあちらの人々には分かるのだろうけれども、日本では分かりにくい難点も感じられた。

 それでも、ドイツ人もやはり権力者を腐し、暗い世相でも笑い飛ばし、そして間抜けも笑っているという当たり前のことに気付かせてくれる。

 なお、本書の中で私が気に入ったのはこんなの。

 「ソ連の宇宙飛行士って、ほんとバカだな。地球をぐるぐる何周もしたのに、よりによってまたソ連に着陸するとは!」


 行政官庁のトップに質問が寄せられた。「あなたのところでは何人くらいの職員が働いていますか?」
 答えていわく、「働いているのは半分そこそこですよ!」


 ジョークはどうしてもパターン化し、「どこかで聞いた話」にならざるを得ないのかもしれない。そんなわけで、数多のジョークを読んできた方にはちょっと物足りないだろうけど、それでもジョークが好きなら楽しめるだろう。
関連記事
未分類 | 2007/03/28(水) 06:57 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

291冊目 UFOとポストモダン
UFOとポストモダン

木原 善彦著

平凡社 (2006.2)

\756

評価:☆☆


 UFOとポストモダンという組み合わせが意外で読んでみたのだが、はっきり言って面白くない。UFOだとか宇宙人というのであれば107冊目で紹介した『人類はなぜUFOと遭遇するのか』および285冊目で紹介した『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』の方が遥かに面白い。

 なぜだろう。それはやはりポストモダンなのが失敗だろう。身も蓋もない結論だが仕方がない。

 そもそも、哲学と言うのは信仰と一緒で、なにやらありがたいご託宣を盲信するか否定するかどちらかしかない。だからプラトンはソクラテスを否定し、アリストテレスはプラトンを否定した。哲学の世界ではそれしか名を残す方法はない。ピタゴラス学派が怪しげな宗教結社そのものだったという研究もなにやら示唆的であろう。

 近代になって、難しいことはありがたいことというこれまた怪しげな教義が哲学に合流することにより、頭を掻き毟って作者の言わんとすることを解読しようとしなければとても意味がつかめないものに成り果てたのだが、その極地こそポストモダン。だが、仔細に分析してみるとポストモダンで言っていることは言うまでもないことかくだらないこと以外に分類できない。

 で、そのポストモダンを武器にUFO現象を読み解こうとするのだが、いきおいノストラダムスの予言解読に似た様相を呈することになる。ポストモダンのなんとかさんが論じている枠組みがこんなことに当てはまるんですよ!!な、なんだってーーー!!!そ、それは本当かキバヤシデリダ!!!というわけで、牽強付会につき合わされるのが嫌なら読む意味はない。

 腐しているが、まあ一通りのUFO事件は抑えてあるのは見所か。もっとも、否定はしているが論拠を詳しく示さないので単なる否定になってしまっているのが残念。それに、アポロの月着陸は無かったなどという陰謀論や聖書の暗号などかなりアレな陰謀論も一緒に論じているのは興味深い。論じ方はやっぱりポストモダンだけど。

 まとめ。UFOに興味があるなら他の本を読んだほうが良い。
関連記事
未分類 | 2007/03/26(月) 23:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

受診結果
 白血球が多すぎです、というわけで血液内科を受診するため会社を休む。いや~、体が悪いんじゃ仕方ないな~(はぁと)

 そんなわけで指定された時間に出向いたのだけど無視されること山の如し。結局2時間待ってようやく採血。採血くらいさっさとやってくれ。

 そこから待たされること風の如し。待合室から誰もいなくなってしまっているような気がするのは気のせいではないはずだ。さっき手品を披露していたおじいちゃんもそれを見て喜んでいたおばあちゃんも何やら今日から入院っぽい人もその付き添いの人も製薬会社のプロパーっぽい人も誰も彼もみないなくなってしまうこと『そして誰もいなくなった』の如し。

 ようやく診察の順番が訪れたのは病院について4時間近く経ってからだった。何のために予約システムはあるの?まあ読んでいた本が面白かったので許そう。

 神妙な顔をして診察結果を拝聴する。白血球数は前回の検査よりも落ち着いてきたようで、まだまだ正常値上限の1.5倍程度の高レベルではあるけど心配すべき状況ではないっぽい。ちっ!過労は厳禁と言って欲しかったのに(ダメ人間)

 仕事が忙しすぎてストレスが高いと伝えたところ、それが白血球レベルを高くしている可能性ありといわれる。あとはそういう体質か、と。体質説は過去の数字は特別高くなかったことから素人目にも怪しいのだけれども、もしかしたらそこまでストレスがかかっているのかもしれないわけで、これは真面目に次を考えるべきかも知れない。毎回毎回健康診断でひっかかるのも困るし。

 そんなわけで、周りの人にはどう吹聴するか考慮を要するようだ。なぜかって?残業から逃れるためです(ダメ人間)
関連記事
雑記 | 2007/03/23(金) 22:54 | Trackback:(0) | Comments:(5)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

290冊目 鉄理論=地球と生命の奇跡

評価:☆☆☆☆☆


 鉄といえばやはり最も身近な金属というイメージが沸くだろう。鉄を使った製品は身近に溢れているし、歴史の時間では鉄文明なんてものも出てくるし、学校の水道は鉄臭い。鉄が足りないと貧血になると言われるし、高層ビルは鉄筋を使っている。

 人類の文明を支えていると言っても過言ではない鉄。だが、それだけに留まらない影響を発揮してきたのかもしれないし、これからは更に大きな使い方をできるかもしれない、夢のような金属かもしれない、という。

 まず指摘されるのは、鉄が生命の誕生に深く寄与した可能性である。原始の地球の環境はどのようなもので、鉄がどのように利用されてきたのかは大変に興味深い。

 神とやらによる創造というなんら根拠の無い信仰を除いてしまえば、太陽からの紫外線でできた有機物が複雑な化学反応を起こして生命になったというのが最も知られている生命の誕生過程であるが、この仮説に対して有力な反論である、深海での熱水噴出孔こそ生命誕生の舞台であると本書は指摘する。古い生物ほど耐熱性が高いこと、紫外線は確かに化学反応を進めるが同時に破壊する効果も高いことが反証として挙げられている。

 そして、熱水噴出孔には鉄が非常に多い。この鉄は酸化還元反応を通して生物のエネルギーとなりうる。更にそこから先にも鉄が生命誕生のキーとなった可能性が指摘されるのだが、その意外な姿は是非本書で確かめて欲しい。

 だが、そんな興味深い話も本書で一番面白いものではない。タイトルでもある「鉄理論」こそが事実として面白く更に人類を救う可能性まで示唆する重要なトピックである。

 鉄理論というのは、あらゆる生物が鉄を必要としていることから導き出された説である。ところが、海洋では過去の生命活動によりほとんどの鉄は使われ、沈殿してしまっている。

 そこで、鉄を海洋に補充すればどのようになるだろうか。鉄サイクルを利用して海洋生物が増える。増える海洋生物のほとんどは植物プランクトンなのだから、二酸化炭素の吸収が増える。ひいては地球温暖化を防ぐ最も有力な手段になるのではないか―――

 まるで風が吹けば桶屋が儲かる、といった荒唐無稽の話のように聞こえるかもしれない。海にありふれた物質である鉄をばら撒いただけで地球温暖化防止になるとは俄かには信じがたいきもする。しかし、大掛かりな実験によってこれが夢物語ではないことがはっきりしているという。それだけでも十分に面白い話だ。実験規模ではなく、大規模に実施してみる価値は非常に高いだろう。

 この章だけでも極めて面白いのに加え、本書の後半では人類の歴史や文明が鉄にどれほど依存してきたかが説かれていて、このなじみの深い金属に対する愛着がわいてくる。鉄の持つ化学的、物理的にユニークな性質が無ければ文明がこんなに発達しなかったどころか、生物の誕生すらなかったかもしれないとはなんとも意外ではないか。

 ほんのわずか、最低限度で酸化還元反応の式が出てくるが、分からない人は読み飛ばして面白そうなところだけ読めばいいだろう。それだけで十分に楽しめること、請け合いである。
関連記事
その他科学 | 2007/03/22(木) 23:49 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

289冊目 照柿
照柿 上オンライン書店ビーケーワン:照柿 下

高村 薫〔著〕

講談社 (2006.8)

\680

評価:☆☆☆☆☆


 『マークスの山』に続く合田雄一郎を主人公にしたシリーズ第二弾。

 うだるような酷暑に、二人の男が一人の女に狂わされる。一人は合田雄一郎、もう一人は合田の幼馴染に当たる野田達夫。

 合田はホステス殺しを追う最中、電車の人身事故に遭遇する。不倫の行き着いた先にある修羅場の最終幕。死んだのは中国からの留学生で佐野敏明の愛人。現場から立ち去る敏明の妻、美保子に合田は一目ぼれする。

 一方、野田は結婚前の一時期、美保子と男女の仲にあった。二人とも結婚してからは縁が遠くなり、野田は熱処理工程の職長として自分のうちに潜む燃え立つような衝動を抑えながら仕事に励む。

 野田と合田の浅からぬ因縁が一人の女を挟んだとき、強烈な嫉妬と狂気を生み出し、三者共に狂った道を歩みだしてしまう。

 『マークスの山』でみられた禁欲的で沈着な合田は姿を消し、嫉妬に狂った只の雄としての姿をさらけ出しているところが興味深い。また、美保子は野田が抑えてきた衝動を解き放つ。その魔性がどこにあるのかはなかなか分からない。どうも著者の向ける創造力は男性キャラにもっぱら注がれているようで、野田の性格の複雑さや野田と合田の確執の掘り下げと比べるとどうも納得いかないものを感じる。

 著者の得意とする、不必要なまでにリアリティを追求した工場の描写にはならされる。熱処理工程という一般にはなじみがない仕事について、実に詳しく書いていて、その仕事の進め方やら内容やらを書く背後にどれほどの調査があったのか想像すらできないほど。この圧倒的な書き込みが、野田の人格に深みを与えているのは間違いない。技術だとか仕事について書いておきながら、それが自然と人間の描写に繋がっていくのだ。

 照柿という滅多に聞かない色をキーワードにして二人の男が狂気に落ちていく姿は滑稽でもあるがどこか他人事でもないような気にさせられる。二人の男に見られる仕事中毒や、家庭を持ちながらも浮気によって崩壊させてしまうみっともなさなど、どこにでもありそうな話が根底だからかもしれない。逆に、どこにでもありそうな話だからこそリアリティがあり、その設定のリアリティさと警察と熱処理という二つの仕事のリアリティさがまざりあって、極上の小説にさせているような気がする。

 合田に対するイメージを変え、『レディ・ジョーカー』に続く舞台を用意したと言う意味でも大変面白かった。このしっかりした世界に惹かれてしまったら、彼女の作品を次々手に取るしか道は残っていないのだろうな、と漠然と思う。
関連記事
推理小説 | 2007/03/20(火) 23:59 | Trackback:(1) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

288冊目 人類進化の700万年
人類進化の700万年

三井 誠著

講談社 (2005.9)

\798

評価:☆☆☆☆


 最新の人類学について非常によくまとまっており、新書に期待されている役割を見事に果たしている、というのが読んでいるうちにも感じられた。

 人類学なんて聞いたこともない単語だという人も、アウストラロピテクスだとかネアンデルタール人やら北京原人やらジャワ原人やらクロマニヨン人なんて言葉を遠い昔に聞いたことはあるはずだ。

 個人的には、なにやらサルだかチンパンジーだかと区別もつかないような類人猿が原人になって人類になったような感じの授業を受けた記憶がある。

 しかし、現生人類の由来はそんな単純化はできない、というのがどんどん明らかになっている。類人猿から直線的に人類に至ったわけではなく、その過程で多くの分岐が起こり、現生人類に繋がるルート以外の全ての種族が死に絶えてしまった、といのが化石情報や遺伝情報から分かってきたことだ。

 本書はそのあたりの発見を簡潔に、だが抜かりなく述べている。人類史を書き換えるような大発見の数々が網羅されているので本書だけでここ暫くの大発見を全て知ることができると言って過言ではない。

 また、年代の測定方法として放射線年代測定法や遺伝子変化のスピードを使う方法などについても触れられているので、新聞などで見かける数百万年前と言う推定値がどのように組み立てられているかが飲み込めると思われる。その意味で、歴史や生物進化に興味がある学生向けとして極めて意義が高いのではないだろうか。

 更に、遺伝情報からどのようなことが分かるのかといった話題も興味深いものが多い。なぜ冷たい牛乳を飲むとお腹を壊す人がいるのか。なぜ酒の強さに差があるのか。そんな生活に密着した話題も面白いのだが、個人的に最も面白いのは、視覚の話。

 犬や猫は色が分からないと聞いたことがないだろうか。実は、哺乳類のほとんどは色を認識できない。そしてその事実は哺乳類の先祖が夜行性だったことを意味している。ではいつごろ夜行性だったのかというと、恐竜が闊歩していた時代である。昼は恐竜の世界だったため、哺乳類は夜にひっそりと出歩いていたのだ。光のない世界の故、色を認識する機能は失われ易かった。一度失った色を認識する力を、人類の先祖が取り戻してくれたおかげで今我々は色のある世界を満喫できている。

 なぜこのような推定ができるのか、またどの遺伝子が変異したおかげなのかということが分かりやすく触れられているので、遺伝子の面白さも伝わってくる。

 その他にも人類がどのように進化してきたか(証拠がないので実証面では弱いが魅力的な説であるアクア説)、いつからペットを飼い始めたのか、日本に人類がたどり着いたのはいつごろか―――

 どの話題をとっても興味深い話題が並んでいる。もちろん、新書なので深い掘り下げはない。そういう点で個人的にはかなり物足りなかったとは思うのだが、それは求めるものが違っているのが原因であって本書の価値や魅力を損なうものではない。人類史の魅力を伝え、入門書として最適な本ではないかと思う。
関連記事
その他科学 | 2007/03/19(月) 23:50 | Trackback:(2) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

287冊目 新・トンデモ超常現象60の真相
新・トンデモ超常現象60の真相
皆神 竜太郎著 / 志水 一夫著 / 加門 正一著

楽工社 (2007.2)


評価:☆☆☆☆


 世の中には不思議が溢れている。そこを通った船や飛行機が謎の消失を遂げるバミューダ海域の謎や、乗組員が忽然と姿を消してしまったメアリー・セレスト号事件などは多くの人々の興味をひいてきた。私も世界の謎といった類の本を読んでは世界の不思議に思いを馳せてきたものだ。

 ところが、実はこれらは不思議でもなんでもなかった。バミューダ海域の謎とされているものは謎でもなんでもなく、何百キロも離れた所で起こった遭難事件までもバミューダで起こったとされているようなでっちあげに過ぎず、メアリー・セレスト号事件では室内にまだ冷めていないコーヒーがあったなどとしてあるのは全てウソで、その謎を解くのに最も重要と思われる鍵である救命ボートがなくなっていたことは意図的に触れられていないことが明らかになっている。

 不思議とされていたものの謎が解かれてしまっては面白くない、というのも人情かもしれない。しかし、そんな事件を通して見えてくる真相の方が、面白いのもまた事実であったりする。事実を捻じ曲げ、不思議を捏造する人々の多さは驚くほどである。

 本書が取り上げているのは、そんな話題の数々。

 オーパーツとされる水晶のドクロ、2000年前のバクダッドで電池が使われていたか、ノアの箱舟はトルコに埋まっているのかといった古代史関係の話題を読めば、珍奇なものよりも実際の歴史の方が面白いと思わせてくれる。

 アメリカでは超能力者が警察の捜査に協力しているとか、日本でもたまにテレビでやっている超能力者の捜査はどれほど真相を当てているのか(皮肉なことに彼らの的中率は一般の大学生よりも低かった)、超能力は実証されているのか、宜保愛子はロンドン塔の悲劇を霊視で再現したのか、果ては聖書には予言が書かれているかといった超能力や霊の話はどれも実証されていないことが明らかにされる。超能力者による捜査は小説としては面白いかもしれないが、実用性はゼロで科学捜査をはじめとする地道な捜査活動がいかに優れているかを思い知らせてくれる。

 その他、宇宙人やイエティなどの謎の生物など、超マイナーな話題からメジャーな話題まで斬って斬って斬りまくっている。マイナーなものの中には、その超常現象が地域の文化に根ざしているものなどがあり、余程超常現象に興味がある人にしか知られていないだろうし、それを解き明かす過程も退屈なものがあるのも事実だ。

 しかし、本書が伝えようとしているのは、メジャーな話題の真相というわけではないと思う。むしろ、不思議とされる話に安易に飛びつくのではなく、懐疑的に、冷静に見つめ、その上で楽しむ姿勢が大切だとしたいのではなかろうか。

 恐らく、このような本は超常現象に対する愛情抜きには書けない。愛情がなければ膨大な文献を丁寧に調べ、事実に当たり、当事者の話を聞くことなどできないだろう。不思議を愛するからこそ、でっちあげられた不思議を排斥したいのではないか。

 世の中に不思議は沢山ある。だから、もう解決済みの話にいつまでもとらわれないで、次なる不思議を探そうではないか。きっとその方が楽しいと思う。不思議や謎を愛する人こそ楽しんで読めるのではないか。
関連記事
反疑似科学・反オカルト | 2007/03/18(日) 22:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

286冊目 ドジでまぬけな犯罪者たち
ドジでまぬけな犯罪者たち
ダニエル・バトラー著 / アラン・レイ著 / リーランド・グレゴリー著 / 倉骨 彰訳

草思社 (2000.5)


評価:☆☆☆☆


 あなたが警官や犯罪組織の一味で無いならば、最も身近な犯罪者といえば推理小説の中くらいだろう。考え抜かれた犯罪は迷宮入り間違いないというような、練りに練られた犯罪を犯す狡猾な犯罪者。それを頭脳戦で追い詰める警官たち。

 本書が扱うのはそんな事件とは全く異なるものばかりである。

 たとえば。自分の名前入りの勤務先の制服を着たまま押し込み強盗に入る犯罪者がいる。正体がバレないよう、最も目立たない(と犯人が考えてしまった)ハダカでコンビニ強盗を謀るアレなヒトもいる。雪の日に近所のカーペットを盗み出し、引きずって逃げるのもいれば、選りにも選って超ド派手な車で逃げようとした銀行強盗もいる。家まで送ってくれたタクシー運転手からカネを奪う莫迦な奴までいる。なぜ足がつくと分からないのかが分からない。

 ろくに考えもしない犯罪者の方がむしろ多いのではないかという気にさせられる。推理小説の犯人との知性争いも面白いけど、お莫迦な実話もまた面白い。こちらの頭が痛くなるかもしれないけど。

 中には下痢をしてトイレに急ぐ余りスピード違反をしてしまったかわいそうな人もいるし、間違えてSWATに電話をかけてしまった麻薬の売人もいる。こちらは不運という感じであるが、笑ってしまうのは変わらない。

 軽い読み物として楽しめるのではないだろうか。特に、警察24時みたいな番組が好きな方にはお勧めである。
関連記事
ノンフィクション | 2007/03/17(土) 23:58 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

285冊目 なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか

評価:☆☆☆☆☆


 本書を知ったのは包帯アマゾン・ラブというちょっと妖しい雰囲気の漂うブログから。

 アメリカで騒がれているエイリアン・アブダクションについては、多くの日本人が首を傾げるのではなかろうか。なぜそんな突拍子も無い事を、彼らは信じることができるのかと。

 その答えの一つは、そんなことを言うとはどうかしているというものだろう。もちろん、”どうかしている”には幅があって、最も穏やかなものだと「彼らは科学を知らない」あるいは「常識を知らない」となり、最も手厳しい意見は「頭がおかしい」ということになる。

 果たしてそうだろうか。彼らは本当に、”どうかしている”から宇宙人に誘拐されて不快な人体実験をされたと信じているのだろうか。ゲテモノに感じられても不思議はないこの疑問に、正面から切り込む心理学者が現われた。その人こそ、著者のスーザン・A.クランシー。

 彼女はもともと”回復された性的虐待記憶”は本当に事実に根ざしているのかを研究していた。ところが、この話題はアメリカ社会においては実にデリケートで政治的で、熱い論戦を避けられないものだった。

 客観的な事実としては、辛い記憶を抑圧という手段で完全に忘れ去るというメカニズムは全く存在しないことが明らかになっているのだが、アメリカでは冷静で客観的な心理学よりもフロイトの呪いの方が政治的に強いため受け入れられていない。(この辺りの話については『フロイト先生のウソ』や『精神分析に別れを告げよう』に詳しい。『フロイト先生のウソ』については 71冊目 フロイト先生のウソにて紹介しております)

 一読して感心するのは、著者が真摯に研究に取り組んでいること。著者自身は懐疑論者で、宇宙人が存在する証拠は無く、ましてや地球にやってきて人間を誘拐しては人体実験を繰り返しているなどナンセンスであると信じている。そのことは本書の中で何度か触れられているのだが、それでも誘拐されたと信じる人々から話を聞く際には決して彼らを見下したりせず丁寧な対応に終始している。

 そして彼女がたどり着いた結論は、宇宙人に誘拐されたと信じる人々は、決して頭のおかしい人々ではない、ということだ。彼らの多くは親しみやすく親切で、不自由なく通常の社会生活を送っている。宇宙人が自分とブリトニー・スピアーズの脳を入れ替えたなどと訴える人は研究対象から除外しているからというのもあるかもしれないが。

 宇宙人に誘拐されたと主張する人々の話を、懐疑論者が紹介しているというだけで一定の価値はある(ビリーバーが紹介している本は既に何冊も出ている)。しかし、それよりも価値があると思うのは、宇宙人に誘拐されたと思い込む、心理学的な背景と事実関係に踏み込んでいることだ。

 まず指摘されるのは、彼らが宇宙人に誘拐されたという記憶を取り戻すのに催眠術の力を借りていること。催眠術下ではしばし不思議な意識の変容があるが、とりわけ記憶に混乱をきたすことが知られている。また、記憶そのものがあやふやなもので、思い出すという行為は過去の出来事を正確に脳内で再現するわけではなく、現在の思い込みなどを織り込んで自分に都合よく再生されることが明らかになっている(『抑圧された記憶の神話』に詳しい)。恐らく、宇宙人による誘拐を信じる何人もの催眠術者が、多くの人々に誘拐の記憶を埋め込んでいるというのが事実だろう。

 次いで、彼らが何から宇宙人のイメージを得ているのかが語られる。それは宇宙人が地球に攻めてくるという映画やドラマであり、アメリカに深く根ざしているキリスト教である。詳細は本書に譲るが、聖書にある話と宇宙人による誘拐の細部の一致は驚くほどだ。

 とにかく冷静かつ丁寧に、宇宙人による誘拐が信じられる背景に切り込んでいると思う。とんでもない主張にはとんでもない証拠が必要、と信じる科学者としてのスタンスと、温か味のある人間としてのスタンスが研究成果を魅力的にしているように感じられてならない。記憶とは何か、なぜ突拍子も無いことでも人々は信じられるのか、ということに、理解を深めることができる好著であると思う。
関連記事
反疑似科学・反オカルト | 2007/03/16(金) 23:55 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

結果報告
 今日聞いてきた再検査の結果。

 前回よりも多少の悪化が認められました。どうやら私の体はポンコツのようです。働きが悪いのは頭だけだと思っていたのに。

 とは言っても、病気じゃないぎりぎりのレベルから病気を示唆するレベルに上がったのなら問題だけど、元が病気なレベルだから多少の増減は誤差の範囲。いわば、平均体重を100kg上回ってるヒトが5kg太っても問題が増えるわけじゃない、ってところか。

 そんなわけで、近くの病院に紹介状を書いてもらったのだけど受診できるのは来週の金曜日とのこと。いや~、毎週帰ってこなきゃいけないなんて困ったなぁ(はぁと)。と私は余裕をかましているのだけど嫁さんは心配みたい。そうだろうなぁ。

 無理はしないに越したことは無いので、周囲にはかなり大げさに触れ回って過酷な残業は辞めるつもり。今無理をしても良いことは何も無いし、仮に無理して倒れても会社はなにもしてくれないから。

 そんなわけで、しばらくは闘病生活が続く(と言い触らして仕事をサボる)ことになりました。どこがどう悪いのかもまだ分かって無いけど。
関連記事
雑記 | 2007/03/16(金) 22:06 | Trackback:(0) | Comments:(6)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

284冊目 ホントの話
ホントの話

呉 智英著

小学館 (2003.5)

\560

評価:☆☆☆


 本書を知ったのは日々のことわりにて。

 なかなかに刺激的な文章が並んでいるのだが、その基本は常識に捕らわれず筋の通った議論をしようということで、感情に流されることなく論理を展開しているのには好感が持てる。

 特に民主主義や人権思想などというものが宗教と一緒でそれらが重要である確固たる根拠などない、というのは我々みなが認識しておかないと危うい。なぜなら、民主主義や人権思想が絶対的な正義だと思い込むと世の中にある様々な社会の並存を認められなくなるからだろう。

 死刑制度は廃止して敵討ちを復活させろ、というように過激にも見えることを述べながら、背景として死刑制度は凶悪犯罪を抑止する効果がないことなど、座視できない根拠を出している。

 ではとても面白いのかと言われると、どうもそうでもないのですよ。これが。死刑制度に凶悪犯罪の抑止効果がないなんてのは毎年日本でも死刑判決が出ていることからも簡単に想像できる。少年法が軽微だからといって少年犯罪が増えなかったのと同じ(少年犯罪についてはむしろはっきり減少している)。で、こんな基本的なことは他の論者も取り上げていて、しかも文章が面白かったりする。

 また、ドーキンスの利己的遺伝子を取り上げてこれを誤っていると糾弾しておきながら、その根拠が「黒人男は白人女にあこがれることが多いがその組み合わせでは黒人遺伝子がうすまってしまう」ということ。理解していないことに突っ込みを入れると碌なことにならない見本みたいなもので、これは呉に分が悪い。

 利己的遺伝子がはっきり出ているのは、たとえばX-Y染色体の間の闘争。知ってのとおり、男性の性染色体はX-Yと異なる組み合わせである。子供に受け継がれるのはどちらか一方。となると、XはXを残そうとし、YはYと残そうとする。相互に攻撃し、防御し合っているため人類ではほぼバランスが取れているものの、生まれてくる90%以上がメスの種が居たりする。攻撃とは、たとえばYを持っている受精卵は強制的に流産するといった手法があり、事実として知られている限りの親族で男の子が生まれたことがない家系というのがあったりするのだ。

 また、ミツバチやアリの社会でメスのハタラキバチ、ハタラキアリはなぜ自分の子供を生まずに姉妹を育てるのかという不思議も利己的遺伝子で説明できる。共通する遺伝子を残すなら子を残すより姉妹を育てるほうが有利なのだ。

 更に、魚ではオスがハーレムを作るのだが、そのオスがいなくなると残ったハーレムの中で一番大きなメスがオスになるという事例もある。これも利己的遺伝子で極めて上手く説明できる現象である。

 また、「黒人は黒人に特有の遺伝子を残そうとする」というのであれば、混血は更に望ましい。遺伝子が薄まって消えてしまうわけではないのだ。

 あまりに勉強不足なのにも関わらず利己的遺伝子に挑むドン・キホーテを演じるのを見ていると、自らもトンデモなのにオカルトを出鱈目だと糾弾する某W大学の教授が思い出されてしまう。もっとも、竹内久美子の『そんなバカな』を揶揄しているのは正しいだろうが。あの人、絶対に呉と同レベルにしか利己的遺伝子を理解していないだろうから。

 というわけで、勉強不足もあるけれど、読み飛ばすには良いと思う。刺激的だし、自分で考えるヒントになることも多いと思う。そもそも、本なんてどれもそんなもので、全てが正しいわけではないし全てが間違っているわけでもない。知らずに考えるのは無駄な行為だし、考えずに知るのは徒労だ。考えるヒントをくれる、というのは良書なのかもしれない。

 とか言いつつ、自分では考えずに知る方へと流されてるんだよなぁ。楽だから(ダメ人間)。
関連記事
未分類 | 2007/03/15(木) 07:17 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

再検査の結果は
 健康診断にて血液検査の結果が芳しくなく再検査となってしまったのであるが、このたび再検査の結果もよろしくない、とのこと。早めに診療所に来るようにとの指令つきでそんな結果が来たのであるよ。なので、明日家に帰り明後日に受診する予定。

 再検査で引っかかったとはいえ、この時には咳が止まらずに大変苦しい思いをしていたわけだから問題ありといっても不安はないのだ。それでも2回連続でひっかかっているわけで、ここらで白黒はっきりさせておいた方が後に禍根を残さないので良いかな。

 白黒はっきりついた結果、3ヶ月の命ですとか言われたら困るわけで、白であることがはっきりして欲しいな、というべきかも。ついでに、再検査でもひっかかった原因が過酷な労働条件だとしたら、今の職から離れなきゃいけないなぁ。嬉しいなぁ困ったものだ。

 そんなわけで今日の結論。過労だからドクターストップかけて欲しいな(はぁと)
関連記事
雑記 | 2007/03/14(水) 22:44 | Trackback:(0) | Comments:(3)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

283冊目 怪しい日本語研究室
怪しい日本語研究室

イアン・アーシー著

新潮社 (2003.5)

\420

評価:☆☆☆☆☆


 みんな日本語について語るのが好きだ。たとえば私は「まぎゃく」という言葉を許せない。もちろん真逆(まさか)の読み間違えであることは明らかで、そこそこ広まってしまった以上は駆逐も不可能だと思っているのだけれども、それでも周りの人にだけは使ってほしくない。「なにげに」も好きではない。でも、これは「まぎゃく」程じゃなくて、他人が使う分には良いけど自分では使わないというレベル。私だけではなくて、きっと誰もが自分なりのルールを持っていると思う。

 言葉に対するこの妙なこだわりを徹底して揶揄しているのが清水義範の『日本語の乱れ』。正しい日本語について日本全国津々浦々から寄せられた様々な意見に振り回されるアナウンサーが主人公で、著者らしいどたばたについ微笑んでしまう。

 『日本語の乱れ』にしても我々にしても、日本語文化の中で育った、いわば中からの視点に対して、本書は外から見た日本語(および日本文化)のおかしさが書かれている。なにせ、著者はカナダ人。でも本を読んでみるとこれが外人が書いた本とは思えないほど日本語と日本文化を良く分かっていることに驚かされる。

 魅力的なのは、視点が違う、ということ。先ほども書いたとおり、これは外からの視点なので、我々自身がおかしいと気付かないことにも突込みが入っている。愛情と共に。

 たとえば成田空港。入国あるいは帰国して目に留まる看板には、「おかえりなさい Welcome Japan」と書いてある。日本語は読めるが英語を読めない外国人が入国する、ということを全く考慮していない。この辺りはたぶん、日本人には気付かないところ。

 お約束の官僚の使う文言への茶々には独自色を感じさせないけれども、本領の言語論になると迫力が変わる。マヤ文字と日本語の類似点なんて考えたこともなかったこと。その他の言語の持つ特徴についてもいろいろ触れられているのだけれども、あっさりとした文章の裏にどれほどの知識が隠されているのかは想像もできないほど。博学な人が書く本は面白い。きっと、私には見えなかったつながりを見つけ出し、顕わにしてくれるからなのだろうと思う。

 最後に、外人が変な日本語について書いているともなれば、日本嫌いじゃないかと思われるかもしれないがそうではない。大変な日本好きで文章の合間から日本への愛着を感じることができる。こうやって外国人に好いてもらえる環境は、このまま保ち続けたいものだ。
関連記事
未分類 | 2007/03/13(火) 23:40 | Trackback:(0) | Comments:(4)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

282冊目 レナードの朝
レナードの朝

オリバー・サックス著 / 石館 康平訳 / 石館 宇夫訳

晶文社 (1993.7)

\2,957

評価:☆☆☆☆☆


 オリヴァー・サックスの名を一躍広めた医学エッセイ。そして同名の映画の原作となった貴重なノンフィクションでもある。

 1920年前後に致死的な嗜眠性脳炎という病が流行した。感染者の多くは亡くなったが、それでも少数の生き残った人々がいた。変わり果てた姿で。脳に損傷を受けた彼らが示した症状はパーキンソン病に良く似ており、患者達は知性は失わなかったものの体をろくに動かすこともできない状態になってしまっていたのだ。

 何の治療法もなく、ただ病院で朽ちていくに任されていた彼らに医学の光がようやく当たるようになったのはなんと1960年代になってから。L・ドーパ。魔法の薬とまで過大に言われたこの薬品は、数十年に渡って病に捕らわれ続けていた嗜眠性脳炎患者に、目覚めをもたらした。彼らの多くは動きを取り戻した。その様は、奇跡といっても過言ではなかっただろう。50年の時を過ぎて甦るこの不思議。

 ところが、L・ドーパは魔法の薬ではなかった。いや、目覚めさせたことだけをとれば魔法と言ってもよかったかもしれない。だがこの魔法には強烈な反動作用があったのだ。

 脳炎から目覚めた患者達は決して病から解放はされなかった。激烈な副作用は猛烈なチックなどを誘発。時には患者を死に至らしめる結果にもなった。それでも、失うものはもう何もないと思う患者達はL・ドーパに頼るしかなかった。

 本書ではL・ドーパによって目覚めた20の症例が収められている。どれもがハッピー・エンドになったわけではなかった。幾人かは絶望して死に、幾人かは薬を呪った。しかし、薬のおかげで副作用などと折り合いを付けながら生きていく道を選べる患者もまた現れた。単純に奇跡の薬と言うわけにも、危険な薬というわけにも行かない。

 なぜL・ドーパはこのような複雑な効果を生じさせるのだろうか。脳の持つ複雑な機能と構造と環境が薬理効果の違いの根源にあるのだろう。人間の不思議さを、確かに感じることができる。

 サックスは本書で、この不思議な現象を紹介しているのだが、そこには症状の違いを見つめる冷徹な科学者としての目と、患者を一人の人間として助けようとする真摯な医学者としての目が共存している。どちらかに偏ってしまっては、きっと随分雰囲気が異なった本になったことだろう。

 なので、単純にL・ドーパの効き方を述べている本には程遠い。またその副作用を断罪しようとする姿勢とも遠い。薬にできること、医者にできること、患者を取り巻く環境にできること、そして何より患者自身ができること。全てが必要であることが良く分かる。

 脳を侵す病の恐ろしさはもちろん伝わってくるが、同時に病と闘う患者達の孤高で気高い姿も伝わってくる。人間の不思議さを感じることができる。不幸な病に犯されたかわいそうな人々の記録だけだと思ってしまっては、きっと彼らの奮闘を受け止めたことにはならないだろう。

 重いテーマでありながら映画化された理由が良く分かるまた、映画を見た方には役者たちがどのように役作りに励んだかが記されているので興味をそそられるのではないか。役者は凄まじい情熱と研究心がなければ他人を演じることなどできないのだな、としみじみ感じたものである。

 医学エッセイとして優れた手腕と、事実は小説より奇なりを地で行っている不思議な話の組み合わせなので面白さは抜群であると思う。脳研究の持つ魅力にも迫った好著。


 なお、興味を持たれた方は同じ著者の『妻を帽子とまちがえた男』と『火星の人類学者』をお勧めしたい。どちらも知的な楽しみを味わい、次いで人間の不思議さについて考えさせられるすばらしい本だと思う。
関連記事
医学・脳・精神・心理 | 2007/03/12(月) 23:35 | Trackback:(1) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

281冊目 老人たちの生活と推理
老人たちの生活と推理
コリン・ホルト・ソーヤー著 / 中村 有希訳

東京創元社 (2000.7)


評価:☆☆☆☆


 探偵と聞けばどんな人を想像するだろうか。ヒゲが自慢の嫌味な男?コカインとタバコを愛する偏屈男?はたまた版権の都合上じいちゃんの名前を呼べない少年?ところが本書で活躍するのは老人たち。それなら安楽椅子探偵なのか、と思う向きもあるかもしれない。あにはからんや、そうではない。いい年をしたおばあちゃんが大活躍する話である。

 ことの起こりは、老人ホームに住む一人の老婆の死体が発見されたことに遡る。被害者が嫌われ者だというのであれば事件にも納得行くかもしれないが、この人は図書館の司書あがりで本と首っ引き、人畜無害な独り者だった。浜辺で発見された遺体は何箇所も刺されていた。

 どうやら犯人も同じ老人ホーム内部にいるらしいと聞いて事件に絡んでしまったのが主人公たちグループ。本書の主人公の方が犠牲者として相応しいと誰もが思うような毒舌家、超大柄で豪快な女傑(大金持ち)など、太った老人たちが警察の制止もなんのその、証拠を漁りあたりを駆けずり回る。そのスピードは高が知れていても、やることは半端じゃない。

 我々が老人ホームの入居者と聞いて思い浮かべるような、大人しい老人たちの姿は余り見られない。なまじの若者よりも活動的で逞しい姿には呆れてしまう。多くの推理小説とは違って警察は警察できちんと仕事をしている。彼女らの活躍が無くても早晩犯人は逮捕されたはずというのはなかなか無かった趣向に思うが、やはり老人ホームが舞台だと飛んだり跳ねたりの活躍は期待できないから無理のない設定だと思う。

 毒舌で嫌われ者な主人公は犯人を割り出すことができるのだろうか。

 老人ホームという意外な設定でありながら地に足の着いた人物設定、老人のやることに対する深い洞察が本書を独特のスタイルを持つ小説にしている。主人公には間違っても近づきたいとは思わないが、そう思わせようとする著者の狙いが当たっているのだろう。ひょっとしたら、新たな推理小説の一ジャンルになるかもしれない。映像化されたらさぞ映えないだろうが。
関連記事
推理小説 | 2007/03/11(日) 23:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

280冊目 中国文明の歴史

評価:☆☆☆☆☆


 著者の語る中国像は、いつもこちらの先入観を打ち破ってくれて面白い。

 本書はタイトルの通り、中国文明の歴史についての通史である。まず中国文明とは何かということから説き始めるのだが、これが洛陽中心にした都市の文化を指しているのであって特定の民族の文化を指しているわけではない、というのがまず面白い。次いで本書の中心を為す中国文明について、神話・伝説の時代から現代までの変遷を語っているのであるが、これがまた他の中国ものでは味わえない意外性に満ちている。

 とはいえ、始皇帝による統一から現代まで2200年余り。その通史をわずか250ページ程度で紹介しきるのは不可能だろう。なにせ、平均すると1ページでおよそ9年分を扱わなければならないのだ。24史というのであれば、一つの王朝についてわずか10ページ。これでは相当の駆け足にならなければとてもではないが収めることはできない。

 しかし、逆説的に聞こえるかもしれないが、だからこそ本書は成功した、とも言える。王朝ごとに語ろうと思えば語れることは大量にある。しかし、大胆に贅肉を切り落とし、本質だけを真摯に追求した結果としてダイナミズムに溢れた通史が可能になっている。

 本書から見えてくる中国の世界は、漢民族という単一民族が中原を狙う異民族と抗争を繰り返す中で発達してきたというイメージからはかけ離れている。むしろ、漢民族こそ圧倒的少数民族で、中国はその成立当初から四方の夷狄によって形作られ、異民族が都市化することによって占領した(元は異民族の)旧い文明と自分たちの文化を組み合わせた新たな文明を作り上げてきたという動的な歴史が浮かび上がる。

 また、丁寧に言うべきだと判断すれば地理的な条件についても詳しく触れられており、地勢的な条件がどのように文明の発展に寄与してきたのかも分かって興味深い。

 中でもとりわけ面白いのは、やはり北方系の異民族が絡むところだろう。つとに都市化された中国文明を中心にすえて中国史を語る他の研究者と違い、モンゴル史を研究する著者の面目躍如たるものがある。北方からどれほど多くの文化が持ち込まれたかは驚くほど。中でも、漢字の変遷について異民族からの影響が大きいというのは興味深い。

 中国文明の最後の変遷は、日本との関わりで生まれた、と著者は指摘する。今の中国は日本型の文明によって形成されているとはなんとも意外である。そこには良い面もあれば悪い面もあるだろうが、それにしても今の冷え切った両国の関係を見るとなんとも皮肉であろう。

 と、大変に面白い本なのだが、やはり五胡十六国や五代十国時代、北方での異民族同士の争いなどは余りに駆け足過ぎて重大事件ですらあっさり通り過ぎてしまうのでなかなか頭に入ってこない。贅肉を削りに削ったため避けられないことではあるだろうが。なので、細かい事件や細部に立ち入るのではなく、2000年余りの歴史の大雑把な流れに見られるダイナミックな変遷を見るのが適した読み方だろう。とにかく、他の中国本とは一線を画した刺激的な本であるのは間違いなく、中国史に興味を持つあらゆる方にお勧めできる一冊である。
関連記事
中国史 | 2007/03/09(金) 23:51 | Trackback:(0) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

279冊目 シュメル
シュメル-人類最古の文明

小林 登志子著

中央公論新社 (2005.10)

\987

評価:☆☆☆☆


 人類最古の文明、シュメ(ー)ルについての入門書。シュメルについては世界史で名前を聞いたことがある、という程度の人が大半だろうから、このような本はかの地の理解を深めるのに役立つのではなかろうか。

 世界最古の文明というだけのことはあり、世界最古の法典(今ではハンムラビ法典よりも古いウルナンム法典というのが知られているそうな)、世界最古の物語であるギルガメッシュ叙事詩、世界最古の女性作家、世界最古の判子文明など最古に事欠かない。

 また、地域の先進文明だったこともあり、シュメルの影響はユダヤ教にも見られる。その一つが洪水伝説であり、バベルの塔の伝説である。もともとイスラエルには大洪水を起こすような大河が存在しないため、ノア伝説がシュメール起源だということや、バベルの塔のモデルがバビロンにあったことは知っていた。ハンムラビ法典は四大文明展で見て感激したしギルガメッシュ叙事詩はもう随分前に読んだ。

 それでも知らなかったことが沢山あって、それが嬉しい。小麦の文明でビールが発達したことは知っていても、ビールの飲まれ方は知らなかった。円筒印章は知っていたし見たこともあったが何が刻まれ、どのような意味を持っていたのかは知らなかった。

 断片的にしか知らない文明の人々がどのように過ごしていたのかを垣間見ることができるのと、バランスよく多くの事柄に触れているのが入門書として適しているように思う。王族から庶民に至る多くの人々の生活、辿った歴史には興味を引かれることが多い。

 大英博物館に訪れたときに見た、ライオン退治の壁画がエジプトまで版図に組み入れたアッシュル・バニパル王のものだった、ということはもっと早く知っておきたかった。そうすれば実物を見たときに更に感慨深かっただろうに。知っていることが多いと、博物館などでは楽しくて仕方がないのだろうと、あの時知識不足を悔やんだのと同じ感慨を抱くのだった。

 そんなわけで、歴史を好きな方は楽しく読めるだろう。また、中東の現在に興味がある方も読んでみたら面白いかもしれない。きっと、遥か昔の文明のことであっても知れば今の中東を理解する助けになるだろうから。
関連記事
その他歴史 | 2007/03/07(水) 23:18 | Trackback:(0) | Comments:(4)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

278冊目 ギャンブルに人生を賭けた男たち
ギャンブルに人生を賭けた男たち

マイケル・コニック著 / 真崎 義博訳

文芸春秋 (2002.1)

\750

評価:☆☆☆


 宝くじが当たったらどうしよう。えーと、まず仕事は辞めるな。日中暇になるからと言う理由でなにか仕事をやるにしても、絶対今の仕事は辞める。そりゃあもう確実に。どれくらい確実かというとコーラを飲んだらげっぷが出るくらい確実じゃ。ほぼ断定。(断定ってどういう意味なのか分かってるのか?ニュースなんかで良く見聞きするけど)

 そんな小市民な私にとっては一生縁のない世界が、現実にあるのだということを知り、かつ遠くから眺めるのは、それはそれで楽しい。1回十万ドルのポーカーに興じ、カードで数億の勝ち負けを繰り返す。ある者はその強さで伝説となり、ある者は浮沈の激しさで名を残す。

 絢爛豪華なラスベガスという都市が、ギャンブルの収益で成り立っているのを見ても分かるとおり、胴元に勝つことはできない。と言っても、どんなやり方をしても絶対に勝てないと言うわけではなく、勝ったタイミングで勝負を止めてしまえば勝てる人もいる。つい熱くなって引き際を誤るだけの話で。

 勝つ人も稀に存在するが、それでもやはり圧倒的多数の人々は負けているわけで、だからこそ稀な勝者の勝ちっぷりが伝説にまでなるのだろう。

 本書にはその世界の有名人が陸続と登場する(とはいっても私はそのなかの誰一人として知らなかったが)。その伝説は面白くもあり、魅力的でもあるのだが、同時に心の中で敬遠する気分が生じるのもまた事実。私はカネが動くところにいるだけで生計を立てている人々に、人間的な魅力は感じることができなかった。ギャンブルとそれに関わる人々とを面白く紹介しようとしているのが目的なのであれば当然の結果かもしれないのだけど。

 名前すら聞いたことのないゲームから誰もが知るブラックジャックやポーカー、ルーレット、競馬と様々なゲームについての確率論や、カジノ相手の詐欺行為にはうならされるし、非合法のスポーツトトカルチョに参加した人が支払いを渋ると奥さんに言いつけると脅す話のようにあちらのお国も奥さんとは強いものなのであるなぁと思わさせられるものもある。

 ギャンブルはどうやってもなくならないのだろう。そこには人をひきつける圧倒的な魅力がある。だからラスベガスは存在できるし、日本ではパチンコや競馬が繁盛している。それが人の性だというのであれば、日本のように収奪にしか思えないほどの返還率しかないギャンブルは潰して、公営のカジノを作っても良いかもしれない。

 そのようになっても、ここに登場する人々のように人生をギャンブルに費やすのではなくて、自分の裁量で使えるカネを、趣味に使ったと言える範囲で使う分には、十分に楽しめるのではなかろうか。ギャンブルそのものにあまり興味を持っていない私にもそれくらい思わせるくらい、ギャンブルに魅力があることは分かった。とは言っても、今後もずっと縁のない世界なんだろう。
関連記事
ノンフィクション | 2007/03/04(日) 21:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

277冊目 精子戦争
精子戦争

ロビン・ベイカー著 / 秋川 百合訳

河出書房新社 (1997.6)

\2,310

評価:☆☆☆☆


 精子戦争とあるが、実際には男女の性戦略についての本。扱っている話題の多くは精子間の戦争の話だが、それだけに留まらないのは男と女という二つの性が持つ複雑さを感じさせる。

 37のそれぞれの話題で、冒頭に男と女の物語があり、続いてその外見の戦略の裏にどのような無意識的な戦略があるのかが書かれている。その試みが成功を収めているとは思えないのだが、それでも精子戦争という見えないシーンに興味を導くには効果的なのかもしれない。言い換えれば、最初からこのテーマに興味を持つ方にとっては冗長である。

 それでも、37のケースというのはかなりの数だ。ではそこで何が取り上げられているのかというと、これが実に幅広い。

 夫婦間で行われるマンネリ化したセックス、行為の数十分後に排出されるフローバック(このおかげでシーツが濡れ、不愉快な思いをした女性も少なくなかろう)の意味、不倫・同性愛・マスターベーション・売春・レイプ・集団レイプといった性の形態がなぜあるのか。

 また、実際に射精した後で妊娠に至るまでに精子はどのような戦いを経ているのかはなかなかに面白い。とりわけ、精子には様々な形態があり、それぞれ働きが異なるというのは面白い。受精能力を持つのは精子の中でもほんの一握りのエリート集団で、残りは他人の精子を殺す役割や、卵子に至る道を塞いで他人の精子を防ぐ役割を専従的に担っているというのだ。

 精子の持つ、このような戦闘的なイメージからタイトルを精子戦争と名づけたのは実に正しいように思われる。動物は全て、メスを巡って争うが、その更に先の段階でも競争で優位に立てるように進化してきたという生物の不思議さと凄さを感じるし、人類においてもまた精子戦争が行われているという話に世界では何が起こっているかを想像させられ、つい意地の悪い感想を抱かせられる。

 事実の問題として、近代社会では5~15%の子供が戸籍上の父親とは異なる遺伝上の父親を持つという。40人学級を想像すると、2~6人が父親参観に来ているのではない男を父として持つというのは凄いことだ。でも、それが事実と言うのだから驚く他はない。何に驚くって、他人のタフさだったりするのだけど。

 オーガズムに関しては、過去オルガスムスの嘘を紹介したのだが、本書では更に驚嘆すべき事実が明らかにされている。それは、オーガズムには精子戦争を助長する働きがある、ということ。オーガズムは妊娠を助けたり、反対に妊娠を防ごうとする。

 男性のオナニーには害がないということは知っていたが、古い精子を排除し、若く健康な精子に置き換えるという積極的に利をもたらす働きがあるのも知らなかった。確かに頻度によって性状が異なるのが出るなぁとは思っていたのだけど、その中に含まれる精子の種類と量のバランスが違うとは思いもよらなかったこと。

 とにかく、性戦略の世界は奥が深く、面白い話題が沢山あるのだということを改めて教えてくれた。生物は子孫を残すためだけに存在する以上、より自分の子孫を残すための戦略が発達するのは当然のことだろうから、この世界への興味はきっと尽きることがないだろう。生物の進化の不思議さに思いを馳せられる、なかなかの名著である。ちょっと生々しいのが欠点かもしれないが。



 なお、本書に興味を持たれた方には以下の書評もご覧ください。
『利己的な遺伝子』 ご存知、リチャード・ドーキンスによる、遺伝子が自己の複製を残すためにどう振舞うかを書いている名著。

『生命進化8つの謎』 ゲームの理論から生物進化をどう説明できるかに挑んだ意欲作。進化の謎に、ゲームの理論は間違いなく必須であることが示されている。
関連記事
生物・遺伝・病原体 | 2007/03/01(木) 18:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。