評価:☆☆☆☆
中国で人気のある歴史物語といえばなんと言っても三国志、そして水滸伝。その二作と勝るとも劣らないほどの高い評価を誇るのがこの楊家将という。ところが、本家の楊家将は民間伝承となって広まるうちに仙術など荒唐無稽な物語が混入し、それがためか日本ではなかなか人気が無かった。
本書は不遇をかこってきた楊家将の眉唾なところをばっさり切り落とすことによって、史実を踏まえた上質な歴史物語となっているように思う。
時は宋の初め。宋というのは、唐の後の戦乱時代である五代十国の中から出てきた軍事国家ではあったのだが、文官の力が非常に強いという不思議な構造を持っていた。ということは、戦争には弱い。
ところが宋にとって不幸なことに、当時中国の北方は異民族国家である遼によって支配されていた。燕雲十六州。軍事的には中原を護るのに絶好の地であることから、精神的には異民族に奪われた土地を奪還すべしという意思から、宋はこの地の回復を夢に見た。宋が成立した当初から、宋と遼の激突は運命付けられていたといって過言ではない。
楊家は北漢に仕え、後に宋に鞍替えした楊家を主人公にしている。堂々たる武人で、やはり武芸達者である7人の息子を持つ将軍、楊業。彼と息子たち、同僚たちと遼の好敵手たちがぶつかり合う様を生き生きと描いている。
辺境で、軍人として生きることに誇りを持ち、政治に関わらない男たちが何度もライバルとして戦い、しのぎを削る。歴史を知っていれば、その行く末は分かるだろうが、幸いにして(?)この時代はそうそう知られているわけでは無いだろうから多くの読者は手に汗を握りながら読むことができるのではなかろうか。
宋成立当初の異民族との攻防に加え、朝廷では文官と武官の陰湿な権力闘争が繰り広げられる。過酷な状況の中でも家族で助け合い、辺境にその存在感を示す楊家は乱世をどう生きたのか。なかなかに面白い作品である。
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