ドナルド・ゴールドスミス著 / 加藤 珪訳
サンケイ出版 (1986.8)
\1,470
評価:☆☆☆☆☆
ネメシスという名に聞き覚えがある方はオカルトか神話のファンだろう。私にはオカルトで聞いた記憶があった。実際、『フォトンベルトの真実と暗黒星ネメシス』だとか『恐竜大絶滅の謎と木星ネメシス』(出た!飛鳥昭雄!!)だとかを見れば怪しい匂いを感じざるを得ない。もちろん、怪しい本だろうと思いつつ読んだのであるが、期待に反して大変面白い本であった。
考古学的な証拠によると、おおよそ2600〜3200万年という周期をもって生物の大絶滅が見られるという。ひとことに2600万年と言うのは簡単だが、3000万年近い周期で起こるなにかの正体を突き止めるのは大変なことである。
この長い周期を説明するために著者が目を向けたのは宇宙。そう、恐竜を絶滅させたのと同じ、大隕石の衝突が周期的に起こっているのではないかと指摘する。事実、地上には多くのクレーターがあり、この周期に作られたと思しきものも少なくないようだ。
だが、なぜそんなに規則正しく衝突が起こるのか。まさかガミラス帝国がその周期にあわせて流星爆弾でも落としてきているわけもあるまい。だとしたら、何か理由があるはずだ。
著者らが主張するのは、2600万年周期で太陽の周りを巡る太陽の伴星が、太陽系を覆うように存在する“彗星の巣”、オールトの雲を撹乱しているのが原因ではないか、ということ。この撹乱によって億単位の彗星が太陽系内部に侵入、各惑星を爆撃することになるとする。従って、伴星の公転周期が絶滅の周期となるという理論だ。
本書はこの太陽の伴星・ネメシスが存在する可能性を指摘し、なぜネメシスを想定することが有利なのかを懇切丁寧に解説している。
そもそも本当に生物の絶滅周期があるのか。仮にあるとして、原因は宇宙ではなく地球にある可能性はないのか。宇宙からの爆撃が絶滅の原因だとして、その爆弾の正体は何か。ネメシスが実在するとしたらそれはどのようなものか。
正直、その存在は余りにご都合主義的に感じられてしまうのではあるが、それでも仮説の面白さは特筆できる。ネメシスが存在しないにしても、読む価値は十分にあると言える。仮説の面白さと、生物絶滅という大きな謎を解き明かす面白さを味わえる本。
ただ、この説には強固な反対論もある。2600万年周期を持つ伴星は、最も太陽から離れる遠日点においては太陽よりも他の恒星の重力を強く受けてしまい、その軌道を保つことができないのではないか、ということのようだ。いずれにしてもこの仮説は観測技術の向上によって白黒はっきりするはずなので、それまではネメシス仮説も一応生きていると思って過ごすのが楽しいように思う。
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