沢口 俊之著 / 阿川 佐和子著
新潮社 (2005.6)
\460
評価:☆☆☆☆
モテたくない、という人はそもそもいないだろう。もしかしたら3次元には興味が無いというヒトもいるかもしれない。実際、「三次元なんかに興味あるか、ばーか」宣言なんてのもあるくらいだから。それでも、多数の男女にとってはモテは重要であることであろう。
モテ/非モテについて脳はどう思っているのか。気鋭の脳科学者と対談に挑むのは阿川佐和子。知的な女性でかつ話上手となれば、どんな話に及ぶのか大変興味をそそられたわけです。
で、その結果は。うん、なかなか面白い。
阿川佐和子という門外漢(いや、漢を使うべきではないか?)と脳の話をするには興味を引くようなものであるべき、と思ったのかどうかは定かではないが、脳の細かい話に興味の無い方にも読んでもらえるような、そんな配慮に富んでいる。
なぜ男は浮気性なのか。そして女もしばしば浮気をするのはなぜなのか。この辺りは進化論とかゲームの理論とかから説明もされていて、実際にゲームの理論はかなり浮気の位置づけを説明できているように思えて説得力を感じさせるのだけれども、それでも脳の研究だけから迫るのも面白い。
免疫とセックスアピールの関係や脳の立場から見た男女の関係のあるべき姿、などは現実の人間社会のあり方としてどのようなもんが理想なのかということとは別に、知っておいて損は無いと思う。
海馬と呼ばれる部位で成人後も脳細胞の増殖が見られる話やベトナム戦争からの帰還兵にしばしば見られたPTSDで脳の萎縮が見られること、生殖から離れた老人が生きることの意味など、モテに限らず面白そうな話であれば制限無く話をしているのがより面白さをかき立てる。ついでに、意外な話からモテに結びつくのもまた面白いのだけど。クーリッジ効果とか。
一方で残念なところもある。たとえば血液型と性格につながりがある可能性を示唆しているのだけれども、根拠となるのは茨城県警の発表した血液型別の事故頻度だけで、その他の血液型と性格の間に相関は無いのではないかとする膨大な研究には触れられていないこと。これは読者に冷静な判断をさせるという点では失格だろう。この茨城県のデータが本当だったとして、それが単なる偶然なのか、再現性のあるものなのかはしっかりさせてほしい。
また、最近の子供は喧嘩をしないので手加減を知らず、人を殺してしまうのではないかなどと幼少時の暴力の不足が少年犯罪をもたらしているかのごとき発言をしているが、これは悪質なデマとしか言いようが無い。対談をやっている二人が子供の頃の方が今より倍以上も少年による殺人が起こっていたのだ。件数を問題にするのであれば、あなた方が受けた教育の方が間違っているとしなければ論理矛盾である。
と、そういった欠点はあるが、その手の認識不足は対談では仕方が無いのかもしれない。もうちょっと冷静な話し手だと話自体も落ち着きすぎて面白さに書けるのかもしれないが。脳についてちょっと興味がある方が読むには丁度良い本だと思う。
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