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262冊目 隣に棲む連続殺人犯
隣に棲む連続殺人犯

ヘレン・モリソン共著 / ハロルド・ゴールドバーグ共著 / 大野 晶子訳

ソニー・マガジンズ (2005.10)

\2,520

評価:☆☆


 企画は面白かったのだが、内容から科学的あるいは医学的な見地からすると誤りが多すぎるのが残念な本。たとえば、著者はこのように書く。

精神病質者の場合、罪悪感や良心が属する超自我の部分に問題を抱えている。精神病質者には良心がなく、連続殺人犯のように気分屋でもない。精神分析医がなんらかの手を打てば、精神病質者の性格を変化、発展させることは可能だ。ところが連続殺人犯の場合、性格がまとまっていない。
本書P.112より引用


 この文章の中には明らかな過ちが含まれている。“精神分析医がなんらかの手を打てば、精神病質者の性格を変化、発展させることは可能”ということだ。

 大変残念なことに精神分析を行う人々が信じているであろうことは大嘘であることが判明している。精神分析を受けた人の治癒率は、自然治癒率よりも低くなるという確たる証拠がある。『精神分析に別れを告げよう』には精神分析の驚くほどどうしようもない姿が克明に描かれている。

 また、71冊目に紹介した『フロイト先生のウソ』もフロイト理論なるもののインチキを知る際には勉強になる。

 この事例に限らず、フロイト派にしか通用しない言葉で権威付けする傾向が見られ、口辱期やら投影やら分裂やらがどうとか解説しているのだが、上記のとおり全く意味がない。さらにロールシャッハテストも取り上げた挙句に催眠術で過去を再現させようとする。当然のごとく、多重人格(多数の女性を強姦し、金品を強奪していたビリー・ミリガンが発症しているとして有名になったものの、多重人格の存在そのものに大いなる疑問が投げかけられている)が顔を出し、夢判断まで取り上げられる。ここまでくると精神分野におけるオカルト大集合といった趣がある。

 なお、ロールシャッハテストに関しては同じく73冊目に紹介した『「心理テスト」はウソでした。』が参考になると思う。

 催眠術下の記憶回復についても疑問がある。『悪魔を思い出す娘たち』には催眠術によって”回復”した奇妙な記憶についての恐ろしさが良く現れている。なにせ、ありえなかったことでも人は簡単に記憶を取り出してしまうのだから。記憶の好い加減さについては『抑圧された記憶の神話』に詳しい。

 さらに残念なことに、“精神分析医がなんらかの手を打てば、精神病質者の性格を変化、発展させることは可能”との言明はもう一つの誤りをも含んでいる。それは、性格は遺伝性があり、年齢を経るに従って遺伝の影響が大きくなるという事実を無視することから導き出される。はっきり言って、精神分析は害になることはあっても役に立つことはないタバコみたいなものだ。タバコと違って直接の死者をださないところがマシな点かもしれないが。

 従って、本書を読んで記憶に残すべきは事実の部分だけだ。著者の判断や理論は全く当てにしてはいけない。そういう読み方に自信がない方はそもそも本書を手に取るべきではないだろう。ただし、連続殺人犯は生まれながらにして連続殺人犯であって矯正不可能であるとの考えには全面的に同意する。

 それでも本書には魅力がある。なにせ、エド・ゲインやジョン・ゲイシーと言った海外にまで名前の知れ渡った“超大物”とのインタビューが多数載っているのだから。なぜ彼らが犯罪を犯すのか。その答えはもちろん精神分析からは出てこないが、それでも次なる被害者を出さないために研究することは必要だ。

 犯罪者たちがなぜ犯罪に走ったのか。その闇に興味がある方は注意しながら読んでみても良いかも知れない。ただし、残虐な描写が多数出てきて、しかもそれが誰かの身に起きた現実だという圧倒的な事実には胸がつかえる。それが苦手な方は決して読んではいけません。その反面、事件の事例集が好きな方は楽しめるかも。
ノンフィクション | 2007/01/28(日) 20:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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