評価:☆☆☆☆
人間は地上に堕ちた天使ではなく、サル類と共通の祖先から進化してきたということをほとんどの人は認めているだろう。知識としては。しかし、今の我々の生活にも類人猿だった頃の影響が色濃く見られると言われたらどうだろう?
著者は『裸のサル』でまさにそのような主張をし、宗教関係者からは勿論のこと、人類学者までから猛烈な攻撃を受けた。ところがその後の目覚しく発達した遺伝学の成果から、人間とチンパンジーはわずか遺伝子の1.4%しか違わないことが判明したことに表されるように、思ったよりも人間はサル類と近い関係にあるのだ。
本書で取り組んでいるのは、その『裸のサル』をさらに掘り下げようとする試みである。
まず取り上げられているのは非言語的コミュニケーションである、ジェスチャーの研究。といっても、(手話を教え込まれたチンパンジーが行うのを除けば)サルのジェスチャーは知られていないので、対象となるのは普遍的な身振りになる。驚くべきことに、これほど多様な文明であっても変わらないメッセージが実に沢山見られるという。意識してとる行動だけではなく、無意識の行動が本能に根ざしているというのは面白い。
嘘発見器などは嘘をつく際には意識せずとも体が緊張する現象を利用しているので、それに近いのかもしれない。
狩りについての章では話題が狩りだけに留まらず、人類進化の舞台はサバンナだけではなく水中生活があったのではないかという主張の当否を論じ、終章ではそれこそ人間独自の行動であるように思われる美術まで類人猿に起源がある可能性が示唆される。話題の広さと意外さが新鮮な驚きをもたらす。
タイトルどおり、人間は他の生物と切り離された天使が姿を変えたものではなくて紛れも無くサルの一員なのだということがよく分かる。進化の不思議とサルの面白さと、そして共通点があるからこそ際立つ人間の独特さに思いを馳せるのに丁度良い本ではなかろうか。
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