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245冊目 にせユダヤ人と日本人
にせユダヤ人と日本人

浅見 定雄著

朝日新聞社 (1986.12)

\459

評価:☆☆☆☆


 ああ、こういう人が博識って言われるんだな、と圧倒される。私も過去の人生で少なからず博識だの博覧強記だの生き地獄だのと言われたことがあるのだけれども、それはあくまで一般人の間での話で、こういった地に足のついた、深くて広い知識とは無縁なのだ。

 タイトルだけから何の話か分かった人は政治的な話に詳しい人だろう。右とか左とか南京事件の論争とか。そう、本書はイザヤ・ベンダサンという架空の日本在住経験のあるユダヤ人をでっちあげて日本人論(という名の再武装論)をぶった山本七平の『日本人とユダヤ人』を批判する本である。一冊丸々他人の批判を読んで楽しいのかと聞かれたら、楽しいと答える。なぜなら大人気ないから。

 これを読むと『日本人とユダヤ人』がいかに決めつけと暴論でできているかが良く分かる。もともと、日本の再軍備や旧日本軍の擁護を目的に設定しながら社会論として書こうとした所に破綻の元があったのか、論旨が一貫していない。その結果として論の前提とする部分までその場の都合で切り替わるといういい加減さ。なぜこれが一世を風靡しえたのか疑問に思わずにはいられないのである。

 ついでに浅薄な知識を振りかざすことで突き当たる壁がある。山本は聖書についてもギリシア語についても実に適当なことを書いているようで、おかげで随分と頓珍漢な文章を眺めることになった。もって他山の石としたいところである。

 で、これらへの批判がまた容赦ない。英語、ギリシア語、日本語、聖書学、日本史、世界史と実に広い分野で徹底的にやっつけている。そのやっつけかたも多くの原著に当たり、論拠をはっきりさせるという見事なもので感心させられる。『日本人とユダヤ人』を評価する人はぜひ一度読んでみて欲しい。その政治的な立場や発言に同意するかどうかは別に、いろいろ学べる点が多いと思う。

 『日本はなぜ敗れるのか』で面白い視点と考えを示してくれた山本七平が、こと政治の絡む話となるとこんな無茶までやっていたといのもまた興味深い話である。政治には人を狂わせる何かがあるのかもしれない。
ノンフィクション | 2006/12/25(月) 23:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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