高島 俊男著
文芸春秋 (1999.10)
\540
評価:☆☆☆
タイトルの付け方が上手い。言葉に関するエッセイなのだが、「言葉についてのことですが」ということと、タイトルから想起される「その言葉の使い方はいかがなものか」という二つの意味が込められている。
これで内容についてもほとんど説明できてしまうわけであるが、評をこれで止めてしまうのは余りに手抜きなのでもうちょっと。
漢籍、中でも論語や戦国策、史記、唐詩などは昔の教養だったこともあってそこから採られた単語や成句は沢山ある。また、漢字の意味は日本語だけからは追いかけることができないのは当然で、中国で使われていた意味を知り、それが日本に入ってきてどのように受け入れられ、変質して来たのかを把握しなければ言葉の正しさは論じられない。漢籍に関する深い知識を有することは日本語を論じる上での欠かせない能力といっても過言は無かろう。
思うに、著者は漢籍についての深い知識を有する最後の世代に属しているのではなかろうか。深くて広い知識を縦横に駆使して言葉の怪しげな使い方に異議を唱えるエッセイはやはり面白い。これが浅薄な思い込みにのみ基づいていたら興ざめなのだが。
そしてもう一点、本書の魅力を高めているのは、著者の確固とした信念が一本筋を通していることにある。立つところが固まっていることは視点のブレをもたらさない。なので、主題の絞られていないエッセイでありながらどこか筋が通っているように感じられる。言葉へのこだわり、とりわけ日本語への愛情を感じさせられる一冊。
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