高柳 先男著
筑摩書房 (2000.6)
\1,260
評価:☆☆☆
はっきり言って、タイトルに偽り有り。これを読んでも戦争についての理解はあまり深まらないでしょう。もし戦争の原因や展開、抑制方法を知りたいのであれば、多少専門的になるが『戦争』の方がずっと優れた本だと思う。ただ、この本が『戦争』と異なるのは話が戦争にのみ特化されておらず、ODAのあり方についても提言されていることか。
本書ではまず平和学というのはどのようなものかということから説き起こし、冷戦と冷戦を支えた理論的背景、第三世界の軍事化、アイデンティティを巡る戦争、開発主義、印パ核実験、コソボ空爆に見られるNATOのあり方と話題が多岐に渡っている。
これだけの話題を取り上げながら本文は200ページ足らずの薄い本なので、一つの話題をあまり深くは掘り下げていないが、多くの話題を眺めることができるという点ではお得かもしれない。特に、印パの核実験の話題などは北朝鮮を巡る緊迫した事態もあることからなじみやすいのではなかろうか。
ただ、やはり薄手の本ということで私にとってはちょっと物足りない。アイデンティティの戦争として旧ユーゴスラヴィアの分裂とそれに伴う地域紛争が取り上げられているが、『ドキュメント戦争広告代理店』で描かれたようなアメリカにおける情報戦が決定的な影響を与えたことなどは触れられていないことが残念である。
二次大戦におけるゲルニカや重慶の爆撃から広島・長崎を経て今も正当化がされ続ける空爆について、コソボを例に挙げている。ここではNATOの存在意義を示すための爆撃を指摘する。もとより評者にはその真偽を確かめる術は無いが、アメリカにしても欧州にしても軍事的な存在感を示すということはタイミングもあり方も難しいものなのだろう。
で、これだけ眺めてきて、では平和に対して具体的な提言があるのかというと、そうでは無いような気がする。戦争と、持続可能な発展と、という観点で様々な事例を取り上げているような気がしてしまう。平和は大事ですよ、というような感性に訴えるだけの無意味な平和愛好家とは一線を画していてしかるべき組織がしかるべく軍備を持つことに批判はしていないので、立地点が現実的で掘り下げればもっと面白くなっただろうと思うと残念である。
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