杉山 正明著
日本経済新聞社 (2003.1)
\900
評価:☆☆☆☆
遊牧民族の歴史を解き明かすのは大変な困難を伴う。農耕民族と違って定住するわけではなく、文字も持たなかった人々の記録は、定住して文字を持つ人々に頼らなければならない。となると、強者であった遊牧民に支配された層が書く歴史という構図ができあがり、必然的に怨みや恐怖が過剰に描かれることになる。おまけに支配者たちが活動するところには記録者が行かないので、動的な生活のほんの一部しか取り上げられないということになる。
そんな、考えてみれば当たり前のことを本書の指摘をみるまで気がつかなかった私は相当に鈍いのだろう。そんな鈍い私にとって、遊牧民を中心に据えた本書は視点の新鮮さと東西の歴史をつなぐダイナミズムに溢れ、読むのが楽しかった。
遊牧民族が生活の中心としたのは中国の北、満州周辺から遥かモスクワを越え、中東、ヨーロッパにまで至っている。遊牧民族の建てた国々の興亡、その背景にある離散集合の仕組みや集団の営みを知ることで、西欧文明が世界を支配する前の時代に、既にユーラシアには世界帝国が確かに存在したことを納得するようになるだろう。
世界史の授業で聞いたアヴァール人だとかマジャール人だとか中国史で欠かせない匈奴や鮮卑、モンゴルについて今までと違った目を向けられるようになったと思う。
ただ、良くも悪くも著者の想いが強く出すぎているように思う。自分の専門に熱意を抱き、それを上手く伝えるという点では成功しているかもしれないが、筆が走りすぎているように感じられて一歩引いてしまうのは否めない。そこがちょっと残念。
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