マーク・エイブラハムズ著 / 福嶋 俊造訳
ランダムハウス講談社 (2005.8)
\1,995
評価:☆☆☆☆☆
世の中には奇想天外な研究をしている人が沢山いるということを知らしめてくれる、あの『イグ・ノーベル賞』(この本の書評はこちら)に続編登場。以前と同じくらいのパワーを持っての復活は心から嬉しい。
今回
ニワトリは見た目の美しさで人間を選ぶということの実証
古代の彫刻と実際の人間では陰嚢の大小が左右逆になっていることの実証
ジッパーにペニスが挟まった患者に対する適切な処置法を解説した医学論文
カラオケの発明により、人々が互いに寛容になることを促進した日本人
ニワトリの羽の抜け方によって竜巻の風力を測定するのは、思われているほどには意味がないことを実証した研究
人々が検尿の際にどんな容器で持ってくるかを克明に調査した医師
片方の鼻が詰まっていると脳の働きが良くなることを証明した理論
これらは単純に笑い飛ばすことができない側面を含んでいる。むしろ考えさせる(けど同時にクスリと笑えてしまう)研究としては、「シャワーカーテンはなぜ内側に膨らむのかという謎に物理学的に迫った研究」、「経済的に困窮すると歯周病のリスクが高くなることの実証」、「兵士が戦場に配備されると便秘になる確率が極めて高いことを示すデータの解析」、「ロンドンのタクシー・ドライバーの頭脳は一般の人よりも発達していることを実証した研究」なんていうのはその例だろう。
ロンドンのタクシー・ドライバーに関しては、空間の記憶をつかさどる海馬が明らかに大きくなっているとのことで、脳の可塑性につてい大変興味深い事実を提供してくれていると思う。
考えさせ、同時に笑わせる。それは困難なことに違いない。一見するとジョークだが、その真意はただ莫迦な研究を笑うことにあるわけではない。こういったジョークの奥底にある探求心こそが科学を進めてきた原動力だろう。だからこそ、イグ・ノーベル賞の授賞式にはノーベル賞の受賞者たちまでが参加しているのだ。
ところが、中には明らかに揶揄が含まれている。それがまた面白いという人にはもうたまらない。それはこんな研究である。
「ニコチンに中毒性はない」と議会で証言したタバコ会社のCEOたち
核兵器を利用して、一触即発の平和を築いたインドとパキスタン
低温核融合の成功と錬金術の成功を高らかに宣した科学者
ブラック・ホールによって地獄の位置が特定できることの発見
エイリアンによる人類誘拐について詳細な実録をまとめ、世界に警告を発した大学教授
確かに考えさせる点を含む研究でなら受賞したいけど、こんな理由で受賞するのはやだなぁ、というのが沢山ある事がわかってもらえるだろうか。そのほか、フランス現代思想が科学用語を濫用し、そのことによって権威を高めようとしている現実を批判したソーカルのこと(『「知」の欺瞞』に詳細な経緯が載っている)や、『聖書の暗号』(オカルト本なのでリンクはしません。興味があれば探してください)なども取り上げられている。日本でのと学会の活動に近い点もある。
こういった知的なパロディーが好きな人にはたまらない一冊だろう。前著と同様、まとめて読むと疲れるのは間違いないので何章かずつ読んでいくとしばらくの間、笑いに困ることはないのではなかろうか。
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