ロルフ・デーゲン著 / 赤根 洋子訳
文芸春秋 (2006.6)
\720
評価:☆☆☆☆☆
多くの人が興味を持ち、心地よいと感じていながら開けっぴろげには語ることが出来ないことがある。性の世界、それもオルガスムスについてである。
なぜ男の方がイクのが早いのか、女はなぜしばしば達したふりをするのか、男と女ではどちらが快感を得ているのか、セックスの後の心地よい眠気はなぜあるのか、といった身近に体験する話題から、動物のマスターベーションおよびマスターベーションの利点、オルガスムスに関する脳科学というように、大変に幅広い話題を扱っている。
一般に誤解されているテーマとして、フロイトの影響で広まったヴァギナ・オルガスムスというものは存在しないこと、論争の続くGスポットに関しては解剖学的にそれに対応する器官は見つかっておらず、科学的な審査には耐えられないこと、女が快感を得るには女性上位が適していること、平均余命から見た最適な相手の数(浮気性の方には残念なことにその数は1である)、セックスが健康をもたらす、などを俎上に上げているので読んでいてどんどん興味が沸いてくる。
性と性のもたらす快感についてここまで本格的に多角的かつ徹底的に論じているという点で本書は非常に貴重である。それどころではなく、論じにくいテーマを科学的に解明しているところも面白い。私が特に興味を引かれたのは、禁欲は抑鬱や自殺傾向などの悪影響を引き起こすが創造力など良いことはなにも引き起こさないということ。
考えてみれば、セックスは必要なものとして進化してきた。そして、生物をセックスに向かわせる報酬として快楽も共に進化してきた。この快楽は生きるのに必要なこととして組み込まれているとしても全く不思議は無い。
男は量、女は質を問うようで、性の満足感と人生の満足感はかなり一致するとのこと。快楽をただ貪るのではなく、中世キリスト教のように性を排除しようとするのでもなく、性と快楽がなにをもたらしてくれるのかを正しく知ることで、より豊かな生活を送ることが出来るのではなかろうか。
本書を手に取ったのは、著者と訳者が『フロイト先生のウソ』のコンビだったから。フロイト〜に負けずに面白い本であった。洒脱で違和感の無い翻訳は相変わらずで、読んでいてとても楽しかった。声を上げて笑ってしまう箇所も随所にあるので周りに人がいるときには注意しましょう。
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