キャサリン・エリソン著 / 西田 美緒子訳
ソフトバンクパブリッシング (2005.7)
\1,680
評価:☆☆☆☆☆
女性は妊娠すると頭の回転が遅くなる、という話を聞いたことがないだろうか。その現象にはマミーブレインという名前まで付いている、常識のような位置づけらしい。
ところが、本書によると女性は出産を経て賢くなる、という。妊娠に伴ってホルモンバランスは大きく変動し、その結果として行動や認知に少なからぬ変化が訪れる。脳の活動にも一時的な、また永続的な変化が起こるとも言う。
動物実験の結果では、妊娠出産したラットは記憶力が向上し、子のために危険を冒すことも厭わなくなる。そしてこの現象は人間でも同様に見られる。さらに、マルチタスクの能力は上がり、自制心も磨かれる上、子育ての経験は職場でも活かされるというのだからすごいものだ。
確かに。妊娠し、出産した妻は、科学だの数学だのといった話題には以前に輪をかけて興味を示さなくなった。しかし、子供の状態については実に的確で細やかな記憶と気配りを発揮し、家事も遺漏なくこなしている。
積極的にコミュニティを構築し、子供に最適と思われる環境を整備している。女性というよりも、母の賢さというのは確かにあると思う毎日である。
出産に秘められた進化の奇蹟と言っていいかもしれない。その奇蹟を起こすのは子との密接な触れあいだというのだから、しばらく密着して暮らすだけで十分に奇蹟は起こる。妊娠を予定している方、出産を控えた方、親になった方には参考になることが多いだろう。
なお、これと同じようなことは男性にも起こるらしい。生まれたばかりの自分の子を強く抱きしめる、そこから男も親としてのスタートを切り、変わっていくことが出来る。脳は可塑性に富んだ、可能性を秘めた臓器なのだから。子育ては煩わしいものではなく、自分を成長させるものと認識を変えさせる良書。
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