遠藤 秀紀著
光文社 (2006.6)
\777
評価:☆☆☆☆
人間がどうしてこのような形をしているのか。また、それによってどんな利点と欠点が生じているのか。
その謎を明らかにするには二つのアプローチがあろう。一つは分子生物学。こちらの方がより思い浮かべた方が多いのではないだろうか。もう一方は、人間と人間以外の生物の行動及び解剖学的な所見を比較することである。本書で行っているのは後者の方法。
人間に限らず、現生生物は進化の過程でそれぞれのが直面した環境に合わせて体を変化させてきた。その結果、ある者は発達した脚と武器となる牙や爪を、ある者は捕食者から身を護る鎧や警戒装置としての目、逃走するための脚を身に付けてきた。
しかし、進化は決して遥か彼方の理想の姿を追い求めてきたわけではない。行き当たりばったりで、使えるものなら何でも使う、というのが基本姿勢であった。
そんな事実を、多くの証拠から説明している。たとえば、空を飛ぶための手段として、翼竜、鳥、コウモリと異なる生物が進化を遂げてきたが、その進化戦略はそれぞれ全く異なる。その解剖学的な違いは知的好奇心を大いに刺激する。
著者が、そして我々が最終的な目的として興味を持つ人体もその場しのぎの進化の寄せ集めである。四足の動物がただ立ち上がっただけではなく、多くの設計変更があった。その証拠を、専門用語をほとんど用いずに平易な言葉で説明してくれているところが親切で、面白さを増しているポイントだろう。
解剖から得られる所見によって、海で発生した太古の生物がいかにして人間まで至ったのか、進化のプロセスの好い加減さと面白さを実に上手く表現しているように思う。我々の体に、数億年に渡る生物の進化の軌跡があるというのはそれだけで興奮するし、その秘密を覗き見ることができるということは大変な知的好奇心を刺激すると思う。生物の体にはまだまだ沢山の不思議が隠されていることを実感させてくれる一冊。
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