磯淵 猛著
文芸春秋 (2005.8)
\714
評価:☆☆☆☆
きしさんのゆっくりと世界が沈む水辺でにて紹介されていたこの記事を読んで面白そうだから購入した本。紅茶好きの私にとってはタイトルだけで興味が沸くのを抑えられなかった。
本書は紅茶が緑茶から誕生した経緯から、イギリスの貴族に好まれるようになり、やがて大量生産の時代を迎えて多くの庶民の嗜好品となり現在に至るまでの歴史をまとめている。
紅茶と世界史のつながりで言えば、アメリカの独立戦争の契機となったのはボストン茶会事件や、中国との輸出入バランスを適正にするために仕組んだアヘン戦争が有名で、それはもちろん知っていたのだけど、イギリスが植民地でどのように紅茶栽培を行ってきたのかについては全然知らなかった。紅茶を巡って世界は様々な動きをとってきたのだ。嗜好品の少なからずがそうであるように。
そういった、紅茶そのものの歴史、そして紅茶に振り回された人間の歴史そのものも面白いのだが、本書を更に面白くしているのは、著者の紅茶への愛着だろう。
なにせ、様々なところに取材に赴き、その地で飲まれている紅茶を味わって、その感想まで述べているのだから、紅茶を好む人間には羨ましい話が沢山ある。そしてまた、紅茶が様々な風土を持つ地域で、その地域に見合った飲まれ方をしているのを見ると嗜好品の需要の違いが見えて面白い。酒が食べ物とともに進化したのと同じように、紅茶もまた地域の気候や食生活と密接なつながりを持っていたのだ。
そして最後は紅茶の科学的に正しい入れ方についてである。紅茶好きのイギリス人による、イギリス人らしいユーモアの混じった話である。ミルクティーを作るときには、先にミルク→紅茶の順で注ぐのか、あるいは逆なのかを科学的に判定したイギリス王立化学会が発表した「完ぺきな紅茶の入れ方 」についてはご存知の方も多いだろう。好まれているからこそこんなユーモアまで生み出す紅茶の世界を覗くことができる一冊。紅茶好きは必見だろう。
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