白帝社 (1995.4)
\1,890
評価:☆☆☆
前後の時代と比べて三国志の時代は圧倒的な人気を誇る。何故か。英雄豪傑が合従連衡し、死闘や謀略を繰り広げ、裏切りや忠誠など心に残るエピソードが多いことはその一因ではあろう。しかし、前後の時代だって同じだ。人間のやることなので、そう大きな違いは無い。
人間模様ではないとすると何が残るだろう。
私が思うに、前後の時代のどうしようもなさが三国志の英雄たちの活躍をいっそう魅力的にしているのではないだろうか。
後漢末は幼帝、暗君が続き、漢王朝は末期症状を呈していた。外戚、宦官、知識人たちにも衰えていく漢を救う力がなかった。地球規模の寒冷化が襲っていたことを考えればその能力不足の一部は責められては酷かもしれないが。
では、三国志後の世界はどうか。乱世を制した晋は、しかしたちまちのうちに権力争いによって国土を荒廃させてしまう。呉平定後、後宮に納めた大量の女官のうち、誰の相手をするのかヤギに決めさせたのが晋の開祖・司馬炎。女官たちは寵を得るため、自室の前に盛り塩をしてヤギが舐めるために立ち止まるようにしたという(料理屋などで見かける盛り塩はこれを起源とする)。それでも司馬炎の時代はマシだった。
続く恵帝は無能で暗愚。たちまち皇后や皇族が血で血を洗う抗争を始める。所謂、八王の乱により司馬一族の主だった者達は死に、国土は荒廃、弱体化した北辺には異民族が流入し、晋は東遷を余儀なくされる。通常、東遷前は西晋、後は東晋と呼び分けられている。
これを読んだだけで、不人気なのも頷けるだろう。ようやく乱世を収束させたと思ったら、すぐに荒廃が続くのだから。
そんな不人気な晋王朝の盛衰を描いたのが本書。司馬一族がいかにして魏王朝を乗っ取ったのか。皇帝たちはどのような振る舞いをしたのか。八王の乱の経過と収束の状況はどうだったのか。それらをとても丁寧に描き出していると思う。
ただ、一冊でまとめるのは無理があるように思う。なにせ、八王と言われても記憶にとどまらないほど短期間に権力が移り変わってしまう。しっかり記憶に刻むには何度か読み直さなければ駄目だろう。
著者の問題としては、悪文がいくつか目に留まる。著者が分かっている故の説明不足と思われるのだが、読者としては判断に迷う文章が散見されたのは残念であった。
だが、西晋の時代をコンパクトにまとめてある意欲作ではあると思う。三国志のその後を知るには丁度良いかもしれない。
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