ジョン・W.ダワー著 / 猿谷 要監修 / 斎藤 元一訳
平凡社 (2001.12)
\1,680
評価:☆☆☆☆
日本側は相手を鬼畜と蔑んだ。一方の相手側は日本を野蛮なサルと連呼した。
何の話かと言うと、太平洋戦争における日米の罵り合いである。太平洋戦争は確かに人種戦争としての側面を含んでいたのだ。
アメリカが枢軸国と戦争に入った途端、日系人だけが財産を奪われてゲットーに叩き込まれた。ドイツ系、イタリア系の移民はそんなことはなかったのに。その際、「毒蛇は、どこで生まれても毒蛇である」と言われたことが記録に残っている。
そんな相互のプロパガンダ戦を通して、太平洋戦争の持った人種戦争の面に強烈な光を当てたのが本書。戦後生まれの身には想像もつかないほど、相互に罵倒し、軽蔑し、殺しあった姿が克明に記される。その生々しさに、たじろがずにはいられない。
日本軍の捕虜を輸送中の飛行機から突き落とし、切腹したと報告するオーストラリア兵。降伏を望む日本兵を、「死ぬまで戦え」と押し返して戦死させるアメリカ兵。白人が確かに持っていた有色人種への蔑視を強く感じさせる。
だが、一方の日本も負けてはいない。日本の純潔さを誇り、アメリカは惰弱で凶悪だと言い募る。人種差別されていると言いながら、自らの支配地の先住人たちとは決して平等と考えなかった、その矛盾。
日本のイメージは、劣ったサルから開戦当初の勝利を背景に超人へと変貌することも明らかにする。その切り替えの極端さは、しかし、日本人を彼ら白人とは違う存在であると捉える立場は変わらないのだ。
同じことでも自分たちがやれば崇高、立派となり、相手がやると野蛮となるダブルスタンダード。相手を非人間化し、単純化する姿勢。それらは驚くほど日米の間で共通していた。互いの軍隊が犯した、胸の悪くなるような事例を豊富に取り上げながら示す事実は、重く、苦しい。だが、学ぶことは多いだろう。不必要な相手の軽視が何を生んだか、日本は60年前に身をもって知ったのだから。
類書としては『戦争プロパガンダ10の法』がある。こちらの方が記述が大人しく、安心してよめるだろう。できれば併せて読んでおきたい一冊。
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