ロバート・ベア〔著〕 / 佐々田 雅子訳
新潮社 (2006.1)
\860
評価:☆☆☆☆
CIAと聞くと、やはり諜報世界の雄として想像しえないほど各国の事情に通じ、様々な工作を行っている姿が思い浮かぶ。その知名度と存在感から陰謀論やフィクションの舞台にもなっている。陰謀論の真否はともかくとして、それだけ注視されるということは、それに相応しい力があるからだろう。
そんなCIAで活躍したロバート・ベアの怒りに満ちた告発である本書を読むと、我々が抱くイメージが過去の残滓に過ぎないことが分かる。あの911も、CIAには食い止める能力も気概もなかったというのだ。
本書はロバート・ベアがいかにしてCIAのエージェントになったのか、に始まり、中東などでの活躍をつづった後、失意のうちに辞職するまでの歴史である。フセイン暗殺未遂事件など、手に汗を握るようなシーンもあればワシントンでの政治闘争もあるのでエピソードとして面白いものが沢山ある。
しかし、驚かされるのはCIAはいつしか官僚主義に陥っており、国民の命や安全よりも石油メジャーの利得を守らんとするようになっているということだ。いつの間に、諜報界の巨人は官僚主義の権化と化してしまったのか。
それを語るのに、著者は最適な位置にいる。CIAが理念を持って危険にも立ち向かった時期に入局し、図体が大きいだけのただの政治勢力になってしまう姿を目の当たりにし、その変貌に付いていけずに離れることになったのだから。
数多のスパイ小説より面白く、ワシントン情勢を語るノンフィクションに劣らず現実を知ることができる。諜報の世界を覗き、陰謀と破壊と力と政治の入り乱れる様を横目に見ながら冒険小説をすら上回るシーンを目の当たりにできる。一冊でいろいろな楽しみ方ができる本である。
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