アルフレッド・W.クロスビー〔著〕 / 小沢 千重子訳
紀伊国屋書店 (2006.5)
\2,940
評価:☆☆☆☆
映画”2001年宇宙の旅”のあまりにも有名な冒頭部分。類人猿が骨を棍棒代わりにして相手を打ち倒したのが、人類の歴史における道具使用の始まりとされた。その骨は高々と投げ上げられ、それが、宇宙ステーションへと変わっていく。
かの象徴的なシーンは、遠い歴史の彼方で初めて使った道具がやがて(残念ながら現時点ですら到達していない程の)最先端科学の粋である宇宙ステーションに結実するという印象を与えた。
言ってみれば、本書はあの骨を投げるしかできなかった類人猿が進化の末に宇宙の彼方までロケットを飛ばすようになるまでの歴史を追ったものである。
物を投げることと火を自在に扱うこと。人類はこの二つの技術をどのように発達させてきたのか。その謎を解くために、まずは投石に隠された進化の秘密や投石の持つ意外なまでの威力と、恐る恐る火を身近なものにしていった歴史が平行して語られる。
人類の歴史のほとんど全ての期間、この二つの技術はさほど密接につながっていたわけではない。もちろん、争いの場面では火をついた棒を投げるようなシーンもあったかもしれないが。
しかしながら、技術が急速に進化するようになると投げられる石のサイズはどんどん大きくなり、やがて火薬を用いるようになる。戦争とテクノロジーの密接な関係はその究極的な形としてナチスドイツのV-2ロケットや原水爆といった強大な破壊兵器となっていく。
投石の歴史も火の歴史も、戦争の歴史なのだ。この二つの技術は戦争がどうエスカレートして行ったか、それを語るのに最も相応しい手段である。
だから、本書でも少なからず血なまぐさい話に触れている。
しかし、人類は戦争にだけ明け暮れていたわけではない。冷戦が背後にあったのは事実とはいえ、好奇心は月へ、金星へ、火星へ、木星へ、そして遂には遥か外宇宙までも到達する探査機をも作り上げたのだ。ものを投げるその究極の姿こそがロケットとも言えるくらいなのである。
この二つの技術を、古今から現在まで縦横に集めて構成された本書はとにかく読み応えがある。テクノロジーの発達史としても楽しめるし、それを超えて人類の歴史とも言える。技術の発達には戦争という暗い背景があったのは間違いないが、それを見据えつつ人類が何を成し遂げたのかを知るには絶好の書ではなかろうか。
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