秦 郁彦著
文芸春秋 (2005.12)
評価:☆☆☆
歴史上のことで多くの論争があるのは、その一例として邪馬台国論争を見れば分かるだろう。しかしながら、そういった古代史が(ほとんどの場合には)学問的なものであり、少々の感情的な含みがあったとしても著しく学問的な領域からはみ出すことはない。しかし、そうではない歴史分野が、確かにある。現代史である。
というのも、現代史は必然的に現時点での世界と非常に密接な関係を持つため、どうしても政治が入り込んでくるためである。その結果、たとえば南京事件の被害者数では、中国側が公式に掲げる30万人に対して国内では0(!)から10数万人説までがある。一部に中国側の主張をそのまま取り入れる向きもあるが、実態はどんなに多く見積もっても10万まではいかないと思われる。
で、被害の規模を議論しようとしても裏に政治的な思惑があるものだからどうにもならない。言い逃げ、証拠の捏造、隠蔽なんかは当たり前。靖国問題でも慰安婦問題でも、果ては教科書問題でもでるわでるわ。本書ではそんな問題の数々に、事実関係がどうなのかを丁寧に示しながら反論する。著者の主張の部分については全面的に賛同はできなくても、こういった込み入った問題に対して常に事実で迫るのは見事なことだと思う。
何事も、論じるにはまず知ることからはじめなければならない。イデオロギーや政治的な嗜好が入り乱れる論点こそ、その重要性が上がると思う。そして、現代史の背後で鵺のように振舞う人々がいるということを知っておくことも利点になるだろう。
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J.K.ローリング 作
静山社 (2006.5)
評価:☆☆☆☆☆
発売日にニュースになるのが恒例となったハリー・ポッターシリーズの6巻目。出会った頃にはまだまだ子供だった彼らも今ではもう少年とは言えなくなっている。それでもロン、ハーマイオニーとの友情は続いており、悪ふざけがすきなのだけは変わらない(もちろん、ハーマイオニーは除く)。
ウィーズリー家の長男、ビルがフラーと結婚することになってすっかり荒れているところでハリーは二人と再会する。前の巻の最後でシリウス・ブラック(念のため、ネタバレ反転)を喪ったハリーはこれまで通りに無邪気に楽しむことはできない。物語は佳境を迎え、もう学校を舞台にした明るい冒険物語では済まなくなっている。
そんななかで暗躍するドラコ・マルフォイ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの恋、ハリーを以前より近づけ、自分の知ることの全てを教えようとするダンブルドア、と目が離せない展開が続く。マルフォイの狙いは何か。ダンブルドアは何をしているのか。楽しいシーンはずいぶん減ってしまったけれど、最終巻たる次巻につなげるのには非常に上手くいっていると思う。これまで読んできた人は間違いなく楽しめるだろう。
一言で片付けてしまえばハリーがヴォルデモートに立ち向かう決意を固める巻、となるだろう。予想外の楽しみはあまりないが、最終戦の幕を開くに相応しい、読み応えある物語だ。ハリーの決意がどのような結末を迎えるか、今から楽しみである。
それにしても、ネタバレしないように感想を書こうと思うと、そりゃあもう難しい。その点ノンフィクションは楽なわけで、小説を中心に面白い書評を沢山書ける人は尊敬に値するといっても良かろう。といいつつ小説はほとんど読まないのだけど。
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