ジュリアン・ポール・キーナン著 / ゴードン・ギャラップ・ジュニア著 / ディーン・フォーク著 / 山下 篤子訳
日本放送出版協会 (2006.3)
評価:☆☆☆
タイトルで奇をてらったのが失敗したとの感がぬぐえない。うぬぼれに関しての本というよりも、うぬぼれを含む自己認識が脳のどこにあるのかについて、類人猿から人間まで幅広いデータに基づいて論じている。
脳科学についての本を読んだ方なら知っていることも多い。そういった点で、最新の脳科学本だと思うと価値は下がる。むしろ、脳科学と心理学の接点を、どちらの研究成果も用いて説明しているところに価値があると思う。
まず、チンパンジーやサルが鏡を見てどう反応するか、を追いかける。我々は毎日のように鏡を見て何か作業を行う。人によっては化粧だったり、別の人にとっては髭剃りだったり、はたまた一部の人にとっては科学の実験だったり。しかし、簡単に思える作業であっても、実は鏡に映っているのが自分であることを認識していなければならない。そして、鏡に映るのが友人でもライバルでもなく、自分であるということを知る必要があるのだ。
物言わぬ動物が自分を認識しているのかどうかを探った後は、人間が対象となる。脳についての面白さは、紹介される事例の面白さと言っても良いくらい興味深く、面白いエピソードが続く。子供の認知の発達や、アスペルガー症候群は自己と他をどう認識するか、フィネアス・ゲージのように脳の一部の機能を失った人々の奇妙な振る舞いなど、人間の不思議さが詰まっている。
そして、ついに自分という概念が脳のどこにあるのかという本書の究極の答えにたどり着く。意外なことに、劣位の脳とされる、右半球である。他の機能と同じく、自己は右脳だけに局在するものではないのでまだまだ研究は続くだろうが、これまでの定見を覆すような発見の数々はそれだけで面白い。
ただ、残念なことに訳文が悪いのか、文章で引き込まれることがない。タイトルの付け方にしても、ちょっとセンスがないような気がする。一般人が面白く読むにはなにかが足りない。画竜点睛を欠く、と言ったところだろうか。
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