米原 万里著
文芸春秋 (2003.6)
評価:☆☆☆☆
元ロシア語同時通訳者の米原万里さんによるエッセイ。その職業柄、実に面白い話が沢山あるので読むたびに笑ってしまう。そして、ロシアだからこその話しだよなぁ、としみじみ感じさせる。
今回面白かったのはこんな話。アメリカの軍事専門家が、ロシアの工場から出荷された核弾頭が、出荷伝票では36なのに納品伝票では32しかない。4発の核弾頭はどこに消えたのか。我々だったら恐怖に足がすくみあがるところだ。なのに、ロシア人研究者はのほほんと、わが国では水増し報告は当たり前。冷蔵庫の出荷数も水増しされる。核弾頭でも同じ話、などとにわかには信じがたいことを言い始める。計画経済の名残がこんなところにも。
常識なんてものは社会を共通とする人々が抱く共同幻想なんだから、違う社会の人には通用しない。であるからには異文化と接する人々は、常識の衝突が日常だろう。おいしいとこだけ集めたのだから面白いのは当たり前!である。
なお、通訳ソーウツ日記:スペースアルクで米原さんを含む通訳者たちの文章を読むことができますので興味を持った方はぜひどうぞ。
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ハリー・G.フランクファート著 / 山形 浩生訳 解説
筑摩書房 (2006.1)
評価:☆
刺激的なタイトルに誘われて、買ってはみたものの、あからさまな失敗だった。実質50ページちょいでそれと同じくらいの訳者解説。それで\1300は高すぎる。
いや、それでも内容が面白ければ良い。しかし、実際にはウンコな議論というのの対象をはっきり定めてくれるわけではないし、実生活上で出会った場合の見分け方にもならない。
切り口によってはいくらでも面白くできるんじゃないかと思われるのに、こうなってしまったのは残念。ウンコの連発にうんざりしたのは秘密。
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パオロ・マッツァリーノ著
二見書房 (2005.11)
評価:☆☆☆☆☆
前作の反社会学の不埒な研究報告と同様に、世にはびこる”いかにももっともらしい話”が実はどれほどいい加減なのかを徹底した調査で描き出しながら、読み物としても面白い作品に仕立て上げるのは見事の一言。
堅苦しく言ってしまえば、メディアリテラシーを持てなんてことになるんだろうけど、そんなことに付き合える人はそうそう多くはない。なにせ、社会問題は沢山あるのでそのすべてに対して興味を持ち、情報をいちいち取捨選択なんてできない。
だから、Z新聞社の調査によると景気が回復したと思う人はXX%で、とか言われるとそのXXという数字で景気が回復したのかしてないのかつい判断してしまう。だいたい、そんな記事なんて面白くないのが相場だから数字だけ見て中身は読み飛ばすことも多いし。
そうやって我々の常識というものが形作られていく訳だ。
ところが、そうやって出来上がった常識は、実はリアルな世の中を反映していない。だから、きちんとした調査で自分が持っていた常識と世界の現実とが食い違うこともでてくる。その食い違いを面白おかしく書くのは大変な労力だろう。だから、この手の統計だのなんだのといった本はつまらないことが多い。
ところがこの本は別格である。それは本当なの?という疑問に細かな数字を出して丁寧に反論していながら、丁寧さを感じさせない。その理由はおそらく、バックボーンとなる細かな数字を集めるのにかかった労力や時間と同じかそれ以上を、読者が面白いと思うように書くことに費やしているからではなかろうか。
とにかく、自分の常識がひっくり返される面白さは抜群。手にとって見ることを強くお勧めします。
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