池田 清彦著
筑摩書房 (2006.2)
評価:☆☆☆☆☆
ある人々はいう。人類の排出した二酸化炭素によって地球の温暖化が進んでいる。早急に対処しなければ海面が上がり、都市が水没してしまう。またある人々はいう。ダイオキシンは史上最強の毒である。これがゴミ焼却炉から大量に出ているのは問題だ。ダイオキシンが出ないようにしろ。こんなことも言われる。ブラックバスは日本の生態系を破壊する害魚だ。全力を持って駆除すべし。これらの問題は究極のところ自然保護につながる。自然は守るべきだから一生懸命協力しよう。
だが、ちょっとまった。その前提と論理は正しいのか?温暖化もダイオキシンも見えない恐怖である。見えないなら、ますます論理には気をつけなければならない。
今は地球温暖化が問題にされるが、ほんの数十年前までは地球は寒冷化している、というのが通説だった。だれもが迫り来る氷河期を心配していた。現在の状況とは正反対だ。なぜこんなことになるのか。それは、現在の科学ですら気象はあまりにも複雑すぎて扱うのが困難だから、だ。二酸化炭素が増えると温室効果でガンガン温度が上がって地球の大ピンチだ!というあまりに単純なモデルは、成り立たない可能性が極めて高い。二酸化炭素の温室効果がどの程度ありうるのか。ヒートアイランド現象で都市部の気温が上がっているのは間違いがないとしても、それは直ちに地球全体の温暖化につながっているのか。このあたりは冷静に判断されなければならない。
もちろん、これまでの研究で10万年以上の気象変動を追うと、二酸化炭素濃度と温度が連動しているのは事実である。しかし、現時点では「二酸化炭素が増えたから温暖化した」のか「温暖化したから二酸化炭素が増えた」のかははっきりしていない。
そして、地球の気候にもっと影響を与えるものがある。熱の補給源である太陽だ。太陽活動と気候の変動ははっきり関連付けられている。今がたまたま太陽の活動期だから何箇所かの平均気温が上がった、という可能性が高いのだ。
ダイオキシンにしても、騒がれすぎな問題である。通常の食品に含まれるダイオキシンだけで致死量を摂取しようとすると、途中で胃が破裂してしまうだろう。なにしろ、あの”所沢の高濃度ダイオキシンほうれん草”ですら、100トンほど食べないとダメなのだから。
そういった、恐怖を感じる前に持っておくべき基本的な知識を簡潔にまとめてあるのがすばらしい。そしてまた、環境問題を語る上で避けて通れない話しもしっかりされている。すなわち、カネの話だ。
たとえば、二酸化炭素を技術的に減らそうと思えば可能である。しかし、それには膨大な投資が必要だ。では、その投資をしただけの見返りがあるだろうか。そこをもっと考える必要がある。環境は可能な限り乱さないのが一番なのは論を待たない。しかし、カネは無尽蔵にあるわけではない以上、十分な安全性を保てるレベルで妥協点を見つけなければならないのだ。
そんな冷静な視点を与えてくれる好著である。ちょっと挑発しすぎているように見えるところもあるが、そこは挑発されたと思ってさらに問題を深く突き詰めて考えるきっかけにしたらいいと思う。そうすれば、環境問題についてさらに広く深い知識が得られるのではなかろうか。
ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)




