伊藤 純〔著〕 / 伊藤 真〔著〕
角川書店 (1998.11)
評価:☆☆☆☆
昔、中国に三人の姉妹がいた。ひとりは金を愛し、ひとりは権力を愛し、ひとりは中国を愛した。
20世紀を目前にした時期、財閥の娘として生まれた宋家の姉妹はアメリカに学ぶ。やがて父が支援していた孫文と次女慶齢が、孫文の後継者となる蒋介石と三女美齢が結婚することで三姉妹は激動の時代に政治の中枢で生きることとなる。
慶齢は孫文の思想を忠実に引き継ぎ、中国人民のために一生をささげようとする。やがて彼女の行動は共産党とかぶるようになる。一方で美齢は夫を助け、国民党への支持を広く訴える。国民党と共産党の関係によって、姉妹の関係も大きく変わっていく。
日本軍との戦いのさなか、美齢はアメリカで中国支援を訴えて大成功を収める。美齢がアメリカで集めた資金は国民党にのみ回され、国共合作のさなかであっても共産党にはまったく援助がなされないのにいらだつ慶齢。中国最大の権力者・蒋介石の傍にあって権力の絶頂を味わう美齢。
やがて日本は敗北する。対立しながらも抗日という共通の目的を見出しえた時期は終わり、無慈悲な政治の力が三姉妹にも襲い掛かる。国民党は自らの腐敗が原因で共産党に敗北をかなね、台湾に移り、国際的にも孤立していく。求心力を急激になくす美齢。その一方、共産党の非党員でありながら副主席となる慶齢。その慶齢も文化大革命では宋家の一員であることから逃れることはできなかった―――。
宋家の三姉妹の生は、日本との戦争、中国革命を経て現在まで続く中台関係と重なり合っているように思える。政治に翻弄された三人は、全員一時は狙ったものを手に入れた。しかし、政治のリアリズムは彼女らに安寧を許さなかった。客観情勢によって中国を利用するだけの欧米、そしてソ連。共産党政権成立後、三姉妹は一度も相まみえることなく亡くなった。国中心ではなく、政治家中心でもなく、その背後にいた姉妹を中心に据えた視点はとても面白い。彼女らなくしてこの歴史の流れはなかったのだろう、と感じさせる一冊。
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