マーカス・デュ・ソートイ著 / 富永 星訳
新潮社 (2005.8)
評価:☆☆☆☆
数学が話題にのぼることは非常に少ないことに同意をいただけるものと思う。そんな数少ない機会の一つがアンドリュー・ワイルズによるフェルマーの定理(Xn+Yn=Znで、nが3以上の場合にX,Y,Zのすべてが整数の組になることがない)の証明であった。その模様は『フェルマーの最終定理』で余すことなく語られている。それと比べると、実際の学問上の価値ははるかに高いにもかかわらずなかなか語られないのがリーマン予想である。
リーマン予想が語られないのにはそれなりに訳があるだろう。まず、分かりにくいこと。次に、フェルマーの最終定理はフェルマー自身の書いた人を食ったような書き込みや面白い歴史的事実が沢山あるのに比べていまいち盛り上がりに欠けること。
そんな不利な点を抱えながら、それでもリーマン予想には興味を覚えさせるものがある。というのは、これは素数に関する予想なのだ。素数の概念自体は中学生で習うこともあって多くの人はそれがどのようなものなのかは知っているだろう。しかし、素数にも面白い歴史が沢山あることは知らない人のほうが多いのではなかろうか。
そんな素数の世界を多くの数学者たちの営みを通じながら書かれた通史といっても良い。リーマン予想こそ素数の秘密にもっとも肉薄できるものなのである。『フェルマーの最終定理』を楽しめた方にはぜひお勧めしたい。ただ、素人向けに書かれているため若干分かりにくい表現にならざるを得ないところもある。その点でフェルマーの最終定理よりは熱中できなかったのが残念である。
また、素数は現在の暗号を背後で支えているものなので、本書でも一部触れられている。暗号に関して興味があれば『暗号解読』をお勧めする。
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