保阪 正康著
光人社 (2005.3)
\670
評価:☆☆☆
太平洋戦争のイメージではどうしても陸軍=悪の巣窟、海軍=陸軍よりマシとなってしまうのは否めない。大局的な見通しもなく無駄に中国戦線を広げて消耗戦を繰り広げながらもソ連を仮想敵国に軍備を拡張し、やがて無謀な太平洋戦争へ突入する。駐独武官(後に大使)が三国軍事同盟に邁進したことこそ最終的に日本を戦争においやった。政府の統制が全く利かない、そんな組織であったのは間違いない。
しかし、だからと言って陸軍という組織に属した者の全てが大局に立った見地を持たなかった訳でもないし、目先の戦果に釣られて無謀な戦争へ突き進んだ訳でもない。それぞれの立場にありながら、長期的な展望を見据えた行動を取ろうとした軍人も確かにいたのだ。
決して「反戦平和」を唱えたからと言って良識と判断するのではなく、きちんと自分なりの世界観を持ってあの時代を生きた陸軍軍人を取り上げ、彼らがどのような行動をとったのかをおおざっぱに纏めている。彼らの全員が戦争に反対だったということもないし、拡大する戦線を縮小しようと動いたわけでもない。そこには時代の限界もある。だが、だからと言って陸軍という集団を悪の巣窟と乱暴に纏めてしまっただけでは何故無謀な戦争が引き起こされたのかということも分からない。むしろ、良識派の動きが何故政策として結実させられなかったのかという流れを知ることこそ、過去にしっかり見据えていることになるだろう。
悪の陸軍というイメージから脱け出し、戦前・戦中の実像に近づくための入門書としてはとても良いと思う。
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