長谷川 博隆〔著〕
講談社 (2005.8)
\924
評価:☆☆
ハンニバルといえば、『羊たちの沈黙』に出てきた怪人、ハンニバル・レクターを思い浮かべる人の方が多いかもしれない。もちろん、この本はレクターじゃないハンニバルの生涯を大まかにまとめたものである。
ハンニバルは海運国家カルタゴの将軍としてローマと対峙し、第二次ポエニ戦争において大胆で緻密な作戦行動によって多勢のローマ軍を翻弄した名将である。インド象と傭兵を率いてスペインからアルプスを越えイタリアに上陸、連戦連勝しローマの指導者たちの心胆をさむからしめたことが知られている。しかし、知られているのはせいぜいそこまでではなかろうか。
カルタゴの将軍の息子として生まれ、いかにして自らも将軍となったのか。強さの秘密はどこにあったのか。どのように戦い、そして勝利を収めたのか。変転常無き傭兵を率いて遠征し、背かれることがなかったのは何故か。そして、なぜ悲劇的な最期を迎えなければならなくなったのか。
一般書でありながら史料に基づき、できるだけ丁寧に書こうとしているのが伝わってきてとても共感が持てる。確定していないところはきちんとそう書きながら、どの説が説得力を持つのかを説いているところは面白い。
しかしながら、丁寧なのも考えものである。このボリュームの本でそこまで丁寧に書いてしまうと、客観情勢などの記載が少なくなってしまう。一通り分かっている人には良いかも知れないが、私のように碌に知らない者には非常に不親切だと感じられる。加えて、悪文で俄かには意味を飲み込みづらいところが多い。著者にとってはわかりきったことだから書きそびれてしまったのかもしれないが、読者がついて行くのは大変であると思われる。こういったところがなかったらもっとずっと読み物として面白かったのに、と残念に思う。
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