清水 義範著
文芸春秋 (1998.9)
\500
評価:☆☆☆☆
くだらないことを真面目で、なおかつ大げさに書くと面白くなることが多い。清水義範はその事実を熟知している。本書のタイトルにもなっている、『バールのようなもの』はその格好の例だと言えるだろう。
ニュースを聞いていて、宝石店に泥棒が入ったり、金庫が破られたりする際に必ずニュースで言われる”バールのようなもの”とは一体なんなのか。そんなことを考えることがそもそも馬鹿馬鹿しいのにこれを大げさ過ぎるほど真面目に取り組む。その結果、清水義範がバールのようなものの正体を知ることができたかどうかは本書に譲る。清水はこういった技法がとにかく上手い。なぜ故にきちんと調べものをしたのにこんなことになってしまうのだろうかとクビをひねりたくもなるものだ。
念のため。クビをひねる、というのはバカな作者のクビをひねる、というわけじゃありません。
木曽義仲の後半生をユーモラスに書いて見たり、突然若々しくなった老人に隠された秘密を書いて見たり、正月でのんびり過ごす家族や、何が楽しいのかよく分からない老人旅行にでかける人々、緑の窓口での人間模様など普通の人は目を付けないようなところに目をつけること自体、作者が非凡であることを教えてくれる。そこに名古屋人気質が加わるとユーモアになってしまうのだ。
短編集なので、ちょっとした時間に読めるのだが、電車の中で読むことはお勧めしない。くすくす笑って恥ずかしい思いをした私からの、せめてもの助言である。
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