河合 香織著
新潮社 (2004.6)
\1,575
評価:☆☆☆☆
人間誰しも性欲はある。勿論、障害者にだって。しかし、恥ずかしいことに私は本書を手に取るまで障害者の性について存在することに気をかけたことすらなかった。書評で眺めて以来、いつか読まなければと思っていたが、読み始めてすぐに言葉を失うような話に幾つもめぐり合った。
新生児黄疸によって生まれてすぐに脳性麻痺となった竹田さんは、戦後の引き上げ後独学で文字を学んだ。母親からも障害者は恋をしてはいけない、と言われていたそうだ。そんな彼はソープランドに行くことを楽しみにしている。50代で、はじめて女性を抱いた。15年間恋をした相手が、事故で亡くなってから。その相手とは、キスを一度したきりだという。告白すらできなかったのは、自分の体が不自由であることから相手の負担になることを恐れたためだ。麻痺が進み、自慰すらできなくなった竹田さんの、自慰介護から本書は始まる。
竹田さんは15年恋した彼女とのことについて、こういったそうだ。「イチド デ イイカラ カノジョ ト セックス シタ・・・・・・カッタ」
そしてまた、 「おんな の こ と あそびに いきたかった けっこんも したかった こども も ほしかった きょういくも うけたかった でも そう おもうことさえ ゆるされなかった」、と。
障害者には、人としてごくごくありふれた幸せを追いかけることすら許されなかった。いや、今も、許されてはいないのかもしれない。
本書は、障害者たちをとりまく社会状況は勿論、障害者相手に風俗サービスを行う業者や、サービスを受ける障害者への取材、性に対する取り組みで先進的なオランダの事情などについて語ることで障害者とセックスについて大まかに現状を纏め、将来取りうる道を模索している。自ら障害を持ちながら、サービスをする側に回る女性。ボランティアでの性交を試みる男女。サービスを提供する側の思い、そして提供される側の思いは様々だが、どれも読むまでは想像すらしたことがなかったことばかりで圧倒される。
人間は奇麗事だけで生きているわけじゃない。欲求や欲望は誰にだってある。障害者をそういった当たり前の人間として扱わず、箱物だけつくって終わりにする時代はもう終わっても良いように思う。
こういった問題に、正解はないだろう。特別扱いするのでもなく、無視するのでもなく、対等に向かい合っていかなければならない。そういった点で、本書に登場する健常者の女性と障害を持った男性の夫婦が、相手を認め合ってごくごく普通の幸せを掴んでいるようなあり方に、一つの行くべき道があるように思われてならない。
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