ハナ・ホームズ著 / 岩坂 泰信監修 / 梶山 あゆみ訳
紀伊国屋書店 (2004.3)
\2,940
評価:☆☆☆☆☆
どんなものでも細かく砕くことができる。髪の毛の直径よりももっと小さくなった、取るに足らないようなそんな塵が本書の主人公である。塵について語ることがあるのか?そう。沢山あるのだ。
まず、太陽系からして塵が集まってできている。太陽も地球も月も、もとは塵だ。だから、宇宙からやってきた塵を調べれば太陽系の生い立ちが分かる。宇宙の歴史、と聞くとほとんどの人は銀河やブラックホール、もうちょっと興味がある方はグレートアトラクターやボイド構造が思い浮かぶだろうが、塵からも宇宙の歴史に迫ることができるとはなかなか思い浮かばないのではなかろうか。
宇宙の歴史だけではなく、地球の歴史だって塵から分かることが沢山ある。どんな塵があったかを分析すると地球の気候について実に多くの手がかりになるのだ。
塵の集まりであるからには砕けば塵になるのは当然。石が砕けて塵になった砂漠では卵を抱いたオヴィラプトルが砂に埋もれてタマゴ泥棒の汚名を返上するきっかけともなる事件が発生したこともある。サハラ砂漠に吹き荒れる風によって舞い上げられた塵は大西洋を越えてカリブ海のサンゴを死に追いやっている。
かと思えば、火山の際に吐き出される塵によって火砕流が引き起こされる。工業製品を製造する過程では発生した塵によって肺にダメージを与えられる人々がいる。これを読んでいるあなたも、ひょっとしたら杉の出す塵に悩まされているかも知れない。花粉症に代表されるアレルギーは塵と接触することで軽減される可能性もある。
とにかく、紹介しきれないほど実に多様な塵の姿が描かれている。なによりも面白いのは、その多様な塵によって実に多くの事実が明らかになっているということではなかろうか。それぞれのトピックごとにエピソード的な面白さも沢山盛り込まれている上、普段考えたこともないような取るにたりない存在が、突然大きな影響を及ぼしうる存在に化けるという驚きも与えてくれる。
身近にあるものから宇宙の歴史からアレルギーまで多くのことに迫ることができるという驚きに満ち溢れた一冊。世界はまだまだ未知と驚きに満ちているのだなと実感させられた。自然科学に興味がある方は読んでおくべき。
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