沢田 勲著
東方書店 (1996.12)
\1,575
評価:☆☆☆
戦国時代から五胡十六国時代にかけて中国北方にて歴代王朝と争った騎馬民族、匈奴について、成立から崩壊までの歴史をまとめている。匈奴が強大化するきっかけとなった冒頓単于の即位は、中国において項羽と劉邦の時代であり中国統一後の劉邦は冒頓によって手痛い敗北を喫して辛くも逃げ帰ったことから新興の漢帝国にとって極めて大きな脅威であった。
漢と匈奴の力関係が変わるのは、武帝の時代までまたなければならない。衛青や霍去病といった将軍の活躍の他、蘇武と李陵の物語や李広利の勝利と亡命など話題にもこと欠かないのでご存知の方も多いと思う。
しかし、知られているのは中国から見た匈奴像であって、匈奴を中心とした見方にはなかなかお目にかかれないのが実情であるように思われる。本書はそのような状況に風穴をあけることができるだろう。タイトルに偽りなく、匈奴側からの中国との関係、文化、内紛、社会構成、権力背景に至るまで記されているのだから。
私としては、否定するにも肯定するにもはっきりした証拠に欠けていると言いつつ紹介されている、匈奴=フン族仮説には非常に好奇心を引き立てられる。中国北方を縦横無尽に駆け回った人々が、遥か西方のヨーロッパ東部に圧力をかけ今もフンの国という意味のハンガリーに名前を残しているのではないか、という仮説はアジア大陸のダイナミックな民族の動きや歴史を垣間見せてくれるように思うのだ。
匈奴はいくつかに分裂し、一部は中国に入って漢化し、残りは北方で他の騎馬民族と一体化して消えて行った。定住しなかったがゆえに多くの文献などを残さなかった異民族の興亡について広く資料に当たり、よく調べられていると思う。中国の歴史に興味があるかにはお勧めしたい。
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