日垣 隆著
新潮社 (2005.1)
\714
評価:☆☆☆☆
緻密な取材と論理的な文章で定評のある日垣隆さんが、世間にはびこる怪しげな言説を批判する、となると面白くならないわけが無い。そんなわけでタイトルを見ただけで購入。こんな感じに著者で信頼できるというのはありがたい。
本書で取り上げられている嘘は以下の通り。<リスク>をめぐるウソ(宝くじ、自殺報道、安全性)、<事故>をめぐるウソ(男女、人身売買、性善説)、<子ども>をめぐるウソ(精神鑑定、児童虐待、部活)、<値段>をめぐるウソ(料金設定、絵画市場、オリンピック)、<制度>をめぐるウソ(裁判員、大国、他国支配)である。( )の中はそれぞれの章で取り上げられている小項目。これらを見たら、日垣さんが何について書こうとしているのか、大体の見当は付くだろう。
私は常々、宝くじを買う人は数学が出来ない人だと言い続けてきたが、日本のギャンブルは世界中で最も子に不利なシステムだとは知らなかった。ギャンブルには興味が無いのでぼっているのは別に構わないのだけど。安全性では前に紹介した中西準子さんの『環境リスク学』とも共通するような話題が多く、『環境リスク学』を読んでいれば事足りるようなところもある。
鳥インフルエンザのリスクなど、騒ぎすぎの報道に対して冷静な視点を提供してくれるのは非常にありがたい。ちょっと残念だったのは、曖昧な書き方をされている点。
唯一懸念材料としては、鳥インフルエンザがヒトに感染し、ヒトの体内で遺伝子の組み換えを起こして新型ウイルスが出現する、という可能性です。しかしこの可能性は、最大に見積もっても100億分の1以下の確率でしかありません。
(p46)
と書いているが、何の確率について書かれているのか良く分からない。これが、1.感染した人間一人について、その体内で新型ウイルスが出現する可能性なのか、2.年間を通じて感染する人間全員を合わせた場合なのか、3.はたまた人間の体内で増殖するウイルス粒子1個についての可能性なのか、で対応の仕方が大きく変わる。1であれば、感染する人間の数が少なければ少ないほど良いので鳥インフルエンザの蔓延を極力防止しなければ成らない一方、3であれば計算の結果を疑わなければならないところまで来ているだろう。
そんな点はあるものの、報じられているニュースの裏をちょっと考えてみると多くのウソがあることが分かっていく。本書で批判されているウソは、悪意で付かれているものではなくて表層を追いかけてニュースを消費しているだけの人々によって生み出され、社会に広まっていることが分かると思う。ニュースでも本でも、まずは疑うことが大事であることを感じさせてくれる。話題の持ち出し方も上手いし、それぞれのことを良く調べた上で簡潔に書かれているのであっという間に読めるけど考えさせられる、そんな本である。
2006.7.2追記
BK1にて日垣隆の著書を見ると、9月議会で日垣隆の"交通費ちょろまかし問題"が
なる記事がトラックバックされている。他にも『売文生活』、『エースを出せ!』、『そして殺人者は野に放たれる』、『偽善系 (文春文庫) 』にも同一のトラックバックが為されていることが確認できる。
問題は、トラックバックしている記事が全くこれらの本に言及していないことだ。ここで読むことができるのは、ブログの著者が主張する日垣隆の”交通費ちょろまかし問題”についてのことくらいで著書についてはタイトルはもちろん、内容には一切触れられていない。
本についての記事をトラックバックすることを目的に作られている制度を利用して自分の主張を公表しようとするのはあまりにも常識外れで下品な行為であるということが分からないのだろうか。
私自身は、日垣隆が実際に交通費をちょろまかしたのであればそれはそれで問題視すれば良いと思う。
だが、いかなる問題であれ、自分の主張と関係の無いことを表現しているところに強引に割り込み、声を張り上げて自論を広めようとするような行為はしてはならないだろう。
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