サマンサ・ワインバーグ著 / 戸根 由紀恵訳
文芸春秋 (2001.7)
\740
評価:☆☆☆
常識は崩されるから面白い。誰もがとっくの昔に絶滅していたと思っていて、古生物学者しか興味を持っていなかった古代魚、シーラカンスが発見されたことは今にして思えば信じられないくらいの騒動を起こしたようだ。
例えて言うならば、生きている恐竜が発見された、というようなもので多くの人々がにわかには信じられないという態度をとったのもあながち分からない話ではない。不幸なことに冷凍庫が近くに無かったため内臓は捨てられ、残ったのはホルマリンで脱色された死体が一つ。しかし、それを信じない懐疑的な人々もまた多かった。
稀代の魚マニアの科学者、J・L・Bスミスはシーラカンスの死体を一目見て、これが間違いなく絶滅したとされているシーラカンスであると確信、誰にも文句のつけようが無い証拠を付きとめようと14年にも渡るシーラカンス捜索に足を踏み出す。本書はそんなスミスを中心に、1938年のシーラカンス発見から現在に至るまでのシーラカンスをめぐる歴史を纏めたのが本書である。スミスたちの執念によって、シーラカンスの奇妙な生態がいろいろと分かってきた。魚でありながら卵を産まず、胎生であること。昼は眠り、夜になると狩に出て”逆立ち”をすること。肉は不味く、塩漬けにしないと食べられるようなものじゃないこと。
新しく発見された生物には、それだけの謎がある。それも4億年前から生息していて絶滅したと信じられていた生物ならますます。そんなシーラカンスについて分かったことだけでも十分面白いが、謎に包まれた生態を追いかける、その取り組みもまた面白い。とにかくパワフルな人が目白押しで、それを眺めているだけでも楽しくなってくる。研究者にはパワフルさが要求されるものだとつくづく実感。
なお、シーラカンスは200匹以上が捕獲されているが現在ではワシントン条約によって保護されている。本書の中で日本がシーラカンスの捕獲計画を立てていたことが書かれているが、今のところ釣り上げられて生き残った個体はいないので失敗したのは良かったかもしれない。なお、英語ではあるがシーラカンス保護を訴えるサイトがあって、Tシャツなどの収益の一部がシーラカンス保護に使われるそうです。シーラカンスの写真もあるので、それを眺めるためだけに訪れても楽しいサイトです。
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