マット・リドレー著 / 中村 桂子訳 / 斉藤 隆央訳
紀伊国屋書店 (2004.5)
\2,520
評価:☆☆☆☆☆
生まれか環境か、という議論はどんなところにもついて回る。しかし、なかなか定量的な議論にはお目にかかれず、環境論者は生まれの影響を否定するし生まれ論者は環境の影響を否定する。
そんな中にでてきたのが、この『やわらかな遺伝子』である。マット・リドレーは遺伝関係の著書を何冊か書いていて、その分かりやすさと面白さには定評があると言っても良い。そのリドレーが、生まれ-環境論争をどうあしらうか。
その答えは、書いてもネタバラシにはならないで書いてしまうが、単純な遺伝決定論は間違っているし、また同時に単純な育ち決定論もまた間違っている、ということであるようだ。双子の研究などから、実に多くのことが遺伝で方向付けされることが示され、同時に遺伝決定論では説明のつかない差も生じていることがわかる。
語られる分野も非常に広く、同性愛や知能といったそれこそ”ホットな”議論に晒されてきたものから外見のようにほぼ争うことの無いところまで多岐に渡っている。また、それぞれの例が面白くて、大著であるにも関わらず読み始めたらどんどん読んでしまう魅力がある。
遺伝に興味がある人だけではなく、教育論や動物の行動に興味のある方まで、多くの方にお勧めできる本である。遺伝の力を疑い深く思う方も、ぜひどうぞ。事例だけでも面白い本です。
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冬目 景著
幻冬舎コミックス (2003.12)
\1,470
評価:☆☆☆☆
たまに、やられた、と思うことがある。失敗してアレな本を買ってしまったときにもそうなんだけど。この場合、絵にやられた。いや、前々から気にはなっていて、だけどちょろっと見たら買ってしまいそうで怖かったのだが、古本屋で眺めたときに吸血鬼っぽい話でもうストーリーにもやられることが確定したのですぐ買ってしまった。
冬目 景さんの描く女性の目の、あまりの意思の強さがとても好きだ。そんな作者が書きたかった黒髪ストレートの制服姿の美女ということで、気合も十分(なんの?)
そしてストーリーは、これが読んでとても驚いたことにまるで正統派のゴシック小説。東京を舞台にしているため洋館こそ出てこないけど、配置はまさに、という感じである。呪われた血族、そして滅びに向かっていく人々という流れは、恐らく作者の意図した以上にゴシック小説に近づいている。
導入部だけちょっと紹介。主人公はごく普通の高校1年生の男。母はすでに亡く、病弱な姉の面倒を父が見ているため父の友人夫妻のところに子供の頃から預けられているため、家では必要以上に”良い子”として振舞っている。そんな彼は気になっている同級生の女の子と一緒に美術部に入っているのだが、油絵を眺めているうちに強烈な眩暈に襲われる。ふと思い出した昔の記憶を辿っていくうちに姉と邂逅し、そして自分が呪われた一族の一員であることを思い知らされる。その血の呪縛はやがて主人公を蝕んで行く。友人や義理の両親、そして淡い恋心を抱く同級生らを傷つけまいとする主人公、そして主人公を案じる周りの人々。ほのかに芽生える姉弟の愛情の行方は――。
絵が気に入った方には大変お勧め。ただ、くらーい話を楽しめる人で無いと読んでも面白くないと思われるので、ゴシック小説好きだという人にお勧めしたい。なお、ゴシック小説の白眉であるオトラント城奇譚もお勧めである。
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