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26冊目 狂気という隣人
狂気という隣人

岩波 明著

新潮社 (2004.8)

\1,365

評価:☆☆☆

 精神分裂病、今は統合失調症と言い換えられているが、この病の発症率は1%にもなるという。精神分裂病ではない、鬱などの病を考慮に入れれば、精神を病む可能性はかなり高いものと言わざるを得ないであろう。しかし、その精神病に対しては実に多くの誤解がある。知られていない現実がある。

 例えば、触法精神病患者の扱いについては”罪に問われない”ということだけは知られているだろうが、その後の彼らがどのような生活を送っていくのかはなかなか伝わってこない。不幸にして、彼らが再び犯罪を犯したときにピックアップされるのが関の山である。

 そんな知られざる世界である精神病院について、精神科医が現状を書き綴っているのが本書である。街中で興奮してしまって搬入されてきた患者。異国の地で精神を病んでしまった外国人たち。そして、ほとんど警察に押し付けられるようにして入ってきてしまう触法精神病患者。精神病ではなく、覚醒剤によって精神病のような症状を呈して入院してくる人々。

 そうやってやってくる患者達との話しの中で、日本の精神病治療には、改善しなければならない点が実に沢山あることがわかり、そのお粗末さには愕然とさせられてしまう。

 例えば触法精神病患者。精神分裂病は、通常の犯罪率は非分裂病者よりも低いが、殺人や放火のような凶悪犯罪の犯罪率は遥かに高い。しかし、彼らを十分に治療するだけの設備もシステムも存在していない。地域レベルででも犯罪に至る前にチェックする機構があれば犯罪率は下がるかもしれないが、受け皿もろくに存在しない。患者をケアするスタッフも足りない。


 日本の大学病院で扱う患者は、その多くが「上品な」、「話のわかる」患者です。大部分がうつ病圏、神経症圏であり、治療への意思がない精神分裂病や薬物中毒の多くを、単科の精神病院に押し付けています。うつ病患者でも、自殺の危険が大きいと断られることも多々あります。
(p.186より引用)


 触法精神病患者の扱いについてはまた別に私の意見はあるのだが、しかしそれは現在の貧困な精神医学の状態を是認するものではない。触法精神病について少しでも考えることのある方は絶対に読んでおくべきである。また、精神病の治療の現在を知っておく意味でも、多くの方に読んでもらいたいと思う。内容がちょっと少ないので点はちょっと辛めだが、読みやすいし非情によくまとまっているので一気に読める本だろう。
医学・脳・精神・心理 | 2004/10/20(水) 10:15 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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