西嶋 定生〔著〕
講談社 (1997.3)
\1,628
評価:☆☆☆☆☆
中国古代。周王朝は有名無実と化し、天下は春秋時代、戦国時代を経てようやく秦による統一を迎えた。しかし、一代の英雄、始皇帝が死去するや秦は内部分裂を開始。秦は建国後僅かな期間しか命脈を保てず、項羽と劉邦が天下を二分する。劉邦は垓下にて項羽を破り、ここに漢王朝が成立する。漢は劉邦の死後、皇后である呂后による専制時代や華々しい武帝外征時代を経て、外戚の王莽による簒奪で歴史を閉じる。王莽は暗愚な人物であり、新はまもなく崩壊。各地で豪族に率いられた反乱軍が蜂起し、堅忍不抜の劉秀が他の勢力を滅ぼして後漢を開く。後漢末期には知識人と宦官による権力争いの中、黄布の乱が起こる。漢はなんとかこれを鎮圧するが、知識人と宦官の争いは激化。皇帝は酒色に溺れ政務を投げ出す。外戚の暗殺を機に起こった混乱により後漢は滅び、魏晋南北朝時代へと突入する――。
秦による中国統一が紀元前221年であり、後漢のラストエンペラー献帝から魏の文帝への禅譲が220年。この、約450年の間に中国がどのように”一つの中国” としてまとまったのかを、浩瀚な資料から追いかけている。秦、前漢、新、後漢はそれぞれ建国の模様が異なり、それが故に国の体制がそれぞれ異なる。建国の由来による各王朝の統治システムの違い、時代を変遷する中で性格がどんどん変わっていく様を、実に上手く書き出していると思う。
中国と言えば儒教国家とか、強力な中央集権制とか、その広大な面積とパワフルな権力者といった像が思い浮かぶが、それらがこの時代に確立されたのは間違いない。三国志の時代から隋が成立するまでは分裂と闘争の時期が続くわけであるが、その後に成立した隋、唐までの間に国家像がしっかりしたためにこそ今の中国があるのではなかろうか。
本書で特に興味深かったのは、王莽の興した新の再評価である。中国が儒教化するにあたって新の影響は大きかったのは、その新の時代の短さ(西暦8〜23年)からかなり意外である。
また、前漢の成立までは項羽と劉邦で知られているが、前漢の滅亡はさほど有名ではなく、後漢の成立は戦乱の中で幾つかドラマチックなシーンがあるにも関わらず殆ど知られていないので、この辺りをざっと知りたい人は目を通して見ると面白いと思う。その成立方式がどれだけその王朝の性格を決定付けるのか。更に、三国志が始まる前夜はどのような状況だったのかについても簡潔に知ることができるであろう。
三国志にちょっと触れると、三国時代に魏で始まった九品官人法が後の科挙の原型となる。従って、三国時代までで後の時代を通して現れる儒教、科挙、中央集権制、易姓革命、禅譲といったパターンが確定されている、と言えよう。秦の始皇帝や項羽と劉邦にのみ興味がある方にもお勧めできる、分かりやすくてつい読み進めてしまう良書である。歴史の流れにだけ興味がある人は、政治部分を読み飛ばしてでも読んでみることをお勧めしたい。
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