NHK取材班編
角川書店 (1995.5)
評価:☆☆☆
日本は何故太平洋戦争に負けたのか。その最大の理由が国力が圧倒的に異なっていたことであることは疑う余地が無かろう。しかし、それに留めてしまっては、この悲惨な大失敗から学ぶことが余りに少ないと言わざるを得ない。国力以外に何が不足していたのか。それを端的に指摘しているのが本書である。
日本軍は徹底して学ぶことの出来ない軍隊であったようだ。ノモンハン事件、という満州地域の国境紛争があった。これは”事件”などというちっぽけなものではなく、毎日新聞サイト内のシリーズ20世紀の記憶紹介内の、ノモンハン事件の項から引用すると、下記の如くである。
日本軍の損害は大きく、全兵力約5万6000人のうち8440人戦死、死傷率は30%を超えた。特に第23師団1万5000人の死傷者は実に1万2000人弱、死傷率は75%を上回り、壊滅した。
5万人を越える将兵がノモンハン方面(ハルハ河流域)に集合し、壊滅したという戦争である。決して、ちっぽけな事件ではない。この戦争でソヴィエトは最高の能力を持つと判断されていたジューコフ将軍を投入(彼はノモンハン以後は西に派遣され、ナチスドイツの軍隊と対峙する)。ジューコフは圧倒的な火力を集中運用させることで引用文にもある通り関東軍を壊滅させた。
もしこのとき、日本軍が学ぶことが出来ていたら、近代的な機械化部隊に対して精神力のみを頼りとする肉弾戦がどれだけ不毛なものなのか、悟ったはずである。そして、少なくともその後の歴史は大きく変わったはずである。しかし、そうはならなかった。日本は終戦に至るまで武器軽視、精神力重視の無謀な突撃を続け、無惨に負けていった。そして多くの将兵がその屍を外地にに晒すことになってしまった。
ガダルカナルは、初めてアメリカ軍と日本軍が陸上で戦った戦闘であり、そして辻、服部といったノモンハンで手痛い敗北を喫した参謀達が再び登場するという意味でも非常に意義深い戦闘であった。アメリカにとって日本陸軍は未知の軍隊であり、恐れと蔑視とがないまぜになっていたようだ。ところがアメリカは様々な経路から日本軍に関する情報を収集し、”日本通”になっていった。その一方で、ノモンハンの失敗に学んでいなければ行けないはずの日本軍は相変わらずの肉弾戦を繰り返し、そしてガダルカナルでも何度も同じ失敗を繰り返す。その経緯を克明に追いかけている本書は、それゆえに読んでいて憂鬱になる。ガ島(ガダルカナル島)は餓島である、という当て字をするようになるのに、何が起こったか、何がなされなかったのか、それを知っておくことは過去を知ることだけではなく、同じ過ちを犯さないためにはどうあるべきなのかを知る役に立つ、かも知れない。
こんなにダメだったのかと思うと学ぶ役には立たないかも知れないが。
2006.6.4追記
ノモンハン事件は従来量的にも日本の負けとされていたが、両軍の損傷だけを比較するとソ連軍の方が日本軍よりも被害は大きかったそうである。ただし、ノモンハン後の国境策定ではソ連側の言い分が通っているため、紛争そのものとしては日本の敗北とすべきだろう。
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