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5冊目 キリンのまだら
キリンのまだら

平田 森三著

早川書房 (2003.12)


評価:☆☆☆

 寺田寅彦に師事し、統計現象を対象とする研究で著名であった平田森三の未発表原稿集。キリンのまだら模様が他の自然現象でも見られる様々なわれめとそっくりであることから共通の原理が働いているのではないかと示唆するタイトル名でもあるエッセイ、垣根にできる(というか作られる)ショートカットのできかた、藤の種がどのような原理で遥か遠くまで飛んでいくのか、捕鯨用の銛の最適な構造、綿菓子の作り方など、実に様々な話題を取り扱っているのが面白い。捕鯨の話などは時代を感じさせられるが。捕鯨禁止のでたらめさについては色々言いたいこともあるが、ここでは触れない。

 捕鯨の銛は、形状によって水面で反跳し、鯨の巨体をも飛び越えてしまうという問題で、その解決として銛の先頭形状を変更することによる影響を調べている。この反跳について思い出したのが、太平洋戦争における海戦の際、日本軍は熟練したパイロットによる精密爆撃を目指したが、新兵を上手く活用することを目指したアメリカ軍はミサイルを反跳させる方法を採用した、ということだ。その結果、日本では熟練パイロットの数が減るに従いたちどころに戦力を失っていったのに対して、アメリカは新兵でも高い命中率を誇ることでもとから大きかった物量差に加えて能力差もつけていったというものである。

 話がそれたが、これらのわれめや捕鯨以外にも、寺田に師事することになった時の親とのやりとり、被爆体験など、著者が実際に体験したことについても記されているのが興味深い。特に、家督を継ぐように言われていた著者が寺田の下で研究者としての道を歩むようになったいきさつは非常に微笑ましい。

 捕鯨や被爆、といった言葉から想像できるように、話題は古いものが多いが、今でも通用する話が幾つも載っているように思う。一つ一つの論文も短いので、身近な物理現象に興味のある人は読んでみたら良いだろう。数式は出てこないので数学嫌いの人も安心である。

その他科学 | 2004/02/14(土) 14:50 | Trackback:(1) | Comments:(0)

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